【良作】ソードフィッシュ_興味深い物語と見ごたえあるアクション(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(2001年 アメリカ)
複雑な構成要素をコンパクトにまとめた良作。見せ場の配置も理想的で個人的にはメチャクチャ好きなんだけど、なぜ世間からは嫌われてるんだろう。

感想

世評はすこぶる悪いようだが、個人的には劇場公開時からお気に入りの映画。

主人公は元ハッカーのヒュー・ジャックマン。

かつては世界一の凄腕ハッカーとして鳴らしたジャックマンだが、服役を経てキーボードには二度と触らぬと誓い、今は油田で住み込みの管理人をしている。

そんな明るい未来など見えないウルヴァリンの元に、やたらエロいハル・ベリーが勧誘にやってくる。

面接に来るだけで日当が出ると言われたので行ってみれば、そこに居たのはパリピのジョン・トラボルタ。

数日後にでかい仕事が控えてるのでお前のスキルを貸してくれないかと乞われ、一度は断るジャックマンだったが、気がかりなのは目に入れても痛くない娘の存在だ。

別れた妻のことはもうどうだっていいのだが、その妻の再婚相手がポルノ王であり、その自宅兼撮影所に引き取られた娘が、まともな教育を受けられているはずがない。

何とか娘を取り戻したいジャックマンだが、相手は曲がりなりにも億万長者である。

前科持ちのしがない管理人で太刀打ちできるはずがないのだが、トラボルタが約束する高額ギャラが手に入れば、腕の良い弁護士をつけられる。

背に腹は代えられぬとしてこの話に乗ることにするのだが、いざキーボードに触れれば水を得た魚のようになり、数十時間ぶっ通しの作業も全然苦じゃない。

疲れた目はハル・ベリーのおっぱいを見て回復したし。

かくしてウルヴァリンは、トラボルタの計画の主要メンバーの一人になるというのが、ざっくりとしたあらすじ。

『リーサル・ウェポン』(1987年)や『ラスト・ボーイスカウト』(1990年)など、影を持つ主人公を好んで描いてきたジョエル・シルヴァーの真骨頂、明るい作風とは裏腹に主人公はやんごとなき事情を抱えている。

なべ底で完全に煮詰まってしまった男の最後のあがきとして見ると、本作は実に興味深い。

そして煮詰まり加減で言えばトラボルタも負けてはいない。

彼が所属するのはJ・エドガー・フーバーによって設立された秘密組織「ブラックセル」。

国を守るためなら手段を択ばない超法規的組織に長年所属し、個人というものを完全に捨て去った結果、もはやテロリストを倒すこと以外にアイデンティティを持たない存在となっている。

今回の計画は上院議員サム・シェパードからの指示で進めていたのだが、ジャックマンの前任者であるハッカーが思わぬ理由で逮捕されたことでイモを引き、トラボルタだけが取り残された。

「国を守るために必要と言うから準備してきたのに、今さらやめましょうとかねぇだろ」と、トラボルタは飼い主に牙を剝いてまで作戦を強行しようとする。

「国の危機だ!」「やらなきゃやられる!」とパラノイア的に信じ込んでいるトラボルタは作劇上の悪役ではあるが、そう思うよう仕向けられてきた殺人マシーンの末路だと思うと物の哀れを感じる。

そんなトラボルタが今回狙っているのは、1980年代にDEA(麻薬取締局)が従事した「ソードフィッシュ計画」の工作資金だ。

使われないまま放棄された資金は複利の運用で95億ドルにまで膨れ上がっており、このまま口座に寝かせておくくらいなら、俺らが奪ってテロ対策に使えば有効だろうというのがトラボルタの言い分。

なんだかんだお題目を唱えても、結局は金を奪いに来ただけというのは『ダイ・ハード』(1988年)のテロリスト ハンス・グルーバーを引き継いだものだろう。

まさにジョエル・シルヴァーの総決算と言えるアクション大作である。

爆破に銃撃戦にカーチェイスと見せ場の手数は多く、またビジュアル派ドミニク・セナ監督の手腕によって、そのどれもが美しくかっこよく演出されている。

そしてクライマックスではLAのど真ん中でバスをヘリコプターで吊るすという、「たけしのお笑いウルトラクイズ」を100倍スケールアップしたかのようなスペクタクルもモノにしており、目を存分に楽しませてくれる。

そしてこれだけの膨大な要素をわずか100分でまとめてみせた構成力も素晴らしい。

ハッキングが出鱈目など、世間的にはいろいろ批判されている映画だが、本作の本質はそこではないと思う。

ある特殊分野に特化しすぎておかしくなってしまった男達の衝突こそが見せ場なのである。

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