【凡作】ザ・チェイス_優秀なキャラクター劇とイマイチなアクション(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(1994年 アメリカ)
脱走犯のジャックは、給油のために立ち寄ったガソリンスタンドで警官に追い込まれ、咄嗟の判断でその場に居た女性を人質に取って急場を逃れたが、その女性が有名な大富豪の娘だったことから、騒ぎは急激に拡大していく。

©20th Century Fox

スタッフ・キャスト

監督・脚本のアダム・リフキンって一体誰?

1966年生まれ。本作制作時点で26歳という若さだったことが示す通り早熟タイプのクリエイターであり、1988年頃に若干21歳でフォックスに雇われ、『猿の惑星』(1968年)のリメイク企画の脚本を執筆しました。当該脚本は当時のフォックス社長から高く評価されたのですが、その社長が社長職を退いたことから企画は有力な推進者を失い、映像化されることはありませんでした。リフキンが抜けた後に『猿の惑星』は鬼門となり、オリバー・ストーン、クリス・コロンバス、ピーター・ジャクソン、ローランド・エメリッヒ、ジェームズ・キャメロンといったビッグネームが次々と関わったもののまとまらず、最終的にティム・バートン監督の『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001年)となって酷評を受けたのでした。

その頃リフキンはと言うと、メジャーから離れて奇抜な設定のもとで笑いを含んだドラマ作品を得意とするインディーズ監督となり、背中から第三の腕が生えてきたコメディアンの悲喜劇を描いた『ワンダー・アーム・ストーリー』(1991年)、精神病院で育った多重人格者を主人公にしたコメディ『12人のイカれた男たち』(1992年)などを監督。また、設立間もないドリームワークスで『マウス・ハント』(1997年)と『スモール・ソルジャーズ』(1998年)の脚本を書きました。

21世紀に入ってもB級コメディ路線は変わらずで、引退したスーパーヒーローが子供の超能力者達を鍛える『キャプテン・ズーム』(2006年)や、監視カメラの映像のみで全編を作り上げたドラマ『LOOK』(2007年)などを手掛けました。

製作・主演はチャーリー・シーン

1965年生まれ。父はマーティン・シーン、兄はエミリオ・エステベス。1984年のジョン・ミリアス監督の反共戦争青春映画(ウソみたいですが本当にそういう映画です)『若き勇者たち』より本格的な映画出演を始めるや否や、『プラトーン』(1986年)、『ウォール街』(1987年)、『ヤングガン』(1988年)、『メジャーリーグ』(1989年)と話題作への出演が相次ぎ、80年代後半には大スターでしたが、90年代に入ると質の悪い映画が多くなって俳優としての価値は暴落。

しかし、2002年にマイケル・J・フォックスがパーキンソン病治療のために降板したテレビドラマ『スピン・シティ』の主演で復活し、ゴールデングローブ賞受賞。以降はテレビ俳優として活躍し、2011年には経済誌フォーブスが発表する『テレビ界で最も稼いでいる俳優』で第一位にランクイン。しかし私生活が荒れまくっており、もっとも良い時の年収は30億円だったにもかかわらず、2016年には破産状態であることを発表しました。何をどうすれば30億円も使い切れるんでしょうか。

共演はクリスティ・スワンソン

1969年生まれ。9歳からCM出演し、15歳の時に『プリティ・イン・ピンク/恋人たち街角』(1986年)で女優デビュー。80年代後半から90年代前半にかけてはまぁまぁ見かけることの多かった女優さんであり、チャーリー・シーンとは『フェリスはある朝突然に』(1986年)、『ホット・ショット』(1991年)に続く三度目の共演となります。

代表作は、後に『アベンジャーズ』(2012年)を撮るジョス・ウェドンが脚本を手掛けた『バッフィ・ザ・バンパイア・キラー』(1992年)であり、同作ではタイトルロールであるバッフィ役を演じました。ただし、バッフィとして一般に記憶されているのはスワンソンではなく、続編として制作されたテレビドラマ『バッフィ〜恋する十字架〜』(1997年~2003年)のサラ・ミシェル・ゲラーだったりする点が泣かせます。

21世紀に入ると目にする機会も減りましたが、出演作は細々と続いているようです。

登場人物

  • ジャック・ハモンド(チャーリー・シーン):2年前に銀行強盗犯で逮捕され、舞台となる日の前日に懲役25年が確定したが、護送中に脱走した。28歳。暴力嫌いで、強盗については冤罪を主張している。警察から逃れるために仕方なくとった人質が大富豪の娘ナタリーだったことから、身代金目的を疑われて警察やマスコミからの過剰な追撃を受けることになる。
  • ナタリー・ヴォス(クリスティ・スワンソン):大富豪ダルトン・ヴォスの娘だが、大富豪の家に生まれついたことを不幸に感じている。父と継母とはうまくいっておらず、自分の人生を一変させるようなアクシデントを内心望んできた。
  • ダルトン・ヴォス:大富豪でナタリーの父。何でも金で解決しようとする割にはドケチで、娘の身代金としてジャックに提示した金額がたったの5万ドルだった。EDを患っている。近々選挙に出馬予定で、その際には娘の誘拐事件を利用しようとしている。
  • ドブス巡査(ヘンリー・ロリンズ):地元の警察官で、自称・横丁の熱血漢。地元ケーブルテレビの密着取材を受けている最中にジャックによるナタリー誘拐事件が発生し、テレビクルーを乗せたまま彼らの車を追跡。警官という職業に誇りを持っており、テレビクルーに対しては大言壮語気味の発言をする。
  • フィグス巡査(ジョシュ・モステル):ドブス巡査の相棒で、ジャックを追跡するパトカーに同乗している。ドブスと違って警官という職業に不満を抱えており、生活のために仕方なく警官を続けている状態にある。
  • アリ・ジョセフソン(マーシャル・ベル):ジャックの弁護士で、心優しいジャックの人間性を理解している数少ない一人。ジャックに対しては再審請求をするから自首しろと勧める。

感想

『続・激突!/カージャック』をよりコミカルにした作品

本作を見てまず感じるのは、スピルバーグの劇場デビュー作『続・激突!/カージャック』(1974年)とよく似ているということであり、主人公が気の良い犯罪者であること、カーアクションを主軸としていること、その割に牧歌的な空気があること、主人公よりもメディアや一般人といった外野の方にこそ異常性があること、家族問題がドラマの周辺にあることなど、作品の骨子はほぼ同じと言えます。

ただしアダム・リフキン固有の特徴として、コメディ要素は強くなっています。キャラクターのクセがかなり強く、彼を追いかけるドブス巡査や、被害者家族であるヴォス夫妻はかなり強烈なキャラとなっています。特に、ジャック車の後ろを走っているだけなのに大言壮語を繰り返すドブス巡査のキメっぷりはかなりのものでした。日曜洋画劇場版では江原正士さんの吹替が非常にハマっており、このキャラクターをより浮かく味わうことができました。

他方、冤罪で強盗犯にされた上に、令嬢の誘拐という余罪まで追加されるという異常事態の真っただ中にいる主人公ジャックこそが凡人であり、彼の存在がおかしな周辺人物との間でコントラストを為しているという点は、うまい味付けの仕方だと思いました。状況や主人公の設定はシリアスなのに、キャラ描写に力を入れることでコミカル要素を強く押し出すという本作の方針は、うまく機能していたと思います。

ドラマ性は『続・激突!』に劣る

ただし、ドラマには特に感じるものがありませんでした。『続・激突!』(1974年)や『パーフェクト・ワールド』(1993年)など、優秀な追跡劇には追う側と追われる側の双方にドラマがあり、クライマックスで2つのドラマが合流して力強い流れを生み出すという形となっているものなのですが、本作の場合には追う側にドラマがまるでないし、追われる側のドラマも二人が結ばれる中間にて答えが出てしまっているので、クライマックスに何も待っていないという状態になっています。

そしてジャックとナタリーのドラマにしても、ジャックが心根の良い犯罪者で、令嬢のナタリーが徐々にジャックに惹かれていくという物語はあまりに予定調和すぎて面白みに欠けました。

カーアクションは迫力不足

死体を運んでいるトラックがカーチェイスに巻き込まれてハイウェイに死体をばら撒くというギャグはマイケル・ベイ監督の『バッドボーイズ2バッド』(2003年)を先取っており、ところどころにおっと言わせる場面もあったものの、全体としてはスピード感や迫力に欠けたカーアクションだという印象を持ちました。

全編をカーチェイスとしたことでスポットでの迫力には欠けるし、疾走する車のスピード感を伝えるカメラワークがあったわけでもなく、視覚に訴える楽しみはほとんどありませんでした。

まとめ

キャラクター劇としてはうまくまとまっており、程々に湿っぽい設定の中で、程々の笑いを交えた気持ちの良い話となっています。その点で見て損のない映画だとは言えるのですが、特にカーアクションで見るべき要素が少ないので、見応えはありませんでした。

全編を車という移動体を舞台にした作品であり、配給も共にフォックスということで、同年公開の『スピード』(1994年)との共通点も多い作品なのですが、なぜここまで差が付いたという感じです。

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