【凡作】張り込み_職人監督ジョン・バダムの平均点映画(ネタバレなし・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1987年 アメリカ)
80年代に流行したバディ刑事ものに、刑事と監視対象とのロマンス要素をトッピングしたアクション・コメディ。どんなジャンルでも卒なくこなすジョン・バダム監督が卒なく作った結果、可もなく不可もない凡作となった。

感想

中学時代に金曜ロードショーで見たけどさほど印象には残らず、その後は一切見返してこなかった映画。

この度、我らが午後ロー様がオンエアしてくださったので30年ぶりの鑑賞となった。

なお今回の吹替は昔見た金曜ロードショー版ではなく、1991年のゴールデン洋画劇場版らしい。

広川太一郎さん、鈴置洋孝さん、戸田恵子さん、大塚明夫さん、大塚芳忠さんという錚々たる吹替キャストで大満足だったけど、映画自体の感想は30年前と変わらずで可もなく不可もなくといったところ。

誰が言い出したのかは知らないが、映画の世界には「職人監督」という言葉がある。

これは作家主義の対義語的に使われることが多いのだけど、与えられた脚本、キャスト、予算という条件下において、特段の色も出さず、ただ淡々と作品を仕上げる映画監督のことを指す。

最近ではめっきり減ってきた人種ではあるが、80年代から90年代にかけては、こうした職人監督たちがハリウッドの屋台骨を支えてきた(リチャード・ドナー、ウォルフガング・ペーターゼン、ジョエル・シュマッカー、ピーター・ハイアムズetc…)。

そんな職人監督の中でもある意味で際立った存在だったのが、本作を監督したジョン・バダムだった。

テレビ界出身のバダムは、38歳の時にジョン・トラボルタ主演の青春映画『サタデーナイトフィーバー』(1977年)を大ヒットさせてハリウッドのヒット請負人となったが、その後のラインナップに節操がまったくない。

  • ホラー:『ドラキュラ』(1979年)
  • 社会派ドラマ:『この生命誰のもの』(1981年)
  • ハイテクスリラー:『ウォー・ゲーム』(1983年)
  • スカイアクション:『ブルーサンダー』(1983年)
  • ロボット:『ショート・サーキット』(1986年)
  • アクションロマンス:『バード・オン・ワイヤー』(1990年)
  • コメディ:『ハード・ウェイ』(1991年)
  • リメイク:『アサシン』(1993年)
  • ウェズリー・スナイプス:『ドロップ・ゾーン』(1994年)
  • サスペンス:『ニック・オブ・タイム』(1995年)

オールジャンルなんでもござれという幅の広さと同時に、語り草になった作品がまったくないという薄味加減が徹底している。

いくら職人監督といえど頑固なファンを納得させるフロックの一本くらいは持っているものだけど(職人監督は多作なので、たまたま当てることがあるのだ)、バダムに限ってはそうしたものがまったくないのがある意味スゴイ。

これといった作風がないことこそがバダムの作風であり、例えるなら映画界のファミレス。

そんなバダムが、職人監督としてもっとも脂の乗り切った時期に撮ったのが、本作『張り込み』(1987年)である。

脚本を書いたのは、本作と同年公開の『ヒドゥン』(1987年)も手掛けたジム・カウフ。

カウフは職人監督との相性の良い脚本家のようで、後にブレット・ラトナー監督の『ラッシュアワー』(1998年)やジョン・タートルトーブ監督の『ナショナル・トレジャー』(2004年)なども手掛けることとなる(ラトナーとタートルトーブは、共に21世紀の立派な職人監督である)。

そんなジョン・バダムとジム・カウフという職人コンビで作り上げた本作が凡庸にならないはずがない。

脱獄犯スティック(エイダン・クイン)の居場所を突き止めるべく、シアトル市警の刑事クリス(リチャード・ドレイファス)とビル(エミリオ・エステベス)が、スティックの元恋人マリア(マデリーン・ストウ)の家を張るというのがざっくりとしたあらすじ。

脱獄犯を追うバディ刑事というストーリーは、ジャンルの始祖である『48時間』(1982年)をまるっとパクってきたとしか言いようがない。この隠す気のない二番煎じ感こそが職人監督の仕事ぶり。

そして、マリアが物凄い美人だったものだから刑事二人もメロメロになってしまい、そのうちロマンスに発展するというのが本作の独自性である。

当時アイドル的な人気を誇っていたエミリオ・エステベスがアクションとロマンスを担当するのかと思いきや、こいつがまったくのポンコツであり、一方いかにも小市民的なリチャード・ドレイファスが両方をこなす。

しかし、この捻じれたキャスティングがうまく笑いにつながっていかない。

エミリオ・エステベスはコメディに向かなさすぎて「一見凄腕風なのに全然ダメな奴」を面白く演じられていないし、一方でリチャード・ドレイファスは芸達者すぎて、アクションもロマンスもそれなりに様になってしまっている。

ここで大ネタを決められなかったのは痛恨だった。

クリスは監視対象と恋仲になったことを警察組織に知られるわけにはいかないし、マリアに対しても自分が刑事であることを隠し通さねばならない。

これらの秘密がバレてしまうのではというスリルで引っ張るべきだったと思うんだけど、こちらもまた思ったほど有効に機能していない。

ジョン・バダムの演出があまりにアッサリしすぎていて、山場を作り損ねているのだ。

本作は万事がこんな感じ。「ここで面白くならなきゃいけないのに!」というポイントをことごとく外しまくる。

とはいえバダムの演出は堅実なので、最後までちゃんと見れてしまうのもまた事実。

物語は終始テンポよく展開し、後半のカーアクションの出来も良い。

刑事としてマリアを監視していたことがバレてしまうが、それでもクリスはマリアから許されてめでたしめでたし。

「自分の生活を覗き見されていた上に、身分までウソをつかれていて許せる奴なんていないだろ」とは思いつつも、あまりにも後味が良いので、これはこれで良しとしたくなってしまう。

温和な空気ですべてを丸く収め、観客を何となく納得させてしまうのがジョン・バダムの強みである。

スポンサーリンク