【凡作】ダーティハリー4_ハリーは脇役(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1984年 アメリカ)
よせばいいのにまたまた作ったシリーズ第4弾。掘り下げようのなくなったハリーに代わり、レイプ被害者のジェニファーが実質的な主人公という異色作で、火曜サスペンス劇場のようなこじんまりとした内容に落ち着いている。面白くはない。

8年ぶりの続編

シリーズは『ダーティハリー3』(1976年)で終了していたのだが、マーケティングの結果、シリーズの更なるポテンシャルが見込まれたことから、8年ぶりの復活となった。

ただし脚本は、まったくの別企画のものを引っ張ってきたようだ。

それはカルト的な人気を誇るホラー『ボギークリークの伝説 野人vsヒルビリー』(1972年)のチャールズ・B・ピアースとアール・E・スミスが書いたレイプ・リベンジもので、主演予定のソンドラ・ロックの加齢により予算が付かず店晒し状態だったものを、『シティヒート』(1984年)のジョセフ・C・スティンソンの手によりダーティハリーの続編に書き替えられた。

そして本作はイーストウッド自身が監督した唯一の『ダーティハリー』映画でもある。

元は3作目もイーストウッドが監督する予定だったが、『アウトロー』(1976年)のポストプロダクション作業のため時間が十分にとれなくなり、助監督のジェームズ・ファーゴを監督に昇格させたという経緯があった。

なお本作はイーストウッドとソンドラ・ロックの最後の共演作にして、ソンドラ・ロックにとって最後の劇場公開作品となった。

興行的には大成功

上述の通り、売れそうだから作った、しかも脚本はボツになった別の映画のものを流用という、ヤバそうな要素満載の本作だが、作品は北米だけで6,764万ドル、全世界1億5000万ドル以上の興行成績を上げ(製作費は2200万ドル)、シリーズ最高記録を更新した。

また映画史上において最も高い売り上げを記録したシリーズ4作目となった(前記録保持者は『007/サンダーボール作戦』)。この記録は翌年の『ロッキー4』(1985年)にアッサリ抜かれることとなるが。

なおイーストウッドは売上に対する歩合を受け取る契約としており、本作で3000万ドル以上を手にしたとも言われている。

今回のハリーは脇役

実は私が初めて見た『ダーティハリー』は本作。小学生の時に水曜ロードショー(日テレではなくTBSの方)で放送されたものを見たと思う。

子供がレイプリベンジものを見ていても何も言わないうちの実家の教育方針には、実に素晴らしいものがあった。

が、年端もいかぬ子供にレイプというものは理解できず、またハリー・キャラハンの渋みあるキャラクター像も伝わらず、猛烈な勢いで忘却の彼方へと消え去っていったのだった。

その後、一度や二度は見たと思うけど、いつ見ても印象には残っていないので、やはりその程度の出来の映画ということなのだろう。

今回、午後のロードショーがシリーズ一挙放送してくださったので久しぶりの鑑賞となったが、やっぱり面白くなかった(私はダーティハリーシリーズのBlu-rayボックスを持っているのだが、やはりこのシリーズは地上波で見るに限りますな)。

上述の通り、レイプリベンジものの脚本をダーティハリーの続編として仕立て直したものなので、シリーズ中でもかなりの異色作となっている。

まず舞台がサンフランシスコではない。ハリーは殺人事件の捜査のため、架空の街サンパウロに出張したという設定である。

またハリーに相棒がいないし、ハリーの愛用銃は6連発の44マグナムからオートマグになった。

そして何より、本作の実質的な主人公はレイプ被害者ジェニファー(ソンドラ・ロック)であって、ハリーの立ち位置は脇役に近い。

10年前、妹と共に集団レイプに遇ったジェニファーが犯人たちへの復讐を始めるというのが作品の骨子。

ジェニファーが案件を10年も寝かせておいた理由ははっきりと説明されないが、加害者に再接近するため自分の顔を忘れるまで待ったと考えれば、ある程度腑には落ちる。

レイプ犯たちを一人、また一人と処刑していくジェニファーと、積み上げられていく死体を前にこれは連続殺人事件であると断定し、まだ見ぬ犯人を追いかけるハリー。

そして実は追う者と追われる者の関係だということも知らず、表の顔では懇意になっていくジェニファーとハリー。

こうして二人の物語は交錯していくのだが、作り手が意図したほどドラマチックにはなっていない。

ラブストーリーを真正面から描いたことのないイーストウッド監督の限界なのだろうか。

また過去に白バイ警官隊や極左暴力組織を相手にしてきたハリーにとって、田舎のレイプ犯程度では相手として不足がありすぎるため、アクション映画としての盛り上げりにも欠けた。

とはいえ悪いことばかりではなく、ハリーがリンチからの復活を遂げる終盤の展開はアツかったし、ジェニファーのピンチに際しオートマグを握りしめたハリーが逆光から登場する場面には拍手喝采しそうになった。

この通り、西部劇のフォーマットを踏襲した部分だけが猛烈に面白く、やはりイーストウッドは西部劇の人だということを再認識させられた。

最後に、シリーズの常連アルバート・ポップウェルについても触れておきたい。

第一作ではハリーに撃たれる銀行強盗犯、第二作では惨い方法で売春婦を殺害するポン引き、第三作では誤認逮捕される黒人運動家と、毎回違う役柄で出てくる『仁義なき戦い』の松方弘樹みたいなポジションの俳優なんだけど、本作ではついにハリーの友人にまで出世。

あの銀行強盗がここまで来たのかと感慨深いものがあった。

なお出演作『フーズ・ザット・ガール』(1987年)とのスケジュールかぶりで第5作には出演できず、シリーズ皆勤賞は達成できなかった。

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