アライバル-侵略者-【凡作】見て損はないが、見なくても損はない(ネタバレあり・感想・解説)

(1996年 アメリカ)
NASAで地球外生命体の調査をする科学者ゼインは、人工としか思えない電波を遥か彼方の惑星からキャッチする。しかしその報告はNASAの上司に握り潰され、職場も解雇されたが、いよいよ何かあると感じたゼインは個人での調査を続けることにした。

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スタッフ・キャスト

脚本・監督は名脚本家デヴィッド・トゥーヒー

1993年の大ヒット作『逃亡者』で有名なトゥーヒーですが、本来の得意分野はSFです。製作が難航していた『エイリアン3』の企画に呼ばれた3人目の脚本家であり、1988年にリプリーが登場しないバージョンの脚本を執筆。結局彼の脚本はボツにされたのですが、刑務所惑星という設定は完成版に反映されました。1995年には、同じく製作が難航していた『ウォーターワールド』の企画に呼ばれ、元は子供の冒険映画だった同作を『マッドマックス2』を参考にダークなディストピアSFに書き換えました。2000年にはアイザック・アシモフの古典『夜来る』を翻案した『ピッチ・ブラック』がヒット。2004年と2013年の続編でも引き続き脚本と監督を担当しています。

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まぁまぁ実績のあるキャスト達

  • チャーリー・シーン:1965年生まれ。父はマーティン・シーン、兄はエミリオ・エステベス。1984年のジョン・ミリアス監督の反共戦争青春映画(ウソみたいですが本当にそういう映画です)『若き勇者たち』より本格的な映画出演を始めるや否や、『プラトーン』(1986年)、『ウォール街』(1987年)、『ヤングガン』(1988年)、『メジャーリーグ』(1989年)と話題作への出演が相次ぎ、80年代後半には大スターでしたが、90年代に入ると質の悪い映画が多くなって俳優としての価値は暴落。しかし、2002年にマイケル・J・フォックスがパーキンソン病治療のために降板したテレビドラマ『スピン・シティ』の主演で復活し、ゴールデングローブ賞受賞。以降はテレビ俳優として活躍し、2011年には経済誌フォーブスが発表する『テレビ界で最も稼いでいる俳優』で第一位にランクイン。しかし私生活が荒れまくっており、もっとも良い時の年収は30億円だったにもかかわらず、2016年には破産状態であることを発表しました。何をどうすれば30億円も使い切れるんでしょうか。
  • ロン・シルヴァー:1946年生まれ。1989年のキャスリン・ビグロー監督作品『ブルースチール』にて、元は普通の証券マンだったが偶然入手した銃にハマって連続殺人犯になり、自分の捜査をしている女性刑事と恋仲になって、最終的にその女性警官と対決する男という、こうして書いてみると訳の分からん役柄でブレイク。悪人顔が受けて、1994年の『タイムコップ』でもヴァンダムを陥れる政治家役をやっています。ヘビースモーカーで、2009年に食道がんにより死亡。
  • テリー・ポロ:1969年生まれ。2000年と2004年に製作され、『2』はコメディ映画史上最高額のヒットを記録した『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズで、ベン・スティラーの恋人にしてロバート・デ・ニーロの娘のパム役が有名。しかしそれ以外にパっとした仕事はなく、2005年以降はテレビ女優になりました。税金滞納やクレジットカードの未払いによって2014年に自己破産を申請。いろいろお疲れさんでしたって感じですね。
  • リンゼイ・クローズ:1948年生まれ。キャリアウーマンや学者など知的な役柄を得意としており、本作でも環境学者役を演じています。1984年に『プレイス・イン・ザ・ハート』でアカデミー助演女優賞ノミネート。元夫は現代アメリカを代表する劇作家デヴィッド・マメット。

登場人物

  • ゼイン・ジミンスキー(チャーリー・シーン):NASAの観測要員として地球外生命を探していた。非常に仕事熱心で熱中すると恋人もほったらかしにする。根っからのオタクで自分に自信がなく、美人のシャーがなぜ自分と付き合っているのかが分からない。地球外生命のものと思われる電波をキャッチしたことを上司のゴーディアンに報告したところ解雇され、他の研究機関への転職も邪魔されたため、衛星放送の修理人になった。
  • シャー(テリー・ポロ):ゼインの恋人。デートをすっぽかされても、衛星放送の修理人になっても、パラノイア的に陰謀論を口にするようになってもゼインを愛し続ける鑑のような女性。投資信託会社勤務だが、ゼインが陰謀を嗅ぎ回るようになったタイミングで、会社から突然の転勤を命じられた。
  • フィル・ゴーディアン(ロン・シルヴァー):NASAの管理職。地球外生命体の実在を示す電波のキャッチを報告してきたゼインを解雇した上で、記録データを破壊。さらに研究者としてのゼインの信頼を失墜させるウワサを流した。
  • イレーナ(リンゼイ・クローズ):地球科学研究所で異常気象の研究をしている。温室効果ガスが急増しており、10年後には地球の平均気温が12℃上昇することに気付いた。温室効果ガスの発生源であるメキシコのある町へ行ったところ、地元警察に観測の妨害を受けた。その際にゼインと出会い、しばらく彼と行動を共にする。
  • カルビン(リチャード・シフ):ゼインのパートナーで、地球外生命体の電波をキャッチした瞬間もゼインと一緒に観測をしていた。ゼインとは違ってゴーディアンにクビにこそされなかったものの、後に事故に見せかけて殺された。
  • キキ(トニー・T・ジョンソン):LAから祖母のいる街に引っ越して来た少年。屋根裏でのゼインの研究を覗き見したことがきっかけでゼインと親しくなり、観測を手伝うようになった。

死角のない考え抜かれた脚本

SFファンのトゥーヒーだけあって、SFとしてはなかなか作り込まれています。

まず、地球温暖化とエイリアンによる侵略を繋げて、エイリアンが自分に適した気候を作るためにテラフォーミングしている最中だという発想が唯一無二で面白かったです。本作の前年にトゥーヒーが脚本を手掛けた『ウォーターワールド』は極地の氷が溶けきった遥か未来の話だったので、本作と『ウォーターワールド』は地続きの世界だと脳内補完して見る楽しみもありました。

また、研究所を追い出された上に、ゴーディアンの流した悪評によって他の研究機関へも転職できなくなったが、どうしても観測を続けたいゼインが、街中の家庭用パラボラアンテナをこっそり繋げて、巨大なアンテナを作るという発想も面白くて好きです。SFとDIYは実に相性が良いのです。

そして、手製のアンテナで前と同じ信号を受信したが、ラジオの電波と混信していたことからその発信源は宇宙ではなく地球であり、すでに地球にいるエイリアンと母星のエイリアンが交信していることを突き止めたり、そのラジオがメキシコの放送局のものだったことから、エイリアンの地球での拠点がメキシコにあることを突き止めたりと、物語の進め方がいちいち知的で破綻がないので、見ていて実に気持ち良かったです。

見せ場の出来が良くない

しかし、破綻がない分、地味。ついにゼインがエイリアンの拠点を突き止めてそこに潜入しても、えらいものを見たという驚きや、これからどうなるんだというドキドキは皆無でした。拠点を突き止めるまでの前半の流れが良かった分、「え?こんだけ?」というガッカリ感が余計に増しています。

加えて、監督歴が浅いデヴィッド・トゥーヒーの演出も悪くて、スペースシップ内での追っかけにまるでスピード感がなく、ダラダラとした展開が眠気を誘いました。ドラマパートはまぁ見れたのに見せ場で眠くなるという、なかなか珍しいパターンとなっています。

全体にエイリアンの手口にぶっ飛んだものがなく、寝床にサソリを仕込むとか、上階のバスタブを落下させて殺そうとするとか、007の敵組織みたいな手口で口封じをしようとするのですが、これでは人間が手を下しているのと大差がなく、せっかくの侵略ものなのにSFらしさがなかった点がちょっと残念でした。

まとめ

エイリアンへのリーチ方法は実によく考えられており、決してダメな映画ではありません。ただし堅実な分、見世物映画らしいハッタリが効いていないし、演出のもたつきのためにアクションに面白みがなかったりと、無難に小さくまとまった映画だという印象を持ちました。観て損はないが、観なくても損はない、そんなB級映画でした。