ボディガード【駄作】全員のメンタルがおかしい(ネタバレあり感想)

(1992年 アメリカ)
ケビン・コスナー扮する凄腕ボディガードと、ホイットニー・ヒューストン扮する大物歌手が、危険をかいくぐりつつ恋仲になるという1992年の大ヒット作。

©Warner Bros.

中学時代のゴールデン洋画劇場が初見なのですが、その時にはピンときませんでした。世界的な大ヒット作だし、自分の感性が合ってなかったんだろうなぁということでその時は処理したのですが、20年以上経って午後のロードショーで改めて見てみると、これがめちゃくちゃな映画だったことを認識しました。

作品概要

70年代から存在していた企画

本作の脚本を書いたのはローレンス・カスダン。1980年の『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』や1981年の『レイダース/失われた聖櫃』で有名な脚本家なのですが、この人がハリウッドから評価されるきっかけとなったのは、70年代に執筆した本作の原型となった脚本でした。

この脚本を買い取ったワーナーはスティーブ・マックィーンとダイアナ・ロスを主演に考えていたのですが、結局企画は流れて、15年後にようやくケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンのコンビで陽の目を見たのでした。なお、本作でケビン・コスナーが珍しく短髪にしているのは、マックィーンをイメージしたためです。

1992年の大ヒット作

本作が公開されたのは1992年ですが、2500万ドルの製作費に対して世界興収は4億1000万ドルという猛烈なヒットとなっており、年間興行成績では『アラジン』に次ぐ第2位となっています。ケビン・コスナーは前年1991年にも『ロビン・フッド』で年間興収第2位を獲っており、まさにキャリアの絶頂期にあったと言えます。

感想

プロフェッショナリズムの欠片もないフランク

そんなビジネス面での大成功とは裏腹に、作品内容はかなり悲惨なものとなっています。まず気になるのは、ケビン・コスナー扮する主人公・フランクがやたら情緒的でプロらしくないという点です。

依頼主との色恋にすぐ発展しすぎ

死線をくぐり抜けるうちにフランクとレイチェルの間に連帯感が生まれ、いつしか恋愛に発展という筋書きは織り込み済だったのですが、かなり早い段階で二人が恋仲になるということは想定外でした。序盤でプロとは何ぞやとご高説を垂れていたのは一体何だったのかと。

感情の起伏激しすぎ

また、レイチェルとは結構すんなり夜を共にした割に、翌朝起きると「やっぱこういうのは良くないわ。プロに徹しなきゃ」とか言い出すし、困惑したレイチェルがフランクに焼きもちを妬かせたくてフランクの元同僚・ポートマンを当て馬に使うと、めちゃくちゃ機嫌を悪くしてたまたまパトロールルートにいたおっさんをボコボコに殴って八つ当たりするし、フランクの感情の起伏が激しすぎて付いて行けませんでした。

警護のことしか考えていない

あと、フランクの指示がめちゃくちゃなんですよね。危険だから予定されていた公演を全部キャンセルしろとか、主演女優賞と主題歌賞でノミネートされているアカデミー賞授賞式に出席するなとか、さすがにレイチェルがOKしようのない要求ばかりするわけです。

そりゃ外に出ずに引きこもっていれば外敵から襲われるリスクが軽減されるに決まってるのですが、それでは芸がありません。表舞台に出なければならない警護対象の安全をどう守るかという点にこそ、ボディガードの存在意義があると思うのですが。

情緒不安定にもほどがあるレイチェル

感情の起伏がおかしいという点では、ホイットニー・ヒューストン扮するレイチェルも負けてはいません。

最初はフランクの指示を完全無視。案の定、危険な目にあったところをフランクに救われると、今度はフランクにゾッコン・ラブになってグイグイ迫り始めます。えらい急ですなぁと思って見ていると、今度はフランクが「プロに徹しなきゃ」とめんどくさいことを言い出したので、レイチェルもフランクを遠ざけ始めます。

しかしまた脅迫電話がかかってきて怖くなったので、フランクの実家に匿われるという再度の蜜月に突入。その流れでクライマックスのアカデミー賞授賞式に入っていくのですが、会場の警護担当に対して「私はフランクに全幅の信頼を置いている」と言ったと思ったら、その次の場面にてステージ上で失態を犯すと、私を怖がらせたフランクのせいだと言い出します。フランクを頼りにしたり遠ざけたりを幾度となく繰り返すのでめんどくさくて仕方ありませんでした。

※ここからネタバレします。

犯人の行動原理が不明

なぜレイチェルが執拗に命を狙われているのかというと、レイチェルの成功を妬んだ姉・ニッキーが酒場で偶然出会った男にレイチェルの殺害依頼をし、金も払ってしまったからだという理由が明かされます。今では殺害依頼を後悔しているが、相手の男の連絡先も知らないので止めようもないと。後に、殺害依頼を受けたのはフランクの元同僚のポートマンであったことが判明します。

ただし、このポートマンの行動原理がまったくの謎なんですよね。フランクの実家を襲撃した際にはレイチェルではなくニッキーを誤射して殺害してしまうんですが、雇い主であるニッキーを殺した後にもレイチェルを狙い続ける理由がないのです。そもそも、ニッキーには素性も連絡先も与えていなかったのだから、金だけ受け取って何もしないという選択肢もあったのに、なぜ真面目にレイチェル殺害計画を進めているのか。

例えばポートマンにもレイチェルに対する特別なファン心理のようなものがあって、レイチェルを逆恨みしていたという背景などがあればまだスッキリしたのですが、ポートマンに係る説明が少なすぎて、映画全体に説得力がなくなっています。