【凡作】ハンター(1980年)_ユルい人情アクション(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1980年 アメリカ)
マックイーン主演のハードなクライムアクションかと思いきや、妙に緩んだ空気の人情もので、コメディ成分も多めなので、期待したものとかなり違った。話自体も面白くはなく、駄作と言った方が適切なのだが、終盤の大アクションだけは見ものである。

感想

ユルい人情劇

中学時代に地上波の深夜枠で見たんだけど、つまらなくてその後は見返してこなかった作品。

最近、我らがテレ東が放送してくれたので二度目の鑑賞となったが、やはりつまらんかった。

賞金稼ぎのラルフ・ソーソン、通称パパが主人公。ソーソンは実在する人物で、本作にもバーテン役で出演している。保釈中に逃亡した犯罪者を捕まえるのがソーソンの仕事で、彼の捕り物が本筋となる。

“キング・オブ・クール”と呼ばれたスティーブ・マックイーンが賞金稼ぎに扮し、タイトルが「ハンター」とくれば壮絶なバイオレンスを期待させられるのだが、全然そうではなかったことが本作のガッカリなところ。

冒頭、ソーソンは二人の賞金首を捕まえるのだが、一人は気の良い黒人青年で難なく確保できたし、二人目の大男とは格闘にこそなったものの、一度拘束すれば大人しくなった。

ソーソンの自宅は、かつて彼が捕まえてきたと思われる元犯罪者たちのたまり場になっており、さっき捕まえてきた黒人青年も早速その仲間入り。

賞金首から慕われる賞金稼ぎというのがこの話の新機軸であり、本作は執念で犯罪者を追い詰めるハードなバイオレンスではなく、敵味方のボーダーが限りなく低い人情劇であるということが分かる。

それはそれでいいと思うのだが、スティーブ・マックイーンにやらせる必要はなかったかなと。マックイーンが演じるからには、クールな賞金稼ぎであって欲しかった。

まぁそれならそれで、かつての賞金首達とソーソンとの交流が味わい深く描かれるのかというと、そういうわけでもない。一人一人の個性が弱く、ただソーソンの家に入り浸っている名前もよく分からない奴らでしかないため、彼らの存在がただの後景にしかなっていない。

続いてソーソンはダイナマイト強盗を働いたブランチ兄弟を捕まえに行き、車とトラクターでぐるぐると追いかけっこをする。この捕り物はコミカルに演出されているのだが、どうにも笑えないのがつらかった。

本作を監督したのはバズ・キューリックという人物で、名前を聞いたことないなぁと思って調べてみたらテレビドラマのディレクターだった。

この演出の軽さはテレビ由来のものかと妙に合点がいったのだが、スティーブ・マックイーンという大物を扱える監督ではなく、ほとんどすべての場面でスベっている。

もともと監督には『カプリコン・1』(1978年)のピーター・ハイアムズが雇われていたのだが、どういうわけだか脚本を書いたところでクビにされたらしい。

全盛期のハイアムズならマックイーンの魅力を引き出せただろうに、まことに残念な降板劇である。

ハイアムズ降板後にはマックイーンが自分で監督することを希望したのだが、全米監督協会の規定でそれは叶わなかったようだ。

そこで御しやすい傀儡監督として置かれたのがバズ・キューリックだったのだろうということは、容易に想像できる。

マックイーン渾身のスタントを見よ!

なんだが、後半になると作品の色合いが変わってくる。

仲介人のリッチー(イーライ・ウォラック)が危険な案件を持って来て、高額報酬と引き換えにソーソンはこれを引き受けるのである。

銃撃に始まり、屋根伝いの逃走劇など、これまでのユルんだ空気から一転して、激しいアクションが始まる。

白眉は走行中の列車の屋根での攻防戦で、バランスを崩したソーソンがパンタグラフに掴まって宙づりになる場面は、なかなかのスリルと迫力だった。

本作のマックイーンは『ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズばりに自らアクションをこなしており、危険な宙づり場面も本人が演じている。

カット割りやカメラワークで誤魔化さないリアルなアクションにはやはり説得力があって、かなりの見応えだった。

しかも本作撮影時点でのマックイーンは末期癌で余命いくばくもない状態で(撮影終了の1年後に逝去)、走るのもキツかったらしい。そんなマックイーンという男の生き様も込みで、終盤のアクションには鬼気迫るものがあった。

この終盤の大捕り物だけは見ものである。

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