【良作】ラスト・キャッスル_作戦が描かれた知的な軍事アクション(ネタバレなし・感想・解説)

軍隊・エージェント

(2001年 アメリカ)
軍刑務所での暴動を描いた珍しい映画なのですが、作戦を立てて相手を出し抜くという後半の見せ場がとにかく面白く、ちょっと長めの上映時間の映画ではありますが(132分)、見る価値は十分にあります。

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あらすじ

アーウィン中将(ロバート・レッドフォード)は陸軍内での尊敬を一身に集める伝説的な軍人だが、ある作戦の失敗の責任を問われて10年間の懲役刑を受け、軍刑務所に収監される。そこを管理するウィンターズ大佐(ジェームズ・ガンドルフィーニ)は、収監者達から軍人としてのプライドを奪い烏合の衆にしておくという管理方法をとっており、アーウィンもまた一受刑者としての扱いを受ける。

ウィンターズの管理方法に疑問を持ったアーウィンは、密かに収監者達を組織化し、ウィンターズへの反撃の準備を開始する。

スタッフ・キャスト

監督は社会派ロッド・ルーリー

1962年イスラエル出身でコネチカットとハワイで育ちました。

陸軍士官学校(通称ウェストポイント)出身で、卒業後に4年間の軍務をこなした後に映画評論家に転身。90年代後半には映画製作を志し、醜聞と戦う女性政治家を描いた『ザ・コンテンダー』(2000年)で長編監督デビューしました。

同作はジョアン・アレンとジェフ・ブリッジスがアカデミー賞にノミネートされるという高評価を獲得し、次いで監督したのが本作でした。社会派素材に適度な娯楽性を加える能力と、自身もウェストポイント出身で軍人の生態に詳しいことが選任理由だったと考えられます。

脚本は『スピード』のグレアム・ヨスト

『ゲティ家の身代金』(2017年)のデヴィッド・スカルパによる本作のオリジナル脚本を脚色したのは、アクション映画の脚本を多く手掛けてきたグレアム・ヨスト。

1959年カナダ生まれ。名門トロント大学を卒業し、1989年からアメリカのテレビドラマの脚本を執筆するようになりました。

カナダの人気テレビ司会者だった父が黒澤明のハリウッド進出作として企画されていた『暴走機関車』(1985年にアンドレイ・コンチャロフスキー監督により映画化)に関係していたことから、制御不能となった乗り物という着想を得て『スピード』(1994年)の脚本を執筆。これが初の映画化作品となりました。

その後『ブロークン・アロー』(1995年)、『フラッド』(1998年)と奇抜な設定のアクション映画の脚本を執筆したものの評価も興行成績もどんどん下がっていき、90年代後半にはテレビ界に出戻っていました。

スピード【良作】簡潔で面白いアクション映画の理想形
ブロークン・アロー【駄作】ジョン・ウーの無駄遣いが目に余る
フラッド【凡作】設定とキャラに演出が追い付いていない

テレビのクリエイターとしては絶好調で、『フロム・ジ・アース/人類、月に立つ』(1998年)と『ザ・パシフィック』(2010年)で二度のプライムタイム・エミー賞を受賞しています。最近では、Amazonプライムの人気テレビシリーズ『スニーキー・ピート』(2015-2019年)の製作総指揮とショーランナーを務めました。

主演はロバート・レッドフォード

1936年カリフォルニア州出身。野球の特待生としてコロラド大に進学。しかし飲酒が発覚したことから特待生資格を剥奪されて大学を中退し、以降は画家を目指してヨーロッパに渡りました。誠実を絵に描いたようなレッドフォードも、若い頃にはいろいろあったんですね。

1959年頃から俳優に転身したものの長い下積みを経験し、『明日に向かって撃て』(1969年)でようやくブレイク。その後は知的な雰囲気を漂わせるイケメン俳優としてスターの座を獲得しました。

1980年代に入ると監督業に進出し、初監督作『普通の人々』(1980年)がいきなりアカデミー作品賞と監督賞を受賞しました。

ただし、この受賞はアカデミーが犯した誤判の代表例として悪名も高く、マーティン・スコセッシ監督の『レイジング・ブル』(1980年)が受賞すべきだったというのがほぼ定説化しています。

余談ですが、マーティン・スコセッシは10年後の『グッドフェローズ』(1990年)でも俳優監督に敗れることになります。その年の受賞作はケヴィン・コスナー監督の『ダンス・ウィズ・ウルブス』(1990年)でした。

共演は『ザ・ソプラノズ』のジェームズ・ガンドルフィーニ

1961年ニュージャージー州出身。元は舞台俳優であり、演技派俳優が総出演したトニー・スコット監督作品『トゥルー・ロマンス』(1993年)で注目を浴びました。

HBOの大ヒットドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』(1999-2006年)の主人公トニー・ソプラノが当たり役となり、エミー賞を3回も受賞しました。

2013年に心臓発作で死亡。まだ51歳でした。

感想

世にも珍しい軍刑務所の物語

刑務所ものはハリウッドでもかなりメジャーな部類に入るジャンルなのですが、本作の舞台は軍刑務所。収監されているのが戦闘のプロ達という点で、通常の刑務所とは警戒レベルが異なる独特な環境の施設です。

収監者達もただの荒くれ者ではなく、自分より階級が上の収監者に対しては敬意を払ったり、一定の統制がとれたりするという点で、一般の刑務所とは随分と雰囲気が異なります。

こうした独特な舞台を選んだ点は面白いと感じました。

事務系と現場系のマウントの取り合い

この刑務所を管理しているのはウィンターズ大佐(ジェームズ・ガンドルフィーニ)。

ウィンターズ大佐(ジェームズ・ガンドルフィーニ)

軍人でありながら実戦経験がなく、兵士達からは軽んじられているのですが、事務処理能力は高いので国防総省の役人達からのウケは良く、刑務所長としての評価は高いようです。

実戦経験がないことを補うかのように軍事に対するこだわりは人一倍強くあって、現場で使われた兵器をコレクションしたり、軍事に係る蔵書を多く抱えたりしています。

また実戦経験がないというコンプレックスの表れなのか、収監者に対しては軍人としてのプライドを奪うという方針を徹底しており、階級の使用や敬礼を禁止し、収監者達を烏合の衆にしておくことで管理しやすい状態を作り上げています。

そこに入所してくるのがアーウィン中将(ロバート・レッドフォード)。

アーウィン中将(ロバート・レッドフォード)

陸軍内での尊敬を一身に受ける伝説的な人物で、バリバリの現場系。刑務所に収監されたのも部下の奪還作戦が失敗したことの責任を問われたためでした。

ただし軍歴とは裏腹に家庭人としては失格レベルであり、一人娘からはなじられ、可愛い孫娘にもロクに会えないという状況となっています。そのことが軍人としての意識をより強固なものにし、軍隊こそ我がファミリーという方向にアーウィンを導いています。

刑務所に入れられても兵士は誇り高くあれという考え方なのでウィンターズ所長の管理方針が気に入らず、また収監者達が全員かわいい部下に見えてきて「こいつらを何とかしてやらにゃ(©戸田奈津子)」という親心も芽生え、ウィンターズ所長と対立することになります。

作劇上はヒールとされているウィンターズ所長のやり方もマズイと言えばマズイのですが、収監者達に耐えがたいほどの苦痛を与えているとまでは言えず、その管理方針を許容してもいいんじゃないかと思います。

他方でヒーローポジションにいるアーウィンの動機にも身勝手なところがあって、収監者達のためとか言いながらも、実際には気に食わないウィンターズに一泡吹かせてやりたい、刑務所内で自分の軍隊を作って一暴れしたいというものも感じ取れます。

本作は事務系と現場系という相容れない者同士のマウントの取り合いであり、おっさんvsおっさんの醜い争いの様相を呈してきます。こういう泥臭い映画は最高ですね。

作戦が描かれた見せ場の素晴らしさ

いくつかのトラブルを経てついにウィンターズ所長とアーウィン中将は戦争に突入します。

片や軍事オタクで勉強熱心なウィンターズ、片やいくつもの戦闘を経験してきた実戦の鬼アーウィン、二人の対決はただの力押しではなく、作戦というものが全面に出ており、なかなか楽しませてくれました。

数では劣るが装備で勝るウィンターズ所長は監視塔のスナイパー、放水車、ヘリコプターといった手駒を教科書通りに動かして暴動の制圧を図ります。

一方、数で勝るが装備を持たないアーウィン中将は徹底した人海戦術と、どのタイミングでウィンターズが手駒を出してくるのかを先読みした作戦で、ウィンターズ所長の駒(放水車・ヘリコプター)をどんどん奪っていきます。

囚人側は人海戦術で対抗

知恵とパワーの両方を駆使したぶつかり合い。こういう見せ場は今までありそうでなかったし、最後までどちらが勝つのかが見えないので、物凄く見ごたえがありました。