ロッキー5/最後のドラマ【凡作】悪くないですよ、本当に(ネタバレあり感想)

(1990年 アメリカ)
不完全燃焼のまま引退を余儀なくされたロッキーが新たな生きがいを探すが、見当違いのものを追いかけていたという結構切実なドラマ。世間的には駄作扱いですが、ぶち壊しのラストを除けばそれなりに見れる映画だったと思います。

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あらすじ

ドラゴ戦の直後、ロッキーは脳に回復不可能な障害を負っていることが判明し、プロボクサーを引退する。さらに、会計士の不正によって破産したロッキーは故郷フィラデルフィアへと戻り、トレーナーとしての人生を歩み始める。そこにトミーという青年が現れ、その素質に惚れ込んだロッキーはトミーに付きっきりの指導を開始する。

作品概要

本作に至るまでのスタローン

前作『ロッキー4』が公開された1985年はスタローンのキャリアの絶頂でした。『ランボー2』が同年の全米年間興行成績2位、『ロッキー4』が3位と他を寄せ付けぬマネーメイキングスターとなり(ちなみに1位は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)、私生活でも飛行機でナンパした17歳年下のモデル・ブリジット・ニールセンと再婚。しかし、ピークを打った後の転落は早く、その後のキャリアでは興行的にも批評的にも苦戦を強いられました。

そして仕事が不調だと私生活でも悪いことは起こるもので、『ビバリーヒルズ・コップ2』に出演したブリジット・ニールセンが監督のトニー・スコットと不倫。その後スタローンは離婚したのですが、離婚を切り出したのはニールセンの方だったという話もあります。

スタローンの人生が色濃く反映された作品

本人が意図したものなのかどうかは分かりませんが、『ロッキー』シリーズはその時のスタローンのパーソナルな背景が色濃く反映された内容となっています。

本作も例に漏れずで、ドラゴ戦で最高の試合をした後に引導を渡されるロッキーの姿は、『ロッキー4』でキャリアの絶頂を迎えた直後からヒットを出せなくなったスタローンと重なりました。

また、悪徳プロモーターは『ビバリーヒルズ・コップ』でスタローンをタダ働きさせた後に切り捨て、挙句にその続編では奥さんに手を出すような浮ついた現場を作ったドン・シンプソンのようだったし、本来の家族との関係を悪化させてまで新しい家族として受け入れたのに裏切ったトミー・ガンは、前妻と別れてまで結婚し、また大作に出演させて女優としてのキャリア初期の面倒を見たのに、不倫の末に離婚を切り出されたブリジット・ニールセンのようでした。

ロッキーJr.役に実子であるセイジ・スタローンを起用し、トミー・ガンとの関係で一時的にロッキーとジュニアの仲は悪化したものの、後に修復するという展開を入れた点には、血の繋がった身内こそが戻るべき場所であり、新しい出会いのために身内を裏切ってはならないというスタローンの人生訓が込められているようでした。

感想

あらためて見ると意外といける

本作の初見は中一の時で、今はなきTBSの水曜ロードショーで放送された『ロッキー2』を見たことがきっかけで当時の親友2人とロッキーシリーズにハマり、本作も含むシリーズ全作を友人宅で鑑賞したのでした。

『3』『4』とどんどん敵が強くなっていき、スタローンの肉体もファイトシーンもド派手になっていくという中坊には堪らない流れで来た中で最終章への期待値も高まったのですが、そんな期待とは裏腹に原点回帰を目指した本作の地味な内容には「あれ?」という感じになりました。それは私だけではなく友人二人も同じくで、鑑賞後しばし微妙な空気になった後で、「クラバーとドラゴではどっちが強いか」などと輝かしかった頃のロッキーの話で中坊3人は盛り上がったのでした。

それ以来、本作は「触れる必要のない駄作」として20年以上に渡って再鑑賞することはなかったのですが、今回意を決して見てみると、これはこれで悪くないドラマだと感じました。奇跡的な傑作だった『1』のクォリティはさすがに無理ではあるものの、『2』には並ぶレベルではないでしょうか。公開時の不評は、爆発的なヒットとなった『4』から参入してきた新規ファンの期待するものではなかったということが大きかったように思います。

ロッキーの続編としてはまっとう

スタローンの肉体的には『3』『4』のようなアクション大作路線の継続はまだまだ可能だったと思うのですが、アポロを噛ませ犬に使うという一回こっきりの大技を使った『4』の後に同じ路線の続編は不可能として、ロッキーに引導を渡してアクション路線からドラマ路線への軌道修正を選択したことは正解でした。アクション路線を継続していても、『4』の出涸らしみたいな映画にしかならなかったでしょう。

引退を余儀なくされた後にもロッキーはボクシングへの未練を持ち続け、そこにトミー・ガンが現れたことで、中断された自分の夢の投影先としてトミーに入れ込んだという心情の推移もよく考えられています。加えて、良い素質は持っているけど直すべき部分も多いというおっさん殺しなトミーの資質もよく計算されており、指導することでトミーがどんどん良くなっていくことに喜びを覚えるロッキーの心情が実に自然なものとなっています。

また、偉大過ぎる師匠の存在が次第に重荷となり、ロッキーの陰でしか生きられないことに苦痛を感じるようになったというトミーの心境変化にも違和感がなく、キャラクターの動かし方は総じてうまくいっていたと思います。

ストリートファイトは安っぽかった

本作が特異に感じたのは、王道の結末を選択しなかったという点です。この流れであれば、悪徳プロモーターの誘惑に負けて一時的にトミーは去っていくものの、食いものにされ捨てられた後に師匠の有難みを知り、ロッキーも戻って来たトミーを暖かく受け入れてめでたしめでたしという展開を迎えそうなものなのですが、そうはなっていません。

まず、トミーはタイトルマッチに勝利してしまいます。しかもかなり余裕で。これでは、マッチメイクをした悪徳プロモーターの方が正しく、時期尚早としていたロッキーの判断が誤っていたことになってしまいます。

そしてこの勝利で悪者側はさらに勢いづき、師匠の影を振り払いたいトミーと、話題性ある師弟戦で大金を稼ぎたい悪徳プロモーターはロッキーの元に押しかけます。テレビカメラを同伴させて。テレビカメラの前で「ロッキー出て来い!」とトミーが叫ぶ様はかなり滑稽であり、後のWWEのようでした。

その後は師弟によるストリートファイトに突入するのですが、ボクサーがこんな大っぴらに喧嘩したらライセンス剥奪になっちゃうんじゃないのとか、ロッキーは金に困ってるんだから、どうせ戦うならリングに上がればいいじゃんとか、あまりに筋の通らない展開に浮かんでくるのは疑問ばかりでした。

シリーズ全体を俯瞰しても、第一作でロッキーがゴロツキではないことを世間と自分自身に対して証明したという点にこそ感動があったのに、ここに来て街の喧嘩に逆戻りすんのかいという違和感がありました。

このボロボロのクライマックスには、ブリジット・ニールセンとの離婚劇が反映されているという気もしました。恩を仇で返されまくった当時のスタローンには、トミーが改心してロッキーの元に戻ってくるという物語にリアリティを感じられず、相手が本性を現したら最後、とことんやられるという話にしてしまったのではないかと。

出演者たちの不幸

セイジ・スタローン(享年36歳)

ロッキーJr.を演じたスタローンの実子であるセイジ・スタローンは2012年7月13日に死後数日経過した遺体の状態で自宅にて発見され、当初は麻薬の過剰摂取かとも言われたものの、後に心臓発作による自然死と結論付けられました。享年36歳。

セイジの死に関しては、スタローンが三度目の結婚で得た3人の娘を溺愛する余りに最初の妻との子であるセイジを軽視し、そのためにセイジの生活が荒れたことが遠因になったとの告発もありました。

トミー・モリソン(享年44歳)

トミー・ガンを演じたトミー・モリソンは実際のプロボクサーであり、黒人選手ばかりだった当時のヘビー級戦線における数少ない白人選手として活躍し、1993年にはWBO世界ヘビー級タイトルを獲得。

しかし1996年にHIV陽性が発覚した後には血液検査規程に阻まれてマッチメイクが難しくなり、それとともに飲酒やドラッグ絡みで逮捕と服役を繰り返すようになりました。

2013月8月には彼の母親が、トミーはエイズの末期にあり、話すこともできず1年間寝たきり状態で人工呼吸器の助けにより辛うじて生き永らえている状態であることを公表。その後、2013年9月1日に死亡しました。享年44歳。

≪ロッキーシリーズ≫
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