【凡作】ブレックファスト・クラブ_ハッピーエンドで台無し(ネタバレあり・感想・解説)

その他
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(1985年 アメリカ)
アメリカの青春映画の金字塔的作品なのだが、日本の高校生活とはずいぶんと趣が違うので、日本人には入ってきづらい内容かも。スクールカーストの現実を指摘しながらも、甘すぎるクライマックスのために全体が締まらない印象ともなっており、個人的にはあまり楽しめなかった。

作品解説

青春映画の金字塔

本作はスクールカーストを描いた初の映画として有名であり、現在では青春映画の名作の評価を勝ち取っている。

それまでの青春映画と言えば、体育会系で人望もある主人公がガリ勉や不良とも仲良くツルんで行動するというパターンが多く見られたのだが、実際のところそんなわけねぇだろという嘘臭さがあった。

その違和感をはっきりとフィルムに刻み付けたのが本作であり、劇場公開時こそ大したヒットにはならなかったものの、本国では何度もテレビ放送される中で支持を獲得していったのだった。

感想

日本人には伝わりづらいかも

そんな名作なのだが、日本ではテレビ放送もさほどされてこなかったので馴染みがない。

90年代にテレビ洋画劇場を見まくっていた私ですら本作に触れた経験がなく、Amazonプライムの配信終了作品一覧に載っていたので慌てて見たのが人生初鑑賞だった。

で、感想はというと、出足は悪いのだが後半に向けて面白くなっていき、またつまらなくなったところで終わったので、あまり印象はよろしくなかった。

やはり青春映画は青春時代に見なきゃ感じるところが少なくなるよねというのが一点。

また日米の高校制度があまりに違い過ぎるので、日本人にとっては馴染みのない世界に感じられたことも減点ポイントだった。

日本のすべての高校には入学試験というものがあるので、学生はある程度の均質化が図られている。私立に進学する一部の坊ちゃん嬢ちゃんを除いて全員が地元の高校に通うアメリカとは、高校生活の質が違い過ぎるのである。

日本の高校ではスクールカーストというものが生じづらく、私自身、高校時代には楽しかった記憶しかないので、悩み多きメリケンの若人たちの告白にもあまり共感ができなかった。

閑散とした土曜の学校

それぞれ問題を起こした5人の生徒が反省文を書くために閑散とした土曜日の学校に集められるのだが、偶然にもバラバラのグループのメンバーだったことから、いつもの学園生活ではありえない交流が発生することが物語の骨子。

  • アンドリュー(エミリオ・エステベス)/体育会系
  • クレア(モリー・リングウォルド)/学園のマドンナ
  • ブライアン(アンソニー・マイケル・ホール)/優等生
  • ジョン(ジャド・ネルソン)/不良
  • アリソン(アリー・シーディ)/不思議ちゃん

登場人物はこの5名で、普段会話をするような間柄ではないため、彼らには共通の話題がない。

なので前半は不良のジョンが場を引っ掻き回すことで物語が動いていくのだが、この不良の暴れ方が取ってつけたようでちょっと不自然だった。

つっぱってはいるが根は良い奴というのが出過ぎていて、暴れ方にも危なっかしさがない。現実のヤンキーというのはもっと悪どく手に負えないだけに、ジョンの中途半端さに作劇的な都合が大いに感じられたのも不満だ。

そんなわけで前半は面白くないのだが、そのうち5人は打ち解けてきて、ジョン以外のメンバーも心情の吐露を始める。

ここから映画はぐいぐいと面白くなっていくのだが、普段関わらない相手だからこそ本音を言えるという作劇上の必然性もあって、なかなか深くもある。

そんな中、優等生のブライアンが鋭いことを言って場の空気を変える。

「今は僕たち良い感じだけど、月曜に会ったら無視するんでしょ?」

グサッとくる一言だが、これはスクールカーストの核心を突いている。仲間に見られていれば、ここでの友情なんてアッサリと捨てられてしまう。ガリ勉の僕と仲が良いなんて、みんな恥ずかしくてオープンにはできないよねという。

このブライアンの指摘にはっきりノーと言えたのは、同じくスクールカーストで下層にいる不思議ちゃんのアリソンだけで、他の奴らはまごまごしている。

この面倒くささこそがアメリカの青春なのだろう。これは素晴らしい視点だった。

ハッピーエンドで台無し ※ネタバレあり

なのだが、結局本作は80年代らしいハッピーエンドを迎える。

彼らは音楽を仲立ちとしてより関係性を強固なものとし、スクールカーストを乗り越える団結を築くのである。

最後には2組ものカップルが出来上がる。あぶれるのがガリ勉のブライアンという辺りが世知辛いのだが、世の中はそういうものだ。がんばれブライアン。

なのだが、このハッピーエンドでスクールカーストに係る考察が薄まった観は否めない。

やはりブライアンが場の空気をぶち壊したあの一言で終わるべきだった。

友情はこの日限りで、月曜からは赤の他人に戻るという非情な選択をして欲しいところだった。

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