【駄作】ザ・プレデター_要らない新機軸ばかり付け加えられたシリーズ随一の駄作

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2018年 アメリカ)
アメリカ特殊部隊のスナイパーであるクイン・マッケナは、南米での任務中に宇宙船の墜落事故に居合わせる。仲間を失い、自身も命からがら生還したが、宇宙人と交戦したという話に誰も取り合ってくれないどころか、仲間を殺した罪を問われ、軍刑務所へと向かう護送車に乗せられた。マッケナは、同乗者達と共に脱走を図る。

©Twentieth Century Fox

監督・脚本は『1』のホーキンス

本作の監督・脚本を務めたのはシェーン・ブラックで、『ロングキス・グッドナイト』という1996年のアクション大作で当時としては史上最高額の脚本料400万ドルを受け取り、一時期はハリウッド最高の脚本家と言われていた人物です。1987年の『プレデター』には部隊で最初の犠牲者となるホーキンス役で出演しており、新人だったトーマス兄弟の脚本に不安を抱いていたスタジオより、適宜現場で脚本のリライトを行うようにとの命を受けて『プレデター』に参加していました。

この人の映画は同じような話ばかりで、落ちぶれた人物が戦いを通して自尊心を取り戻し、その戦いには子供が巻き込まれるというパターンの話ばかりを『リーサル・ウェポン』以来30年以上も作り続けています。例に漏れず本作にも彼の過去作品と変わったところはありませんでした。

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寄せ集めの負け犬集団が主人公

本作でプレデター騒動に巻き込まれるのは家庭人失格のエリート軍人・クインであり、作戦中にプレデターを目撃してしまった彼は、これを隠蔽したい軍に異常者として処理されかけています。クインはガチの異常者たちと同じ護送車に乗せられたことからこの落伍者達とチームを組むこととなるのですが、この辺りの展開はブラック節全開と言えます。

クインにも落伍者達にも深刻なドラマがあり、それぞれを掘り下げると面白くなりそうだったのですが、見せ場を前に進めたかったのか彼らのドラマは途中でかなりぞんざいに投げ出されてしまうために、ほとんど本編の面白さに貢献していないことが残念でした。

また、クライマックスの戦闘ではこの負け犬集団が次々と死んでいくのですが、これが在庫一掃セールの如き処理のされ方で誰が死んだのかの判別もつきづらい場面があったことが、ドラマと見せ場の乖離をより深刻にしています。

政府機関の行動原理が不可解

1987年以来プレデターを調査している「スターゲイザー」なる極秘機関が登場するのですが、人類にとって脅威となりうるプレデター対策を進めているというそもそもの設立目的こそ理解可能であるものの、情報の隠蔽にこだわっている理由が不明であるために、話の流れが悪くなっています。

プレデターが郊外に姿を現し、もはや隠蔽とも言ってもいられない状況でも主人公グループの口封じにこだわり続け、プレデターの宇宙船を前にしても人類同士で銃撃戦をやっている様などは、相対的にプレデターの脅威を薄めてしまうという方向に作用しています。この辺りは、もっと早い段階から隠蔽という目的を捨てて、主人公グループと共闘するという流れに持って行った方がよかったのではないかと思います。

進化しすぎたプレデター像

友好か侵略目的と相場の決まっていた宇宙人像に狩猟目的・ただの戦闘好きという新機軸を持ってきたことが本家『プレデター』の発明であり、続編やAVPシリーズ、またダークホースコミックもプレデターのそうした面を掘り下げた内容としていたのですが、本作ではプレデターに地球への移住という明確な来訪目的を設けており、プレデター像が従来から大きく変わっています。

この方針変更を是とするか非とするかが本作の評価の分かれ目のひとつだと思うのですが、私は失敗だったと思います。来訪目的を明確にしたことで、ただの戦闘好き・弱い者には危害を加えない武士道精神というプレデター人気の根底にあった要素が消えてしまい、地球侵略を企てるその他のエイリアンたちと同じ存在になってしまったからです。

アルティメット・プレデターを出すべきではなかった

また、本作ではただでさえでかい通常プレデターを越える肉体と体力を持つアルティメット・プレデターを登場させているのですが、これもまたバトルものの宿命である力のインフレーションを引き起こす原因となりそうで、あまり良い判断ではなかったと思います。

これまでのシリーズでも「前よりも強いプレデター」というものは登場していましたが、それはあくまで武装の重さや熟練度といった個体差の範囲内に留まっているものであり、そもそものスペックが違いすぎるプレデターというものは避けてきました。そういうものを出してしまうと、普通のプレデターが雑魚キャラ化してしまうという弊害が発生してしまうためなのですが、本作では過去作がおそらくは意図的に避けてきた「桁違いに強い個体」というものに手を付けてしまっています。これやり始めると、キリがなくなりますよ。

しかもアルティメットは異種交配によって人為的に生み出された個体であるとのことでしたが、そのようないくらでも強い種を作ることができるテクノロジーをシリーズの設定のひとつに加えてしまうと、なんだか冷めてしまいます。『エイリアン』シリーズもそうですが、「改良で前よりも強い品種が誕生」というパターンはもうやめていただきたいです。

小ネタいっぱい

ローリーが通うのはローレンス・ゴードン中学校ですが、ローレンス・ゴードンは『プレデター』『プレデター2』のプロデューサーの一人です。

プレデターの研究施設にいるのがゲイリー・ビジーの息子のジェイク・ビジーなのですが、その役名が『プレデター2』でゲイリー・ビジーが演じた特別捜査官と同じキースであり、役柄上でも血縁関係であることが伺えます。

プレデターという呼称を巡って「獲物を食べるわけではないのだからプレデター(捕食者)ではなくハンター(狩人)だろ」というやりとりがあるのですが、「ハンター」はトーマス兄弟が執筆した第一作の初稿のタイトルです。

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