【凡作】スターシップ・トゥルーパーズ3_今日は死に日和(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2008年 アメリカ)
毒気は残しつつもバーホーベンのような辛辣さは薄れており、むしろ笑いの要素が強くなっています。見せ場においては目玉であるパワードスーツに製作リソースを全投入しているので、それ以外の部分はかなりパワーダウン。『1』が好きなら見て損はないが、シリーズに興味のない人は見なくても損はしないという作品ですね。

©Sony Pictures

あらすじ

バグズとの開戦から11年が経過し、戦争は泥沼化していた。

ジョニー・リコ大佐(キャスパー・ヴァン・ディーン)が指揮する惑星ロク・サンの基地に、地球連邦軍総司令官アノーキ(スティーブン・ホーガン)と、リコとは旧知のハウザー将軍(ボリス・コジョー)が視察に訪れる。しかし何者かが基地の防衛システムを解除したことからバグズが侵入。ハウザー将軍はアノーキ司令官を戦艦で脱出させた上で、自身は基地に留まり反撃を指揮するが、基地は壊滅。一方、アノーキを乗せた戦艦は惑星OM-1に墜落する。

総司令官の後釜を狙うフィド提督(アマンダ・ドノホー)はアノーキを死んだことにしようとしているが、ハウザー将軍はこれに反発。惑星OM-1にリコを送り込み、アノーキを救出しようとする。

スタッフ・キャスト

『1』の脚本家エド・ニューマイヤーの監督デビュー作

1957年生まれ。UCLAで映画ビジネスを学び、パラマウントやコロンビアで働いた後にユニバーサルの役員に就任。副社長への昇進の打診もあったのですが、役員の仕事はつまらなかったらしく、マイケル・マイナーと共に脚本を書いた『ロボコップ』(1987年)を製作するためにユニバーサルを退社しました。

その後、”Bug Hunt at Outpost Nine”(アウトポスト9の昆虫狩り)というタイトルのオリジナル脚本を書いたところ、トライスターがこれを『宇宙の戦士』実写化企画と合流させることに決定したので、シリーズ第一弾『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)の脚本家となったのでした。

『1』の主演キャスパー・ヴァン・ディーンが復帰

1968年ニュージャージー州出身。

『ビバリーヒルズ青春白書』などのテレビシリーズに出演した後に『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)に主演しました。その後はVシネに年数本単位で出演するようになり、そっち方面の俳優として開花しました。

フィル・ティペットが監督した『スターシップ・トゥルーパーズ2』(2004年)には不参加であり、本作で11年ぶりのシリーズ復帰となりました。

感想

一兵卒の物語から上層部の物語へ

原作『宇宙の戦士』(1959年)はSF小説でありながら主人公リコが最後まで一兵卒であり、戦争の大勢に影響を与えないという点が型破りでした。唯一、「王族捕獲作戦」に参加したことくらいですかね。ただし公式な記録に残る戦果はズィム軍曹のものであり、リコは依然として名もなき兵士のままでした。

そしてシリーズ第一弾『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)も原作準拠。リコは最初から最後まで一兵卒として活動し、戦争そのものの是非などにも言及することがありませんでした。

そこに来て本作ですが、依然としてリコは現場の責任者レベルではあるものの、ハウザー将軍が元部下ということもあって上層部とのコネを持ち、地球連邦軍総司令官アノーキの救出作戦を指揮するということで、戦況をコントロールする上層部の物語へと発展しています。

今やSF映画のクラシックの域に達している『1』と同じことをしても越えることはまず不可能ということで、話の切り口を変えたことが本作の戦略だったというわけです。

『今日は死に日和』

ただし全体の雰囲気は『1』と非常によく似ています。

人を食ったような戦意高揚宣伝の数々。そして人気歌手が地球連邦軍総司令官を務めており、彼の歌う『今日は死に日和』が全地球的大ヒット曲というふざけたことになっていますからね。

やってることは『機動戦士ガンダムSEED』のラクス・クラインと全く同じなのに、美少女がやるかおっさんがやるかで受ける印象がここまで違うものかと驚きます。

エンドロールで『今日は死に日和』をフルコーラスで聞くことができるのですが、完全にふざけて作っているのに、未来のヒット曲と言われてもまぁ受け入れられる程度の完成度にはなっており、その絶妙な塩梅には笑ってしまいました。

こんな楽しげな総司令官がいるなんて

そして監督のエド・ニューマイヤーは『ロボコップ』(1987年)の脚本家でもあるので、そこに上層部が繰り広げるパワーゲームが加味されています。

悪だと思っていた人間が実は正しい目的のために動いていることが分かったり、でもやっぱり腹の中には利己心もあったりで、善とも悪ともつかない人間臭いやりとりは面白くできていました。

低予算のためにビジュアルは貧相化

『1』は荒野を埋め尽くすほどのバグズが進撃してくる様が大迫力であり、かつ、これを夜の闇で誤魔化すことなく白昼堂々とやった点がエポックメイキングでした。

そんな『1』から11年、技術レベルは上がっているはずなのですが、本作のビジュアルはこれよりも大きく後退しています。

バグズが暴れるのは基本的に夜だし、荒野を埋め尽くすほどの大群は登場しません。その上CG丸出しの質感で前作のようなリアリティがなくなっています。

このような事例を見ると、仕事の質は技術ではなく人材のレベルで決まるということがよく分かります。1億ドル以上かかった大作で優秀なスタッフをいくらでも雇うことのできた『1』のクォリティに、技術レベルでは圧倒的優位にあるはずの本作がまったく太刀打ちできていないのですから。

ついにパワードスーツ登場

そんな感じでバグズのVFXは残念だったのですが、本作は乏しいリソースをパワードスーツに全投入する構えでおり、クライマックスでのその活躍場面には気合が入っていました。

パワードスーツは原作の重要な要素ではあったものの、『1』では予算的・技術的制約条件からオミットせざるを得ず、そのことが批判の対象となっていました。あれから11年、ようやくパワードスーツが実写で初登場というわけです。

マローダーと呼ばれるパワードスーツはバグズの攻撃にビクともしない頑丈さに加え、マシンガンや火炎放射器を内蔵、強力な爆弾も装備しており、さらには空を飛ぶことも可能という何とも贅沢な仕様となっています。

こういうチョイ見せもそそりますな

溜めに溜めまくった登場場面に続き、それまで苦戦を余儀なくされていたバグズを造作もなく一掃するベラボーな強さにはカタルシスが宿っていました。

ただし断っておきますが、低予算の本作としては頑張っていた方ということなので、過大な期待はなさらないように。当然、『アイアンマン』(2008年)や『パシフィック・リム』(2012年)のような大作と比較すると見劣りします。

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