【凡作】スピーシーズ 種の起源_追跡隊が役立たず(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(1995年 アメリカ)
異星人との接触は遭遇ではなく情報ではないかという着想は素晴らしく、実はなかなかSFしてる映画なのですが、その対策に当たる追跡隊に緊張感がないうえにロクな見せ場もないので、印象に残るのはナターシャ・ヘンストリッジの裸だけでした。

作品解説

『ゴールデン・チャイルド』のデニス・フェルドマンのオリジナル脚本

本作は企画先行型ではないオリジナル脚本が元になっており、それを書いたのは『ゴールデン・チャイルド』(1986年)や『ヴァイラス』(1999年)のデニス・フェルドマンでした。

1987年頃に本作の着想を得たフェルドマンは”The Message”という脚本を書いたのですが、その時点では生物学者と警察官がエイリアンを追うというバディものでした。

その後、内容の一部が現実味を欠くと考えたことから政府が追跡チームを編成するという内容に書き換え、これが本作の脚本となりました。

1993年にこの脚本を受け取ったプロデューサーのフランク・マンキューソ・ジュニアは興味を示し、MGMでの製作が決定。

『48時間』(1982年)や『コマンドー』(1985年)の脚本家ラリー・グロスが入った時期もあったのですが、結局はフェルドマンのビジョンが最後まで維持されたようです。

興行的には成功した

本作は1995年7月7日に公開され、『アポロ13』(1995年)に次ぐ全米2位を記録。その後も堅調に推移し、全米トータルグロスは6007万ドルというスマッシュヒットとなりました。

国際マーケットでも同じく好調で、全世界トータルグロスは1億1337万ドル。3500万ドルという中規模予算を考えると健闘しました。

感想

シルの設定が素晴らしい

脚本家が様々な研究機関への取材を繰り返して練り上げた企画だけあって、シルの設定には「なるほど」と納得できる点がいくつもあります。

エイリアンが宇宙船でやってくるのではなく、宇宙から送信されてきた設計図通りに遺伝子を組み立てると人類抹殺用の生物が出来上がったというシル誕生の時点で「お!」と思いました。

脚本家のデニス・フェルドマンは光速の壁を越えられないことから有限の命を持つ生命では惑星間航行は不可能であり、異星人との接触は情報によってなされるとのアイデアを持っていたのですが、これがなかなかのサイエンスフィクションぶりで良いのです。

シルの性格付けも○。地球にシルを送り込んだ者は邪悪な意思を持っていたのかもしれないが、シル自身は決して邪悪な存在ではない。

少女時代のシル(ミシェル・ウィリアムズ)が毒ガスによって処理されようとする場面から映画は始まりますが、その際のシルの怯えた表情、生みの親であるフィッチ博士(ベン・キングズレー)の苦悶の表情は一見の価値ありです。

死の危険に晒されたことでシルの生存本能に火が点いて大逃走劇が開始されるのですが、彼女は好きこのんで殺人を犯しているのではなく、防衛本能の結果の殺人であるという意味付けにも納得できました。

さらには、シルは肉体の強靭さ、健康さ、頭脳の明晰さをオス選びの基準としており、その結果として自分を追いかける追跡隊を交尾の相手に選ぶという展開にも驚きと納得感がありました。

追跡隊が役立たず

そんなシルに対する追跡部隊はマイケル・クライトン作品のような各分野のスペシャリスト揃いであり、その登場場面では「お!」ッと思いました。

  • フィッチ(ベン・キングズレー):シルを生み出した研究所の所長。
  • レノックス(マイケル・マドセン):表沙汰にできない殺しを請け負う「問題解決屋」
  • スティーブン(アルフレッド・モリーナ):ハーバードの人類学者
  • ローラ(マーグ・ヘルゲンバーガー):分子生物学者で、チームの紅一点。
  • ダン(フォレスト・ウィテカー):霊能力者で、シルの行動予測を行う。

異色なのはフォレスト・ウィテカー扮する超能力者ダンの存在です。学者と軍人・殺し屋の組み合わせはありがちなのですが、そこに霊能者を入れることは意表を突いていました。

しかし考えれば考えるほどダンの存在は合理的であり、人類の科学の遥か上をゆく宇宙人によって作られたシルが相手なのだから、科学者だけでは手に負えないかもしれない。この勝負をひっくり返すためには直感もアテにする必要があるということで彼が加えられているわけです。

作劇上も、シルの思いや行動原理を観客に伝える場面でダンの存在が生きており、なかなかよく考えられています。

ただし良かったのはダンだけでした。

他のメンバーには各自の専門性を発揮する見せ場が与えられておらず、せっかくの難しい肩書がほぼ無駄になっています。

また、プロならばシルを放っておくとどんな恐ろしいことになるのかの予想もできて、失敗が許されない任務に対して終始緊張感を保ち続けるであろうところ、サラリーマンの出張程度の雰囲気なので腰砕けになりました。ロクに仕事もしないのに仲間内で恋仲になったりするし。

彼らにはプロらしい態度と振る舞いをして欲しいところでした。

見せ場がシルの裸のみ

見せ場らしい見せ場がなかったのも厳しかったです。

SFスリラーである以上はどこかに際立った見せ場が欲しいところですが、目を見張るような瞬間がないので退屈しました。ラストバトルも地下でかくれんぼをしているだけで、視覚的なインパクトには乏しかったし。

その結果、シルを演じるナターシャ・ヘンストリッジの裸くらいしか印象に残っていないという悲しいことになっています。

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