【凡作】地球が静止する日_観客が静止した(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(2008年 アメリカ)
阿呆な人物が阿呆なことをしでかす映画が苦手なのですが、本作はまさにそのパターンでした。軍人も政治家も阿呆揃い。そして子供が輪をかけて阿呆なので、鑑賞中のストレスが凄かったです。救いはスペクタクルが素晴らしかったことで、見せ場のおかげで最低にはならずに済んでいます。

作品解説

往年の名作のリメイク

本作はロバート・ワイズ監督の社会派SF『地球の静止する日』(1951年)のリメイク企画です。1951年版は「地球”の”」で、2008年版は「地球”が”」という違いがあります。

この往年のSF映画に目を付けたのは、16歳の頃からキアヌ・リーブスのエージェントを務めてきたアーウィン・ストフで、キアヌを宇宙人クラトゥとして出演させることを思いつきました。

『ラスト・キャッスル』(2001年)『ゲティ家の身代金』(2017年)の脚本家デヴィッド・スカルパが脚本を執筆。

スカルパは2005年8月のハリケーンカトリーナの被害に影響を受け、オリジナル版の核廃絶に対し、リメイク版では環境保護をテーマに置くこととしました。

監督に選任されたのは『エミリー・ローズ』(2005年)、『ドクター・ストレンジ』(2016年)のスコット・デリクソン。

デリクソンは、時代背景と密接に関連したオリジナルと同じアプローチはとれないと判断し、同じく冷戦時代に製作された古典SFを換骨奪胎した『SF/ボディスナッチャー』(1978年)をベンチマークとして、本作を完成させました。

批評的には苦戦した

一般的には評判が悪く、ベースに一貫したストーリーがないことを指摘されています。

ラジー賞ではワースト前編・リメイク・スピンオフ・続編賞にノミネートされましたが、幸いなことに受賞は逃しました(受賞したのは『インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国)。

興行的にはまずまずだった

2008年12月12日に全米公開され、全米No.1を獲得。作品評の悪さから2週目以降は順位を下げましたが、それでも全米トータルグロスは7936万ドルで、評判の割には悪くない結果でした。

国際マーケットでもまずますで、全世界トータルグロスは2億3309万ドル。8000万ドルという大作としては並みレベルの製作費と比較して悪くない結果でした。

特にキアヌ人気の高い日本での売上が良く、興行収入24億円を記録しています。当時、私も映画館で見ましたが、客入りは好調だったという記憶があります。

感想

クラトゥ=モロボシ・ダン、ゴート=エヴァ

本作でキアヌ・リーブスが演じるのは宇宙人クラトゥ。

クラトゥは1928年にカラコルム山脈で遭遇した登山家をモデルにして人間体を作り上げているのですが、これは地球人青年 薩摩次郎をモデルに人間体モロボシ・ダンを作ったウルトラセブンと同じ方式ですね。

そして、クラトゥが連れている用心棒ロボット ゴートは、等身大だった1951年版とは対照的に巨大化が図られており、クライマックスでは黙示録を起こす兵器にもなることから、エヴァンゲリオン初号機のような印象を持ちました。

指令室とちょうど目が合う拘束室の様子も、まんまネルフ本部だったし。

序盤のパニックは素晴らしい出来

地球外生物学者ヘレン・ベンソン博士(ジェニファー・コネリー)の自宅に突然やってくるエージェントたち。

「国家的危機です。ご同行ください」と言われて公用車に乗せられると、ヘレンを通すためだけに交通規制がかけられているという、尋常ではない状況となっています。

そして集合場所に到着すると、他に集められていたのは核物理学者、天文学者らその道の権威ばかり。

このマイケル・クライトンの小説みたいな展開に、まず燃えました。

宇宙で観測された物体がマンハッタンを目指しており、その対策を考えていただきたいとの説明があるのですが、残された時間はたったの1時間。ディザスター映画史上かつてないほどの逼迫したシチュエーションです。

それほど時間がないのなら勿体ぶらずに移動する車中で状況を伝えろよと思うのですが、とりあえずそういうことらしいです。

で、当然のことながらたったの1時間で有効な対策など立てられず、一行はとりあえず落下推定地点のマンハッタンへと移動するのですが、飛来した物体は減速し、セントラルパークに着陸。

その後、物体から現れたロボット ゴートと陸軍及びNY市警との戦闘が始まるのですが、ゴートは周囲の電力を断ってすべての兵器を無効化し、音波で兵士達を一時的に昏倒させ、戦闘を一瞬で終わらせます。

このテンションの高い冒頭は最高でしたね。ファーストコンタクトものの中でもかなりの上位に入るほどの素晴らしい見せ場となっています。

この冒頭だけでも、本作には見る価値があります。

国防長官の対応が阿呆すぎる

その後、被弾した宇宙人が回収されるのですが、手術台で宇宙人の肉体が剥がれ落ち、中からキアヌ・リーブスが出てきます。彼の名前はクラトゥ。

地球外生命の代表としてやって来たと言うクラトゥに対し、キャシー・ベイツ扮する国防長官が交渉に当たるのですが、彼女の登場を境に、映画のクォリティは三段階ほど下がります。

とにかくこいつの対応が出鱈目でツッコミどころ満載なのです。

ファーストコンタクト時に我々を圧倒するテクノロジーを持つ相手であることは確認済であるが、幸いなことに今のところ敵意はなさそうである。

ここは相手を刺激しないよう穏便に事に当たらねばならない場面なのですが、国防長官は物凄い喧嘩腰で対応します。相手が機嫌を損ねたらどうしようかという恐怖心はないのでしょうか。

で、クラトゥは地球の指導者が集まる国連に連れていけという、状況から考えて妥当な要求するのですが、国防長官はこれも拒否。

全人類で事に当たらなければならない状況であるにもかかわらず、なぜ一国の国防長官にすぎないあなたが判断を下してるんでしょうか。

そして、得体の知れないクラトゥに対して薬剤投与しようとしたり、明らかに知能が上の相手であるにもかかわらず尋問しようとしたりと、無駄な小細工が止まりません。

しかもこの状況で尋問官とクラトゥを二人っきりにして、案の定、逃亡を許してしまうのだから阿呆中の阿呆です。

その後も、セントラルパークでスリープ状態にあるゴートを無人機で攻撃するなど、考えの足りない対応を繰り返します。SFに登場する軍関係者は、なぜこうも阿呆揃いなんでしょうね。

こちらの攻撃が通用しないことはほぼ明らかな相手を、なぜ無闇に攻撃したがるのか。

本作にも出演したカイル・チャンドラーが後に主演する『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)では、「攻撃したとしてゴジラを倒せるのか?倒せないなら無闇に刺激するな」と言って軍人を諫める場面がありましたが、そういう分別が欲しいところでした。

子供のウザさが尋常ではない

施設を脱出したクラトゥはヘレンに助けを求め、長期にわたって地球に潜伏している仲間との面談場所を目指します。

その流れで合流するのがヘレンの連れ子ジェイコブ(ジェイデン・スミス)なのですが、彼の登場で映画のクォリティはさらに3段階下がります。

このジェイコブがウザさ全開で、見てられないほど酷いのです。

大人に対しては常に生意気な態度で、何を言われても否定と反発で返してきます。今が緊急事態の真っただ中であることを認識せず「もしパパが生きてたらあーだこーだ」とありえない前提の口答えばかりし、挙句、ヘレンに相談もなしに当局に通報して全員を危機に陥れます。

もちろんクラトゥがそう簡単に捕まることはないのですが、反撃を余儀なくされたことから、彼を追いかけてきたヘリコプターのパイロット達は死亡します。

こいつが要らんことを通報したせいで人まで死んでいるのですが、事ここに及んでも生意気な態度を改めないのだから困ったものです。

クラトゥの心変わりに説得力がない ※ネタバレあり

この通り阿呆な国防長官や生意気な子供を見たクラトゥは、「やっぱあかん奴らや」という思いを強めます。

クラトゥの来訪目的は地球環境の保全であり、その最大の阻害要因である人類が説得してもどうにもならないようなら排除せよとの指示を受けていたらしいのですが、人類は最後の審判をパスできなかったわけです。

程なくしてゴートに仕込まれていた人類抹殺プログラムが発動し、黙示録のイナゴの大群の如く、ナノボットが人類文明を根こそぎ食い尽くし始めます。

が、その窮地の中で見たヘレンとジェイコブの親子の情愛を見たクラトゥは判断を変更し、人類抹殺を途中で止めるというのが物語の顛末。

阿呆のジェイコブの成長に触れることで、クラトゥは人類全体の変われる可能性を見出すわけですが、クラトゥの翻意部分に全く説得力がないので、本来は感動的であるはずのクライマックスが、訳の分からんオチになってしまっています。

ヘレンから切り離され、一時的にジェイコブとクラトゥの二人になった辺りがこのドラマの最重要部分なのでしょうが、ここでジェイコブが変わったというよりも、状況が変わったので新しい保護者クラトゥに合わせざるを得なかったようにしか見えませんでした。

また、その後のヘレンとジェイコブの再会も感動的ではないので、クラトゥが一体何に心を打たれたのかがピンときませんでした。

3人を助けて死んだジョン・ハムの亡骸を置いて全力疾走する場面なんて、利己主義の塊でしかなかったし。

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