シェーン・ブラックは世界一高額な脚本を書いていた男

スペック・スクリプトとは企画先行型ではないオリジナル脚本を指します。

ハリウッドが製作する映画がフランチャイズものばかりになった現在からは信じられないことですが、1980年代末から1990年代前半にかけてスペック・スクリプトを巡ってハリウッドのスタジオが激しい入札競争をし、脚本の値段が吊り上がっていた時期がありました。

その時代の先頭を走っていた脚本家がシェーン・ブラックであり、彼が書く脚本には毎度大変な高値が付けられていました。今回は、金満脚本家シェーン・ブラックの仕事を振り返ります。

シェーン・ブラックとは

1961年ピッツバーグ出身。UCLA卒業後の1985年に『リーサル・ウェポン』(1987年)の脚本を書きあげ、いきなりジョエル・シルバーによって製作されるという早熟ぶりを発揮しました。

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ブラックを高く評価したジョエル・シルバーは、同じく新人脚本家だったジムとジョンのトーマス兄弟によるシナリオがロクに精査もされないままメキシコでの撮影に入った『プレデター』(1987年)の撮影現場にブラックを出演俳優の一人として張り付かせ、もし現場で問題が起こればその場で脚本を書き替えるようにとの指示を与えました。『プレデター』は話らしい話のない映画だったので、ブラックがやることは特になかったようなのですが。

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ともあれ、『リーサル・ウェポン』(1987年)と『プレデター』(1987年)という同年のヒット作2本に関わったことで、ブラックはハリウッドでの地位を確保しました。

ジョエル・シルバー(左)とシェーン・ブラック(右)

シェーン・ブラックのここが凄い!

脚本の落札額が凄い!

彼が次に書いたオリジナル脚本『ラスト・ボーイスカウト』(1991年)もハリウッド界隈で話題になりました。ワーナーとカロルコがこれを狙っており、カロルコは225万ドルもの高値を提示してきました。

しかしブラックはジョエル・シルバーをプロデューサーにするようにとの条件を出し、その通りにしたワーナーがカロルコの提示額よりも50万ドル少ない175万ドルで競り落としました。自分の取り分を減らしてまでシルバーへの義理を優先したブラックの男ぶりには感心させられます。とはいえ、175万ドルでも当時としては史上最高額の脚本料だったのですが。

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もっとも高額な脚本料を得たブラックは、もっとも優秀な脚本家として見做されるようになりました。自身も参加した『プレデター』(1987年)のジョン・マクティアナンとアーノルド・シュワルツェネッガーが再度タッグを組む『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)では、脚本のリライト作業だけで100万ドルを受け取りました。

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そして記憶喪失の女スパイを描いた『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)です。この脚本の落札額は驚異の400万ドルであり、これは史上最高額でした。ただしこの異常な高値のために他の脚本家達も売れ線を狙った脚本を書くようになり、ハリウッド全体に悪い影響が出たことをブラック自身も認めています。以降、『アイアンマン3』(2013年)までは大作の仕事に関わらなくなりました。

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脚本の荒み方が凄い!

『リーサル・ウェポン』(1987年)は荒みまくった映画で、奥さんを亡くして自殺願望のある刑事マーティン・リッグスが、涙を流しながら銃口を咥えて引き金を引こうかどうか悩むという衝撃的な場面までありました。ブラックのオリジナル脚本は完成した映画よりも数段過激だったと言われています。

リーサル・ウェポン【傑作】最高・最良のバディ・アクション

その続編の『リーサル・ウェポン2/炎の約束』(1989年)も引き続きブラックに依頼され、友人の小説家ウォーレン・マーフィと共に執筆しました。ただし第一作に輪をかけてダークで血生臭い内容だった上に、最終的にリッグスが死ぬ話だったために、ワーナー、ジョエル・シルバー、リチャード・ドナーの3者は難色を示しました。

結局、『デッドゾーン』(1985年)のジェフリー・ボームが全面的にリライトして明るい作風に改められ、ブラックは「原案」とクレジットされるに留まりました。使えないくらい荒んだ脚本というものもちょっと見てみたい気もしますが、現在に至るまでボツ脚本は公開されていません。

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『ラスト・ボーイスカウト』(1991年)もまた凄い話でした。主人公は英雄的な活躍で知られる優秀なシークレットサービスだったのですが、ある正義を為したために職を追われた結果、「為さざるを最上」として生きるしがない私立探偵にまで堕ち、家族からも友人からも蔑まれています。

そんな私立探偵が、薬物常習が原因でプロスポーツ界を追われた元フットボール選手と組んで巨悪を暴くという物語であり、プライドを失った男達の姿が痛いほどでした。

なお『ラスト・ボーイスカウト』もジョエル・シルバーによって相当な改変を受けており、オリジナルはもっと過激だったようです。史上最高額の脚本料を払って購入しながら、その脚本を書き替えていくジョエル・シルバーは何考えてんだかって感じですが。

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監督としての評価も高い!

『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)以降は10年ほど目立った仕事をしていなかったのですが、2005年に自身が脚本を書いたクライムサスペンス『キスキス,バンバン』(2005年)で監督デビューをしました。

製作費は1500万ドルと従前ブラックが関わってきた映画と比較するとかなり規模の小さい作品ながら批評家からは高評価を受け、落ち目だったロバート・ダウニー・Jr.が復活するきっかけの一つとなりました。

その恩義もあってか、ロバート・ダウニー・Jr.はジョン・ファヴローが降板した『アイアンマン3』(2013年)の監督にブラックを推薦。前作『アイアンマン2』(2010年)の2倍近い12億ドルを全世界で稼ぎ出し、メガヒットを生み出せる監督ともなりました。

俳優もやっている!

『プレデター』(1987年)の現場に俳優として入っていたという話からもお分かりの通り、この人は俳優業もやっています。『プレデター』では下ネタジョークばかりを言ってシュワ扮するダッチに無視されていたホーキンス役を演じました。

その他、友人のフレッド・デッカーが監督した『ロボコップ3』(1993年)や、同じく友人のジョー・エスターハスが脚本を書いた『アラン・スミシー・フィルム』(1997年)にも出演。

ここまでだと友達の映画ばっかじゃんと思われるかもしれませんが、ジャック・ニコルソンとヘレン・ハントが共にアカデミー主演男優賞と主演女優賞を受賞した名作『恋愛小説家』(1997年)にも出ていますよ。

シェーン・ブラックの書く話は毎回ほぼ同じ

  • 過去に何かしらあって尊厳を失った人物が主人公
  • 主人公は対局とも言える相手とバディを組む
  • 捜査の過程では子供が事件に巻き込まれる
  • 一度は敵に捕まって激しい拷問を受ける

シェーン・ブラックの脚本はほぼ間違いなくこのパターンです。同じパターンの再生産で大金を得続けていたブラックって、文章力や表現力がよほど優れていたんでしょう。嫌味ではなくそう思います。

最近のシェーン・ブラック

『キスキス,バンバン』(2005年)と同じく中規模予算の探偵もの『ナイスガイズ!』(2016年)の脚本・監督を務め、こちらも安定の高評価でした。

かつて俳優として参加した『プレデター』(1987年)に、今度はクリエイターとして参加した『ザ・プレデター』(2018年)は賛否両論でしたが、少なくとも負け犬達が自尊心を取り戻すため難事件に挑むという従前のブラックの得意分野では成功していました。

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まとめ

ダークな作風でハリウッドを駆け抜けた男・シェーン・ブラック。毎回ほぼ同じ話と言われながらも一つ一つの作品はちゃんと個性的であり、この人のエッジの立った作品には特有の魅力がありました。

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