【凡作】地球の静止する日_武闘派エイリアンの警告(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(1951年 アメリカ)
一部を除いて面白くなかったです。昭和26年の映画なのでいろいろと目をつむるのが作法かもしれませんが、私は躊躇せず現在の視点で指摘しますので、ファンの方は以降のレビューを読まれない方がいいと思います。

感想

古典映画ならではのしんどさ

キアヌ・リーブスのリメイク版は見たものの、ロバート・ワイズ監督のオリジナル版はDVDを買ったっきり10年以上放置しており、今回初めて鑑賞しました。

キアヌ版がオリジナルと比較してどうのこうのと批判されているので、こちらはさぞかし面白かろうと思って見たのですが、ぶっ飛ぶくらい面白くなかったのが衝撃的でした。キアヌ版に文句言ってた人達は、本当にこちらを見ているのでしょうか。

全般に言える欠点は、話がほとんどセリフで説明されるし、肝心の会話も面白くないということ。

クラトゥと少年のやりとりなんて拷問のように面白くないし、天真爛漫な少年像も現代の目で見るとしんどいですね。人間らしさを感じないというか。

そして会話が始まると二人の人間が棒立ちで喋ってるだけであり、横並びの登場人物の腰から上を映すと、カメラアングルはまったく動かなくなります。

この動かない画を見続けるのもしんどいものがあって、短い映画であるにも関わらず、何度も寝落ちしかけました。

話がいろいろと穴だらけ

あらすじはざっくりとこんな感じ↓。

ワシントンD.C.にUFOが飛来。宇宙人クラトゥ(マイケル・レニー)は各国政府代表との面談を要求するのですが、不穏な国際情勢下にあって「モスクワでやるんならいいけど、ワシントンには行きませんよ」という回答が相次ぎ、目論見は失敗。

やることのなくなったクラトゥは市内に出て、そのうち庶民的な宿に居つくのですが、そこで戦争未亡人やその子供と交流して人間とは何ぞやを知ります。

で、ぶらぶらするうちに出会った博士から、自分の人脈で世界各国の有識者を集めるので、そこで話してはどうかとの提案を受け、ただし何もなしでは訴求力がないということで、30分間世界中の電力を止めるというデモンストレーションを行うことにします。

そこで地球が静止するわけで、全般的に劣った人類への対応に困り果てるクラトゥという図式が置かれているわけですが、クラトゥにも悪いところはあります。

電波を拾って地球のことを学習してきたと言う割に、当時の国際情勢にはまったく明るくないというのは如何なものかと。阿呆で馬鹿な人類を説得しに来たにも拘らず、甘い見込みで動きすぎです。

ファーストコンタクト時の登場のし方も無闇に相手の警戒心を高めるものであり、未開人である人類に対する配慮がなさすぎます。もっと穏やかな登場のし方をすればいいのに。

また世界の指導者を一堂に集めることが不可能なのであれば、UFOで世界を回ってワシントン講演、モスクワ講演をやればいいとも思ったし。

その他、穴を列挙するとキリがありません。

  • UFOとかゴートがやたらチープ
  • UFOに付けられた見張りがたった2名
  • クラトゥの病室には鍵すらかかっていない
  • 政府や軍隊の対応全般に緊張感がない
  • 金を持っていないクラトゥは宿代をどう払うつもりだったのか
  • 市井の人々との関わり合いがクラトゥの判断に影響を与えたわけでもなく、結果から振り返ると博士に会う前のパートが丸々無駄

あと、少年に案内されてリンカーン記念堂を訪れたクラトゥが「こんな立派な人と会見したかった」と言う辺りの、アメリカの偉人推しもしんどかったですね。まだ国際マーケットが意識される前のハリウッドなので、アメリカ人のみに寄り添った作風になったのでしょうが。

衝撃の事実!反戦メッセージではなかった!

その後、なんやかんやあってクラトゥは人類向けの演説をします。

ようやくここで主題が語られるわけですが、核兵器を持ち戦争を繰り返す人類に対して平和の尊さを解くものだとばかり思っていたら、実は全然違っていたことが今回一番の発見でした。

宇宙人たちは核兵器を持つに至った人類を憂慮してクラトゥを送り込んだのですが、「よその星にまで迷惑をかける兵器開発はするな」がその趣旨。人類同士で殺し合いをする分には、勝手にやっとけという認識を示します。

これは衝撃的でしたね。全然平和の使者ではないという。

更には宇宙全体の安全保障の枠組みについても説明されるのですが、実はゴートが監視役であり、危険を察知すれば容赦なくその文明を潰しにかかるという方法をとります。

要は暴力をより強い暴力で押さえ込んでいるわけで、やってることは核の傘による均衡という人類と大差ないのです。

もうひとつ面白かったのが、今回の訪問に当たってクラトゥが主でありゴートはそのサポート役かと思いきや、実際の関係性はその逆だったということ。

ゴートこそが宇宙の安全保障の中心的存在であり、クラトゥはその説明役としてやってきたに過ぎないのです。そして「この方は本当にヤバイので怒らせないでおけ」と言って去っていくという。

この図式の転換は軽いドンデン返しに感じられたし、AIに管理を委ねている高度な知的生命体という構図も、現代的で面白かったです。

それまではグダグダだったけど、最後だけは良かったです。

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