【良作】激流_配偶者を大事にしましょう(ネタバレあり・感想・解説)

サスペンス・ホラー
サスペンス・ホラー

(1994年 アメリカ)
むかーしに日曜洋画劇場で見てそれなりに面白かった記憶があって、あらためて見てもそれなりに面白かった映画。メリル・ストリープの意外なアクション女優ぶりや、ケヴィン・ベーコンの憎々しい演技など、映画としてそれなりに見どころもあります。

作品解説

興行的には並程度

1994年9月20日に公開され、前週の1位だったヴァンダムの『タイムコップ』(1994年)を下して初登場1位を獲得。

翌週にはスタローンの『スペシャリスト』(1994年)に敗れて2位に後退したものの、7週に渡ってトップ10入りし、全米トータルグロスは4681万ドルとサスペンス映画としてはまずまずの結果でした。メリル・ストリープ主演作がヴァンダムやスタローンと競合していたとは、物凄い時代ですね。

国際マーケットでも同じく堅調な数字であり、全世界トータルグロスは9421万ドルでした。

演技は高く評価された

メリル・ストリープとケヴィン・ベーコンの演技は高く評価され、ゴールデングローブ賞にて主演女優賞と助演男優賞にノミネートされました。

感想

家庭内不和が危険を呼び寄せる

ゲイル(メリル・ストリープ)とトム(デヴィッド・ストラザーン)の夫婦は、小学生の息子ローク(ジョゼフ・マゼロ)の誕生日に恒例の川下りへと出かけます。

そこで感じの良い青年ウェイド(ケヴィン・ベーコン)と出会い、一家はウェイド一行と行動を共にするのですが、このウェイドが実は逃亡中の強盗犯であり、土地勘のあるゲイルが水先案内人になることを強要されるのが本作のあらすじ。

ウェイドに上がり込まれる隙となるのがゲイル一家内にそもそも存在していた不和であり、ドラマとサスペンスが同時並行で進んでいくことが本作の面白いところとなっています。

一家の大黒柱トムは冗談の通じなさそうな真面目人間で、家庭よりも仕事優先。息子の誕生祝の旅行でも堅いことを言ってばかりで、アウトドアにまで仕事道具を持ち込むような人物なので、ゲイルもロークもうんざりしています。

そこに現れた「楽しいあんちゃん」という風情のウェイドをゲイルとロークはすっかり気に入ってしまい、トムが「あいつおかしくないか?」と疑問を呈しても「ウェイドへのやっかみはやめてよ」みたいな感じでまともに取り合いません。

特にロークのウェイドへの懐き方は凄まじく、いよいよヤバそうなのでウェイドを巻こうとした時にもロークがウェイドから離れなかったために、一家は地獄に落ちることとなります。

この場面でのロークがまぁ憎たらしいガキンチョで、親が血相変えて「こっちに来い」と言っているのに「パパなんか嫌いだ」と言ってまったく空気を読みません。

じゃあなぜロークがここまで父親の言うことを聞かないのかと言うと、常日頃からゲイルがトムの悪口ばかり言っていることの影響なのだろうと思います。

トムはトムなりに妻のため家族のためを思って仕事を頑張っているのですが、堅物な性格が災いしてか家族に対して器用に接することができません。

ゲイルは夫の性格や思いというレベルにまで下りていって理解しようとすればよかったのですが、実際には日常の態度という表層レベルの理解に留まっており、事あるごとに「パパにはガッカリね」という発言をして父の権威を否定してきたので、いざという時に息子が父の指示に従わない下地を作っていたというわけです。

夫婦がお互いを尊重しあっていないと、その姿勢は思いもよらぬ形で子供に伝染するという一般的な家族論が本作には込められています。本作では「母→父」でしたが、逆方向でも同じ問題が起こりうるので、家庭内での態度は気をつけなきゃなという教訓になります。

そして途中でトム一人がボートから脱出することに成功し、凶悪犯に捕まった家族を取り戻そうと奔走する話になっていきます。見る見るたくましくなっていくトムを通して、大人の成長譚が描かれています。

ハイライトの激流下り

一方ボートに取り残されたゲイルとロークはというと、ガントレットと呼ばれる急流に挑戦せざるを得なくなります。

これが慣れた地元のレンジャー隊員すら挑戦を躊躇うほどの難所であり、ほぼほぼ死ぬと言ってゲイルは反対するのですが、ウェイドにとっては唯一の逃走経路なので外せないわけです。

やるとなれば死ぬわけにいかない。ここから「ガントレットを乗り切るんだ」という方向性で犯人と被害者が結束し、一致団結して難所に挑むという捻じれたドラマが始まります。

リーダーはゲイルで、ウェイドはその指示に従って右へ左へと舵を切る。本職が教師であるゲイルが、恐らくは昔から不良だったであろうウェイドを手なずけていきます。

職業病なのか、ゲイルは訳の分からんタイミングでスマイルを見せることがあるのですが、そのことが妙にイラっとするという細かい描写も決まっていました。

迎える急流下りは実際の川で専門家がスタントを行っただけあって、かなりの迫力でハラハラさせてくれます。

クライマックスの大カックン ※ネタバレあり

で、ガントレットの終着地点でトムが罠を張って待ち構えており、一家はウェイドの恐怖から逃れるのですが、家族を助けるのならガントレットの前じゃなきゃダメだったんじゃないのでしょうか。

加えて、トムは陸路で先回りをしており、だったらウェイドもガントレットに挑まず陸路を行っていればよかったんじゃないのという話になるので、どうにも基本設定が成立していません。

本作はクライマックスの説得力のなさでズッコケました。

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