【良作】カリフォルニア・ダウン_肉体派家族vs震災(ネタバレあり・感想・解説)

災害・パニック
災害・パニック

(2015年 アメリカ)
公務そっちのけで家族の救助に走るレスキュー隊員の活躍が光る珍作だが、ディザスター描写の迫力は驚異のレベルに達している。真面目に見る映画ではないと割り切れば、きっと楽しめるはず。

作品解説

有名脚本家を何人も起用

本作のオリジナル脚本を執筆したのは、アンドレ・ファブリツィオとジェレミー・パスモアのコンビだった。

ふたりは、『コードネーム:プリンセス』(2014年)や『デッド・シティ2055』(2015年)などブルース・ウィリス出演のVシネが代表作という脚本家だったことから、当初の脚本にはいろんな問題があったことが推定される。

そこでかは知らないが、ニューラインはケビン・スペイシー主演の『ラスベガスをぶっつぶせ』(2008年)やオリバー・ストーン監督の『ウォール・ストリート』(2010年)で知られる脚本家アラン・ローブに書き直しをさせた。

さらに『LOST』や『ベイツ・モーテル』など、テレビドラマのショーランナー(現場責任者)としてトップクラスの実績を誇るカールトン・キューズが脚本家として雇われた。

さらには『死霊館』シリーズで知られるケイリーとチャドのヘイズ兄弟が雇われて、最終的な手直しを行った。

完成作品の脳筋具合からは想像もつかないが、これほどの豪華なメンツが脚本を執筆した作品なのである。

監督は『センター・オブ・ジ・アース2』のブラッド・ペイトン

そんな脚本を託された監督はブラッド・ペイトン。

この時点での代表作は、本作と同じくドウェイン・ジョンソン主演の『センター・オブ・ジ・アース2』(2012年)であり、二人は後に巨大生物大暴れ映画『ランペイジ』(2018年)でもタッグを組むこととなる。

なのだが、脚本家の顔ぶれと比較すると監督の人選はちょっと落ちるような気もする。

どういうわけだか本作のプロデューサー ボー・フリンはペイトンの手腕を高く買っており、彼を「次世代のスピルバーグ」とまで呼んでいたので、そうした個人的な贔屓目からの人選だと思われる。

確かに、これほどスケールが大きく見せ場の数も多い作品を1億ドル程度で仕上げてみせたことを考えると、現場掌握術やコスト節約術に優れた監督なのだろうとは思う。

本作と同じくビルがバタバタと倒れ、都市が津波に襲われるローランド・エメリッヒ監督の『2012』(2009年)なんて2億ドルもかかってたわけだし、本作は驚くほどのローコストで作られたと言える。

ビジネス的には大成功を収めた

本作は全米で大ヒットとなり、1億5519万ドルを稼いだ。

国際マーケットでは輪をかけて好調で、全世界トータルグロスは4億7399万ドル。これはその年のワーナー作品で最大の売上高だった。

本作よりもたらされた純利益は8807万ドルと推定されており、アメコミ映画全盛の時代において、原作を持たない実写オリジナル企画としては2022年現在に至るまでの7年間で本作の記録を更新する作品は現れていない(フォーブス 2022年1月19日)。

感想

脳筋ディザスタームービー

これは真面目に見るような映画ではない。

本作の鑑賞には、その認識が不可欠である。

主人公はロサンゼルス消防局のレスキュー隊員レイ(ドウェイン・ジョンソン)。腕利き隊員として仲間達からの信頼と尊敬を集めるレイだが、西海岸一帯をマグニチュード9.5の超巨大地震が襲うと、迷わず公務を放棄し、たまたま乗っていた災害救助ヘリ(公共物)を私的に使って家族の救出に向かう

なぜレイがそこまでして家族に拘るのかというと、巨乳で美人で目の中に入れても痛くないほどかわいい娘ブレイク(アレクサンドラ・ダダリオ)がいるから。

この娘が登場場面からなんの必然性もないのに水着姿を披露し、以降の場面でも常に胸の谷間が見える格好をしている。こんな娘がいれば父親も心配になるわなぁと、妙なところで納得してしまった。

かつて救助に失敗してブレイクの妹を亡くした過去があるとか、絆はあるのに両親は離婚しようとしているとか、一応ドラマツルギーらしきものは存在しているのであるが、それらはさして機能していない。

あるのは「とびきり魅力的な娘を助けたいんだ!」というロック様の思いのみ。

で、ロック様は公務を放り出して娘の救助に向かい、娘は「お父さんが必ず助けに来てくれるはず!」と言って、現地での避難誘導などに従わず我が道を行く。

一般的に災害時においてとるべきではないとされる行動を連発するのが凄いところだが、すべての登場人物に一切の迷いがない。この一本気なところも凄い。

そして我々観客も、この家族の価値観を疑ってはならないのである。それを疑い始めると、本当に見ていられなくなるので。

肉体派家族の無節操な生命力

そんなわけでこの家族のサバイバルが本作の趣旨となるのであるが、その生命力は桁違いと言っていい。

レイは陸海空、あらゆる乗り物を乗り継いで娘の救助に向かう。他人の迷惑など考えずに。

飛行中のヘリが壊れれば人けのなさそうな場所ではなくあえてホームセンターの駐車場に突っ込んでいき、火事場泥棒に眉をひそめた直後に「足がなくなった」と言って車を盗み、飛行場が崩壊して着陸場所がないと見るやすかさずパラシュート降下する。

無人になった飛行機はどこかに墜落して人を殺すかもしれないとか、そういうことは考えないのである。この割りきりが凄い。

最終的には船で巨大津波に向かっていき、波に飲まれることなくサーフィンに成功してみせる。大自然に度胸と腕力で打ち勝ってしまうロック様が凄い。

そして津波で壊滅したサンフランシスコを当てもなく探していると、偶然にも娘と出会えるという直観力も凄い。もはやテレパスのレベルである。

破壊がとにかく凄いのよ

とまぁ、お話の方はいろいろとアレなのだが、作品のハイライトであるスペクタクルには大興奮だった。

東日本大震災を徹底して研究したであろう被災地の描写に、危機また危機のアクションの連続。ローランド・エメリッヒが泣いて悔しがるほどの素晴らしい出来で、ディザスター映画としては史上トップクラスの出来だった。

これだけ見せてくれれば大満足、内容の不備を補って余りあるほどの魅力があった。

本作で起こるのは活断層が起こす内陸型地震であり、このタイプでは津波は起こらないはずなのだが(津波を起こすのは海溝型地震)、アメリカ人にとってはそんなことなどどっちでもいいのであろう。

ペイトン監督は学者の知見を得ながら作品を製作したと豪語していたのだが、その学者は「さすがにマグニチュード9.5はないだろ」と言っていた。ハリウッド的な解釈とは往々にしてそういうものだ。

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