ラスト・ボーイスカウト【凡作】荒み方が最高な前半とブチ壊しの後半(ネタバレなし感想)

(1991年 アメリカ)
私立探偵がダンサーの警護を引き受けるが、その背後には政界やプロフットボール界を巻き込む巨大な陰謀があった。

©Warner Bros.

史上最高額の脚本

本作の脚本を書いたのは『リーサル・ウェポン』のシェーン・ブラックであり、この人は1996年の『ロング・キス・グッドナイト』の脚本が4百万ドルで売れたことで有名なのですが、それに先駆ける本作にも、当時としては史上最高額の175万ドルの値が付けられました。

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なお、本作には『トータル・リコール』や『ターミネーター2』などで金に糸目をつけていなかった頃のカロルコも関心を示しており、そちらからは225万ドルという金額が提示されていたのですが、ブラックはすでに関係のあったジョエル・シルバーに対して義理を立て、提示額は低かったものの(それでも史上最高額でしたが)ワーナーを選択したのでした。

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荒んだキャラ造形

80年代に流行したバディ・ムービーの形をとりつつも、通常はハードなキャラとソフトなキャラの組み合わせとすべきところを、ハードとハードの組み合わせとしていることが本作の特徴であり、さながらそれはリッグスが二人いる『リーサル・ウェポン』。胸焼けを起こしそうなほどのハードボイルドさなのです。

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ジョー(ブルース・ウィリス)

元凄腕のシークレットサービスで大統領の命を救った英雄であるが、大物政治家・ベイナードを警護していた際に、女性に過剰な暴力プレイを強要するベイナードを殴って解雇。正しい行いをしたのに報われなかった経験から世間も自分自身も憎むようになり、アルコール依存症の負け犬となっていました。

ジミー(デイモン・ウェイアンズ)

元プロフットボールのスター選手だったが、交通事故で家族を失ったことで身を持ち崩し、心身の耐えがたい痛みから逃れるためヤク中になり、最終的に賭博でフットボール界を追放されました。彼には同情すべき背景が多分にあるものの、世間からの評価は「不正にまみれて選手生命を断った負け犬」でしかない点が泣かせます。

魅力的なストーリーテリング

容赦なく関心を惹かれる冒頭

冒頭のたった20分でこれだけのことが起こります。

  • 明るくハイテンションな主題歌” Friday Night’s A Great Time For Football”でアゲアゲ
  • 電話を受けて暗い顔をしたアメフト選手が土砂降りのフィールドに出てくる
  • 試合の最中に銃をぶっ放して相手チームの選手を殺傷し、自殺
  • 酔い潰れて車で寝ているジョーが子供達にイタズラをされる
  • ジョーが帰宅すると、親友が奥さんと不倫している
  • 親友の車が何者かに爆破される

得体はしれないが、何やら大変なことが起こっているというサスペンスとしては上々の出だしであり、かつ、ストーリーを前進させながらもジョーの人となりの紹介も併せて処理できており、シェーン・ブラックとトニー・スコットの職人的なうまさが光っています。

意外性に溢れた人物描写

例えば中盤、ジミーがジョーの家を訪れる場面。通常の映画では家族との絆、相棒との絆を深めるはずの場面なのですが、本作はまったく違います。娘のダリアンはジョーをクソ親父呼ばわりして親子の口論が始まり、その過程で、奥さんも陰でジョーを負け犬と呼んでいたことが分かります。そして、人んちのヤバイもの見ちゃったジミーは気まずい感じに。

その後、傷を持つ者同士で感じるものもあったのか、ジミーはジョーに奥さんと息子を事故で亡くした話をします。この瞬間、二人の間では絆が強まったのですが、次の場面ではバスルームでジミーが薬物をやっている様をジョーが目撃し、二人の関係には再度緊張感が走ります。

そして、ジョーに叩き出されたジミーの前に現れたのはダリアンであり、ジョーが選手時代のジミーの大ファンだったこと、不正によりアメフト界を追放されたことにショックを受けていたことを話します。

離れると思えばくっつき、くっつくかと思えば離れるという一筋縄ではいかない人物描写がドラマ性と緊張感を高めており、常に予想を裏切ってくる展開には目が釘付けになりました。

突如トーンが変わる後半

ただし、ジョーの娘・ダリアンが参戦する後半から、突如普通の娯楽路線に入ります。これがとても残念でした。そもそも、ダリアンはジョーに対して猛烈な反発を示しており、父親を救出するためにジミーと行動を共にする理由がありません。事前に二人の和解、もしくは激しく口論し合っていても心の底では相手を思い合っていることを示す描写は必要だったと思います。

見せ場は派手になって行くものの、人間ドラマの上に立脚していた中盤までの湿っぽいアクションとは明らかに異質な、ただド派手なだけの見世物になってしまった点は残念でした。トニー・スコットが撮っているおかげでアクション映画としての一定水準を越えてはきているものの、前半とほとんど別物の映画になっているのはいかがなものかと。

荒れていた撮影現場

この後半での急なトーンの転換は、ジョエル・シルバー、トニー・スコット、ブルース・ウィリス、シェーン・ブラックの4人の足並みがまったく揃っていなかったためだと言われています。

後年、ジョエル・シルバーは本作の製作を「人生で最悪の経験のひとつ」と語っているし、トニー・スコットもまた酷い現場だったと振り返っています。シルバーとブルース・ウィリスが現場を乗っ取り、ダークで素晴らしかったシェーン・ブラックの脚本をどんどん変えていき、スコットは映画としてどちらが正しいのかが分かっているにも関わらず、クビにされたくないのでシルバーの言いなりになってしまったとのことです。

スコットは次回作の『トゥルー・ロマンス』にて、モロにジョエル・シルバーにしか見えないリー・ドノウィッツという悪徳プロデューサーを登場させています。余談ですが、タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』にイーライ・ロス演じる「ユダヤの熊」と呼ばれる軍曹が登場しますが、その役名はドニー・ドノウィッツ。リー・ドノウィッツの実の父親という裏設定があるようです。

また、ブルース・ウィリスとデイモン・ウェイアンズの関係も悪かったようです。

最終的に、ワーナーはスチュアート・ベアードを送り込んで取っ散らかった現場の収集に当たらせました。スチュアート・ベアードとは編集の神様と呼ばれる編集マンなのですが、バラバラの素材をうまく繋ぎ合わせる能力が高いために、混乱した映画の補強によく使われます。以下の映画は彼が再編集を行ったとされています。

≪スチュアート・ベアードが直した作品≫
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