【全6作】ターミネーターシリーズおさらい【何度目の核戦争よ…】

クリーチャー・メカ
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『ターミネーター』は6作品も製作されているのですが、監督もスタジオもバラバラでちょっとややこしくなっています。しかも『ターミネーター3』以降は毎回のように設定がリセットされており、どれとどれが繋がっているのかよく分かりません。そこでシリーズを整理してみました。

ターミネーター(1984年)

作品概要

製作までの経緯

ジェームズ・キャメロンが『ターミネーター』の着想を得たのは、監督デビュー作である『殺人魚フライングキラー』(1981年)の現場を僅か5日間で解雇された時でした。『殺人魚フライングキラー』の撮影地はローマでしたが、キャメロンにとっては言葉も通じない異国の地でたった一人。さらには心労から体調を崩して寝込んでいた際に、金属製の骸骨が自分を殺そうと炎の中から這いずってくるという悪夢を見ました。

キャメロンはこのイメージを絵に描き、プロデューサーであり恋人だったゲイル・アン・ハードと共に『ハロウィン』(1978年)のようなホラー映画として制作することにしました。

作品データ

製作年 1984年
監督 ジェームズ・キャメロン
脚本 ジェームズ・キャメロン
ゲイル・アン・ハード
上映時間 108分
製作費 640万ドル
興行収入 (北米)3837万ドル
(世界)7837万ドル
受賞歴 アボリアッツ・ファンタスティック映画祭
グランプリ
IMDBレート
(2020年1月12日閲覧)
8.0

あらすじ

核戦争と人類抵抗軍vs機械軍の戦争で荒廃した未来から、1984年のロサンゼルスに1体のサイボーグと一人の戦士が送り込まれた。サイボーグの目的は人類抵抗軍のリーダーを産むこととなる女性を抹殺することであり、戦士の目的はその阻止である。現在のロサンゼルスで、未来の人類の運命を決する戦いが始まるのだった。

感想

ホラーを軸として、SF、アクション、サスペンス、ロマンスと多くの要素が入り混じった作品なのですが、そのすべてを見事に捌ききってみせたキャメロンの天才的なストーリーテラーぶりが光っています。

また、無駄のないタイトな上映時間や、かけた予算以上のインパクトを観客に残す手法など、大規模化した後のキャメロン作品には見られない手作り感も本作独特の味となっており、シリーズ中どころかキャメロンの最高傑作は本作だと思います。

ターミネーター2(1991年)

作品概要

製作までの経緯

もともと、『ターミネーター』(1984年)に係る権利は製作したヘムデール社とジェームズ・キャメロン個人が50%ずつ所有しており、かつ、キャメロンはプロデューサーのゲイル・アン・ハードと結婚する際に自分の権利を1ドルでハードに譲渡していました。ヘムデールは前作公開直後から続編の製作を希望していたとも言われているのですが、キャメロンがヘムデールに対する不信感を持っていたことから、製作は進みませんでした。

その後、キャメロンとは『ランボー/怒りの脱出』(1985年)で、シュワルツェネッガーとは『レッドブル』(1988年)と『トータル・リコール』(1990年)で関わり合いになったカロルコが『ターミネーター』続編企画に興味を持ち始め、ヘムデールの経営難に乗じて彼らが持つターミネーター関連の権利を1000万ドルで獲得。残り50%を持つゲイル・アン・ハードとの共同製作という形で企画を軌道に乗せました。

作品データ

製作年 1991年
監督 ジェームズ・キャメロン
脚本 ジェームズ・キャメロン
ウィリアム・ウィッシャー
上映時間 137分
製作費 1億200万ドル
興行収入 (北米)2億484万ドル
(世界)5億1984万ドル
受賞歴 【アカデミー賞】
撮影賞(ノミネート)
メイクアップ賞(受賞)
視覚効果賞(受賞)
音響賞(受賞)
音響効果編集賞(受賞)
編集賞(ノミネート)
IMDBレート
(2020年1月12日閲覧)
8.5

あらすじ

1994年のロサンゼルスに、2029年から2体のターミネーターが送り込まれた。一体は少年期のジョン・コナーを守るための旧型モデルT-800、もう一体はジョンを抹殺するための最新型モデルT-1000。2体はそれぞれの目的のために、10歳のジョンを探し始める。

感想

アクションとドラマが融合した見事な娯楽作であり、何度見ても面白い映画だと言えます。ただし、伏線の回収などの面白さも追及していた第一作と比較するとSF映画としての妙味というものはなくなり、タイムパラドックスの処理も甘く、部分的に物足りなさも感じました。

ターミネーター3(2003年)

作品概要

製作までの経緯

『T2』の時点ではカロルコとゲイル・アン・ハードが50%ずつ権利を持っていましたが、カロルコは1995年末に破産。1997年にカロルコの創設者マリオ・カサールとアンドリュー・G・ヴァイナが個人資産でカロルコが保有していた50%分の権利を800万ドルで取得し、ゲイル・アン・ハードが持っていた残り50%の権利も700万ドルで取得。2002年にはターミネーター・フランチャイズを復活させるために新会社C2ピクチャーズを立ち上げ、製作に向けた体制を整えました。

ただし一貫してキャメロンは続編製作に否定的であり、キャメロンがやらないなら自分も出ないとシュワルツェネッガーも宣言していました。

しかし21世紀に入ってからのシュワは主演作の興行成績低下に苦しむようになり、ここに来て鉄板の『ターミネーター』で捲土重来を期すという思いはマリオ・カサールと一致しました。当時としては史上最高額の出演料3000万ドルと興行成績の20%の歩合という破格の条件の元に出演を引き受けたのでした。

作品データ

製作年 2003年
監督 ジョナサン・モストウ
脚本 ジョン・ブランカート
マイケル・フェリス
テディ・サラフィアン(初期稿)
上映時間 109分
製作費 2億ドル
興行収入 (北米)1億5037万ドル
(世界)4億3337万ドル
受賞歴 MTVムービーアワード
アクションシーン賞
IMDBレート
(2020年1月12日閲覧)
6.3

あらすじ

葬ったはずのスカイネット計画は時期と形を変えて存続しており、核戦争と、その後の人類vs機械の衝突という歴史は変わってはいなかった。そして成人後のジョン・コナーを巡り、2032年から2体のターミネーターが送り込まれてくる。

感想

個人的には大好きな映画です。人類抵抗軍のリーダーになるとだけ言われて育ったジョンが戦争の起こらなかった世界でどう生きているのかという点が深掘りされており、ジョンの物語としては非常に説得力があるのです。

T2で締めた話の続きをやり、いったん変わった歴史を元に戻すという困難な企画であることを考えると、完璧ではないが十分な出来だと言えます。話がよく練られており、前2作が見落としていた点を拾い、論理的におかしかった部分の修正がなされており、熱心なファンが作ったアナザーストーリーとしてきちんと機能していました。

ターミネーター4(2009年)

作品概要

製作までの経緯

『ターミネーター3』(2003年)こそ全世界で4億3千万ドルを売り上げるヒットとなったのですが、『アイ・スパイ』(2002年)、『氷の微笑2』(2006年)が興行的にも批評的にも苦戦し、2008年にC2ピクチャーズは倒産しました。

そこに現れたのが新興のハルシオン・カンパニーでした。同社は、広告代理店出身のデレク・アンダーソンと、トレーダーのヴィクター・キュビチェクにより2006年に設立された会社であり、コンテンツに係る知的財産権の所有とマネタイズを目的としていました。

2007年に同社はターミネーターに係る一切合切の権利をC2ピクチャーズから2500万ドルで買い取りました。将来のターミネーター映画の製作権、マーチャンダイズ及びライセンス権、『ターミネーター3』から派生する将来収益、テレビシリーズの製作権と多岐に及んでおり、C2ピクチャーズが製作し好評を博したテレビシリーズ『ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ』(2008-2009年)のシーズン2はハルシオンが製作しました。

作品データ

製作年 2009年
監督 マックG
脚本 ジョン・ブランカート
マイケル・フェリス
ポール・ハギス(ノークレジット)
ショーン・ライアン(ノークレジット)
ジョナサン・ノーラン(ノークレジット)
上映時間 114分
製作費 2億ドル
興行収入 (北米)1億2532万ドル
(世界)3億7204万ドル
受賞歴
IMDBレート
(2020年1月12日閲覧)
6.5

あらすじ

2003年の死刑囚マーカスは、サイバーダイン社への死刑執行後の検体提供に同意した。刑の執行により死んだはずのマーカスは目を覚ますが、そこは核戦争後の世界だった。偶然にカイル・リースと出会ったマーカスは、伝説の指導者ジョン・コナーが率いる人類抵抗軍の拠点を目指す。

感想

これまで断片のみで説明されてきた未来戦争を2時間に渡って描き切った作品であり、大規模なSF大作として機能しています。

またシリーズの小ネタの落穂ひろいもしており、ファンによる壮大な二次創作物と考えてみると見応えがかなりあって、世間で言われるほど悪い映画ではないと思います。ただしドラマパートの出来の悪さ、キャラクター達の魅力の無さは擁護できないレベルであり、映画としてはさほど面白くありませんでした。

ターミネーター:新起動/ジェニシス(2015年)

作品概要

製作までの経緯

『ターミネーター4』(2009年)の不振と『サラ・コナー・クロニクルズ』の打ち切りのダブルパンチで、ハルシオン・カンパニーは倒産しました。その後はヘッジファンド会社であるパシフィコアの手に渡り、もしターミネーターを製作したければパシフィコアに多額の権利使用料を支払うという状況となりました。

2011年にカリフォルニア州知事の任期を満了したシュワルツェネッガーは俳優業への復帰にあたって『ターミネーター』シリーズの再起動を考え、製作するスタジオを募り始めました。

これに手を上げたのがミーガン・エリソン率いるアンナプルナ・ピクチャーズでした。ミーガンは世界5番目の富豪として知られるラリー・エリソンの娘であり、20歳の頃から映画への投資をしており、2011年にアナプルナ・ピクチャーズを設立していました。そして2011年6月にライオンズ・ゲートに競り勝ってターミネーターの権利を取得しました。

その後、2014年に『ミッション:インポッシブル』シリーズや『スター・トレック』シリーズなどフランチャイズの扱いに長けた兄のデヴィッド・エリソンにターミネーターの権利を譲渡。デヴィッドは自身が所有するスタジオであるスカイダンス・プロダクションでの製作を決定し、同社への出資をしているパラマウントによる配給も決定しました。

作品データ

製作年 2015年
監督 アラン・テイラー
脚本 レータ・カログリディス
パトリック・ルシエ
上映時間 125分
製作費 1億5500万ドル
興行収入 (北米)8976万ドル
(世界)4億4060万ドル
受賞歴
IMDBレート
(2020年1月12日閲覧)
6.4

あらすじ

2029年。機械と人類との戦争は人類の勝利に終わろうとしていたが、窮地に陥ったスカイネットは、人類抵抗軍リーダー・ジョン・コナーの母であるサラを殺害するために、タイムマシーンを使って1984年にターミネーターT-800を送り込んだ。人類抵抗軍の兵士カイル・リースはその後を追うことを志願したが、到着した1984年で待ち構えていたのはT-1000であり、カイルが本来追いかけていたはずのT-800はサラの味方になっていた。

感想

シリーズで初めて、タイムパラドックスを大々的に扱った作品でした。

『ターミネーター』(1984年)の二次創作物としては史上最高とも言えるアイデアのぶち込まれた魅力的な企画だったのですが、大作映画に馴染まないアラン・テイラー監督の凡庸な演出と、シリーズ化前提だったため本作には直接関わらないが、続編のために必要な要素を描いておく必要があったことから、流れの悪い作品になっていました。作りようによっては大化けできるポテンシャルはあっただけに、ハンパな仕上がりになったことが残念で仕方ありません。

ターミネーター:ニュー・フェイト(2019年)

作品概要

製作までの経緯

『新起動/ジェニシス』(2015年)は三部作構想だったのですが、興行成績が損益分岐点をやや下回ったため三部作の継続はキャンセルされました。

ただしシュワはターミネーターシリーズを諦めてはおらず、様々なスタジオへの売り込みを続けていました。2019年に権利の一部が手元に戻るジェームズ・キャメロンが復帰することになり、『新起動/ジェニシス』から引き続きスカイダンス・ピクチャーズでの製作も決定しました。

作品データ

製作年 2019年
監督 ティム・ミラー
脚本 デヴィッド・S・ゴイヤー
ビリー・レイ
ジャスティン・ローズ
上映時間 128分
製作費 1億8500万ドル
興行収入 (北米)6225万ドル
(世界)2億6111万ドル
受賞歴
IMDBレート
(2020年1月12日閲覧)
6.5

あらすじ

2020年のメキシコにターミネーターRev-9と強化人間グレースが現れ、ダニー・ラモスという少女を巡って死闘を開始する。そこに現れたのがサラ・コナーであり、ネットワーク接続機能を持ったRev-9から逃れる術を持っていないグレースではダニーを守り切れないとして、サラも逃避行に加わることにする。

感想

直近三作品と同じく、ターミネーターの二次創作物という域を越えられておらず、キャメロン自身がやってもこの有様では、もう誰がやってもターミネーターシリーズはうまくいかないのでしょう。ただし、老いたT-800が出ている部分のみが異様に面白く、やはりこのシリーズはシュワのものなんだと再認識しました。

1と2さえ押さえておけばOK

確実に見ておくべきなのは第一作と第二作のみであり、それ以降の映画は「新3部作を目指す→興行成績がイマイチで流れる→別の3部作構造が立ち上がる」ということを繰り返しているためストーリーの関連性もなく、気が向いたものを見るということで問題なしです。

≪ターミネーターシリーズ≫
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