【駄作】スリー・リバーズ_すべての点で面白くない(ネタバレあり・感想・解説)

サスペンス・ホラー
サスペンス・ホラー

(1993年 アメリカ)
90年代にブルース・ウィリスが多く出演した駄作の中の一本。ミステリーはヘタクソだし、挫折した男のドラマとしても面白くないし、大したアクションもないしと、ことごとく出来が悪いので見る意義はさほどありません。なぜか私は人生で3回も見ているのですが。

あらすじ

ピッツバーグ市警のトム・ハーディ刑事(ブルース・ウィリス)は、従兄弟にして相棒であるジミー刑事の暴力事件で事実を認める証言をしたことから、市警内部で肩身の狭い思いをしていた。そんな折、女性ばかりを狙う連続殺人事件が発生。応援要請を受けたハーディは犯人が運転する車とのカーチェイスを繰り広げるが、ハーディの運転する車は横転してハーディは気を失い、同乗していたハーディの父は犯人に射殺され、犯人には逃げられる。後日、容疑者が逮捕されるが、その人物はハーディが認識していた犯人像とはあまりにかけ離れていた。

スタッフ・キャスト

監督・脚本は『ロードハウス/孤独の街』のローディ・ヘリントン

1951年ピッツバーグ出身。1970年代後半から技術職として映画業界で働くようになり、アレックス・コックス監督の『レポマン』(1984年)やウェス・クレイブン監督の『エルム街の悪夢』(1984年)にカメラ技師としてクレジットされています。

80年代後半より脚本や監督を務めるようになり、ジョエル・シルバー製作の『ロードハウス/孤独の街』(1988年)やキューバ・グッティング・Jr.が出演した『ファイティング・キッズ』(1992年)などを撮っています。

このフィルモグラフィが示す通り凡庸な監督であり、名作の類を一度も撮ったことはありません。

主演はブルース・ウィリス

1955年生まれ。高校卒業後に警備員、運送業者、私立探偵など複数の職業に就いた後、俳優としてニューヨークで下積みを経験し、オフ・ブロードウェイの舞台などに立っていました。

1984年頃にLAに転居してからはテレビ俳優となり、オーディションで3000人の中から選ばれた『こちらブルームーン探偵社』(1985年~1989年)の主演でコメディ俳優としての評価を確立しました。

『ダイ・ハード』(1988年)の主人公・ジョン・マクレーン役でコメディ俳優の枠を超える評価と、国際的な知名度を獲得。

90年代に入ると依然として好調な『ダイ・ハード』と並行して『パルプ・フィクション』(1994年)や『12モンキーズ』(1996年)といった作家性の強い作品にも出演するようになり、その変幻自在ぶりが注目を浴びました。

ただしこの時期のウィリスはそんな良作の何倍もの数の駄作にも出演しており、『ハドソン・ホーク』(1991年)、『薔薇の素顔』(1994年)『マーキュリー・ライジング』(1998年)など結構な割合で映画を外しています。

で、本作は駄作の方のブルース・ウィリス主演作です。

共演はサラ・ジェシカ・パーカー

1965年オハイオ州出身。8歳よりテレビ出演を開始し、13歳から2年間ミュージカル『アニー』で主演を務めました。

映画ではケヴィン・ベーコン主演の『フットルース』(1984年)で注目を集め、ほかにティム・バートン監督の『エド・ウッド』(1994年)などにも出演しています。

テレビシリーズ『セックス・アンド・ザ・シティ』(1998-2004年)が人気を博し、ゴールデングローブ主演女優賞を4回、エミー賞主演女優賞を2回受賞しました。

若いころにはアイアンマンことロバート・ダウニー・Jr.と7年間交際していたのですが、彼の薬物問題のために別れました。1997年にマシュー・ブロデリックと結婚し、代理出産で双子の女の子を授かりました。

作品解説

ソニー・ピクチャーズが作った駄作の一つ

1989年、日本の家電大手ソニーがバブル景気の勢いを背景にハリウッドの名門スタジオであるコロンビア・ピクチャーズを買収しました。その額48億ドル。

ソニーはその経営をピーター・グーバーとジョン・ピーターズに任せることにしました。ワーナーで『バットマン』(1989年)を製作したコンビであり、当時のソニーにとってはヒット請負人のように見えていたのです。

しかしこの二人の在任中、ソニー・ピクチャーズは金のかかった駄作ばかりを製作しました。スティーヴン・スピルバーグ監督の『フック』(1991年)、ブルース・ウィリス主演の『ハドソン・ホーク』(1991年)、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ラスト・アクション・ヒーロー』(1991年)と枚挙に暇がありません。

1992年、ソニー・ピクチャーズは一本あたり平均2950万ドルを使い、稼ぎは3180万ドルという非常に効率の悪い経営状態に陥りました。

そんな中で製作された駄作の一つが本作だったのです。

なお二人の解任後にソニー・ピクチャーズは経営を正常化させ、1997年には年間興行成績1位の『メン・イン・ブラック』(1997年)と3位の『エアフォース・ワン』(1997年)をリリースするまでに至りました。

撮り直しの嵐

本作は1993年5月21日に公開予定だったのですが、試写の結果があまりに悪かったのでかなりの量の撮り直しを行いました。

前年に『氷の微笑』(1992年)が大ヒットしたことからブルース・ウィリスとサラ・ジェシカ・パーカーのラブシーンはより過激になり、物語のテンポを上げるためにトム・サイズモアの出演シーンはばっさりカットされました。

また当初のタイトルは邦題と同じく『スリー・リバーズ』だったのですが、サスペンスの印象を強めるために『Striking Distance(手の届く場所)』に改題されました。

ブルース・ウィリスがローディ・ヘリントン監督の手腕を公然と非難するような荒れた現場であり、当初の予定から4か月も遅れた1993年9月17日にまで公開が延期されました。

興行的にも失敗した

本作は4週目を迎えたハリソン・フォード主演の『逃亡者』(1993年)を抑えて全米No.1ヒットとなったのですが、2週目以降の興行成績の落ち込みが激しく、公開4週目にしてトップ10圏外へとフェードアウトしました。

全米トータルグロスは2410万ドル、製作費3000万ドルの回収もできない赤字映画となりました。

登場人物

  • トーマス・ハーディ(ブルース・ウィリス):ピッツバーグ市警の刑事だが、従兄弟であり相棒だったジミー・テディロの暴行事件で証言したために市警内で密告屋として睨まれるようになり、身内の少ないリバー・レスキューに転属した。
  • ジョー・クリスマン(サラ・ジェシカ・パーカー):リバー・レスキューでのトーマスの相棒。若くして結婚したが離婚し、現在はシングルマザーである。
  • ヴィンス・ハーディ(ジョン・マホーニー):ピッツバーグ市警の刑事であり、トーマスの父。トーマスと共に連続殺人とのカーチェイスを繰り広げた後に、犯人に射殺された。
  • ニック・テディロ(デニス・ファリーナ):ピッツバーグ市警の刑事であり、ジミーの父にしてトーマスの叔父。息子ジミーに不利な証言をした件でトーマスに恨みを抱いている。
  • ジミー・テディロ(ロバート・パストレリ):ピッツバーグ市警の刑事であり、トーマスの従兄弟にして元相棒。暴行事件で告発されたことを苦にして、川に飛び込んで自殺した。
  • ダニー・テディロ(トム・サイズモア):元ピッツバーグ市警の刑事。兄ジミーの自殺にショックを受けてアルコール中毒となり、警察を退職した。父ニックのようにトーマスを恨んでおらず、彼に対しては依然として親しく振る舞う。
  • エディ・アイラー(ブライオン・ジェームズ):ピッツバーグ市警の刑事。ジミーの暴行事件の証言をした件でトーマスを密告屋として非難している。

感想

いつも通りのブルース・ウィリス

本作でブルース・ウィリスが扮するのはピッツバーグ市警のトム・ハーディ刑事。トム・ハーディと言われると2代目マッドマックスを思い出しますが、両者には特に関係はありません。

ハーディは従兄弟にして相棒であるジミー(ロバート・パストレリ)の暴力事件を認める証言をしたことから、警察内部で密告屋のような扱いを受けています。

そのジミーが自暴自棄になって川に飛び込み自殺をしたことからハーディへの風当たりはより厳しいものとなり、身内の少ないリバー・レスキューへと転属しました。

その後のハーディは親戚関係から逃れるように川辺でひっそりと一人暮らしを送り、アルコールに溺れ、勤務態度は悪く、上司の命令にも従わないという荒れた生活を送っています。

過去の失敗から自暴自棄となり自尊心までを失った男。『ラスト・ボーイスカウト』(1991年)『ダイ・ハード3』(1995年)など、ブルース・ウィリスが得意とする役柄です。

ただし本作の主人公として固有の性格付けがなされていないので「またか」という感じであり、それほど興味の持てるキャラクターとはなっていませんでした。

ミスディレクションが驚くほどヘタクソ ※ネタバレあり

で、このハーディ刑事は女性ばかりを狙う連続殺人事件に関わることとなります。

もともとハーディはその捜査には関与していなかったのですが、無線での応援要請に従って犯人とのカーチェイスを繰り広げたことから事件に巻き込まれるようになりました。

ほどなくして殺人課が容疑者を逮捕するのですが、事前に言われていた犯人像とはまったく違うのでハーディはおかしいと思います。

しかし疑問を投げかけても「はいはい、この事件は終わり」という感じで誰もまともに取り合わないものだから、余計に疑義は深まっていきます。ジミーの件でも身内に甘い市警の風潮が伺い知れたことから、何か組織ぐるみでの隠蔽がなされているのではないかと。

そんな疑念を裏付けるかのように、殺人事件を担当しているエディ刑事(ブライオン・ジェームズ)はハーディが事件現場に近寄ることすら激しく嫌がり、ハーディに対する威嚇や嫌がらせをやめません。

ネタを明かすと警察の腐敗と連続殺人事件は何の関係もなく、組織ぐるみの隠ぺいを匂わせる展開は観客に対するミスディレクションだったのですが、エディ刑事の態度があまりにも露骨過ぎて、逆にこいつはシロだなということが観客の側ではっきりと分かってしまうというヘタな作りになっており、ミステリーとしては失敗しています。

連続殺人事件に対する反応が不自然

話を捜査過程に戻します。謎の連続殺人犯はハーディにターゲットを絞り込み、ハーディの元カノばかりを狙い始めます。

報道で元カノが殺されたことを知るハーディ。

こうした局面を迎えた以上、ハーディは元カノの死を悼み、自分と犯人の争いに元カノまでを巻き込んでしまったことで自責の念にかられ、いよいよ自分がターゲットとされたことに警戒心を抱き、自分の身の回りの人たちへのさらなる被害の拡散を恐れるのだろうと思うところですが、実際のハーディのリアクションが驚くほど薄くて悪い意味で驚かされました。

真っ暗な部屋でブルース・ウィリスがさめざめと泣くのみ。いやいや「今回の被害者は俺の知り合いだ」と言って殺人課と連携をとり、知り合いに危険を知らせるという行動をいの一番にとるべきでしょ。

で、被害者とハーディの関係を知ったエディ刑事の反応もありえなくて、「お前が昔楽しんだ女なんだよなぁ」と、いくらハーディと確執を抱えているにしても、惨い方法で知り合いを亡くした人に対して普通なら言えないような言葉を投げかけます。

刑事の元カノが連続殺人犯に命を狙われ始めることこそがこの企画のユニークな点だったはずなのですが、これをドラマとして具体化することには完全に失敗しています。

大した見せ場もなし

と、ここまで書いてきて言うにもアレですが、ミステリーとしての不出来はぶっちゃけどうでもいいのです。ブルース・ウィリス主演作なのだから、優秀なミステリーなど誰も期待してはいません。

ブルース・ウィリスが派手に暴れ回り、アクションで楽しませてくれさえすれば帳尻は合うのです。

ただし本作には大した見せ場もないために、ただただヘタクソなミステリーを見せられる内容に終わっています。これが最大の問題点でした。

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