【凡作】デッドフォール_大味でユルいけど楽しい(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1989年 アメリカ)
撮影監督が解任されるわ、監督は解任されるわ、後任の監督も解任されるわで現場は尋常じゃなく大変だった作品なのですが、内容は80年代のアクション映画らしいユルさがあって、真面目には見ていられないんだけど、深いことを考えず破壊を楽しむ作品だと思って見ると楽しめます。

©Warner Bros.

あらすじ

LAの花形刑事・タンゴとキャッシュが殺人容疑で逮捕・投獄されるが、無罪を証明し、黒幕を突き止めるために脱獄する。

作品概要

スタローン×ラッセル

80年代に大流行したバディアクションの一作なのですが、武闘派と三枚目の組み合わせという定番に対して、本作ではジョン・ランボー×スネーク・プリスケンという武闘派同士の組み合わせが新機軸となっています。

本作を初めて見たのは日曜洋画劇場でしたが、この組み合わせにはかなり興奮した覚えがあります。アクション俳優の共演作って、当時は意外となかったからです。あとはヴァンダム×ドルの『ユニバーサル・ソルジャー』くらいだったと思います。

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本作から20年後、『エクスペンダブルズ』制作の際にスタローンはチャーチ役をカート・ラッセルに打診したものの断られて、この役はブルース・ウィリスが演じることとなりました。また、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』に二人は出演したものの、方やラヴェジャーズのリーダー、方や神様に等しき天界人で、顔を合わせる場面はありませんでした。

混乱した現場

  • キャッシュ役を演じる予定だったパトリック・スウェイジが降板
  • 脚本が未完成のまま撮影に突入
  • 撮影監督のバリー・ソネンフェルドがスタローンにクビにされた
  • シリアスにしたがった監督のアンドレイ・コンチャロフスキーがプロデューサーのピーター・グーバーにクビにされた
  • コンチャロフスキーの交代で雇われた監督のアルバート・マグノーリもクビにされ、最終的にスタローンが監督を引き継いだ
  • あまりの出来の悪さにワーナーが作品を差し戻し、編集の神として知られるスチュアート・ベアードに全面的に直しをさせることで何とか完成した。

本作のプロダクションではこれだけのことが起こりました。どれだけ荒れた現場だったんだという感じですね。作品はタンゴとキャッシュがコンビ結成して続編を匂わせる終わり方をしたし、興行成績もまぁまぁで継続の余地のある結果は残せたものの、これだけ荒れた現場だったためか誰も続編を撮ろうなどとは言い出さず、このコンビは一回こっきりで終了したのでした。

※2019年9月24日に、スタローンが続編の検討を始めたとの報道がありました。以下「まさかの続編企画浮上」の項を参照。

感想

緊張感のない大味さが80年代

花形刑事が冤罪で拘留された上に一般受刑者と同房に入れられ、このままじゃ殺されるってことで脱獄して身の潔白を証明するという話なのですが、結構逼迫している状況であるにも関わらず、主人公二人に焦っている要素がありません。

冤罪裁判ではなんかヘラヘラしているし、刑務所でも余裕の表情。脱獄はすんなりうまくいくし、陰謀の黒幕へもあっさり辿り着いてしまうので、本来もっとハラハラすべき話が完全に死んでいます。中盤まではつまらない映画でしかありませんでした。

そもそも論を無視した大暴走

脱獄後の物語の主眼は24時間以内に潔白を証明することだったにも関わらず、黒幕がペレであると突き止めるやペレの砦に殴り込みをかけるタンゴとキャッシュ。証拠を掴んで警察に駆け込むという本来あるべき展開が完全に無視されており、二人がお尋ね者という設定も、24時間というタイムリミットも置き去りにされてしまいます。

またペレはタンゴとキャッシュの襲撃を待ち構えていたような姿勢を見せるものの、特殊車両による防衛線しか張っていないという意外なほどの手薄ぶりで拍子抜けさせられました。

破天荒さが楽しい

ただし、このクライマックスのタガが外れた大暴走は楽しくもありました。タンゴとキャッシュが防弾仕様+ガトリング砲装備のバカでかいRVで突撃したら、敵はよりでかい車で対抗してくるというエスカレートのさせ方。敵方にはミサイルランチャーを搭載した車までが控えているのですが、スタローンを相手にするくらいしか使い道のない車を今の今まで何のために保有してきたんだと、あまりのバカバカしさに楽しい気分になりました。

建物に入っての格闘ではBGMが突如として香港映画風になり、敵に回し蹴りを決めるスタローンという珍しいものも見られました。そしてクライマックスでは『燃えよドラゴン』風の鏡の間が唐突に現れるという闇鍋加減。めちゃくちゃなんだけど、なんかいろいろやりたかったんだなということはよく伝わりました。

ノリノリの吹き替え版

私が観た日曜洋画劇場版では、このクライマックスに差し掛かると吹替もノリノリであり、80年代アクションの楽しさを見せつけられました。

■カーチェイスの最中のキャッシュとタンゴの会話
「ニュースがある。良いのと悪いのどっち聞く?」「悪い方は?」「もうガス欠だ」「良い方は?」「もうすぐガス欠だ」

■カーチェイスであまりにいろんな特殊車両が出てくることに呆れたタンゴ
「ペレは中古車販売でもやってんのか?」

まさかの続編企画浮上

前述した通り、とにかく荒れた現場で続編はないかと思われたのですが、30年を経てスタローンが続編企画の検討に前向きとの報道がありました。スタローンから話を持ち掛けられたラッセルはまだ乗り気ではないようなのですが、30年後のタンゴとキャッシュの姿をぜひ見てみたい気もします。

シルベスター・スタローン「デッドフォール」続編を検討(映画.com 2019年9月24日)

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