【駄作】バトルランナー_薄っぺらなメディア批判とヌルいアクション(ネタバレあり・感想・解説)

異世界

(1987年 アメリカ)
一部に再評価される向きもあるようなのですが、あらめて見てもメディア批判に深みはなく、ありがちな内容だなぁという感じだったし、主人公にも悪役にも魅力がなく、アクションは鈍重で緊張感がありませんでした。

あらすじ

2017年のアメリカ。世界経済は崩壊して人々は貧困にあえいでおり、テレビだけが大衆に与えられた娯楽となっていた。そんな中でも特に高い視聴率を獲得していたのが『ランニングマン』という番組だった。これは地下に建設された巨大コースを舞台に、凶悪犯を「ランナー」、彼らを追う兵士を「ストーカー」と呼び、制限時間内にストーカーの襲撃を交わしてゴールにたどり着いたランナーには無罪と賞金が与えられるという内容だった。

元警官のベン・リチャーズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は大衆への発砲命令に逆らったために無実の罪を着せられた囚人だが、その屈強な肉体が『ランニングマン』の制作者の目に留まったことから、強迫と懐柔の末に番組に出演することとなる。

スタッフ・キャスト

監督はスタスキー刑事ことポール・マイケル・グレイザー

1943年マサチューセッツ州出身。ボストン大学で演劇と演技の修士号を取得した後、英国に渡って演劇の修行を積みました。

テレビドラマ『刑事スタスキー&ハッチ』(1975-1979年)のスタスキー役で人気を博しましたが、その後は監督業に専念するようになり『特捜刑事マイアミ・バイス』(1984-1985年)などの演出を手掛けました。

本作『バトルランナー』(1987年)で映画界に進出し、トニー・ギルロイが脚本を書いた『冬の恋人たち』(1992年)やケヴィン・ベーコン主演のスポーツコメディ『アフリカン・ダンク』(1994年)などを監督したのですが、映画監督としては大きな実績を残せなかったために、その後はテレビ界に出戻っています。

製作は『ワイルド・スピード』のロブ・コーエン

1949年ニューヨーク州出身。ハーバード大学卒業後の1970年にフォックス入社し、1973年には若干24歳でフォックスのテレビ映画担当副社長に就任しました。

1980年代には映画プロデューサーとして『イーストウィックの魔女たち』(1987年)などに携わり、並行してテレビドラマの演出も手掛けた後に、『ドラゴン/ブルース・リー物語』(1993年)で映画監督デビューし、シルヴェスター・スタローン主演の『デイライト』(1996年)などを手掛けました。

21世紀に入ると『ワイルド・スピード』(2001年)と『トリプルX』(2002年)というヴィン・ディーゼル主演作が連続で大ヒットして一躍トップディレクターとなりましたが、『ステルス』(2005年)を大コケさせて以降はパッとしません。

『コマンドー』のスティーヴン・E・デ・スーザが脚色

1947年アメリカ出身。元はテレビ界で脚本を書いていたのですが、1982年の『48時間』の共同脚本家の一人として映画界に進出。

その後は『コマンドー』(1985年)『ダイ・ハード』(1988年)『ダイ・ハード2』(1990年)と、シェーン・ブラックと並ぶアクション映画の大家となりました。ただし90年代に入ると『ハドソン・ホーク』(1991年)、『ビバリーヒルズ・コップ3』(1994年)、『ストリートファイター』(1994年)とアレな映画ばかりとなり、『ジャッジ・ドレッド』(1995年)以降はビッグプロジェクトに参加できなくなり、ここ10年はテレビ界に出戻っているようです。

主演は僕らのアーノルド・シュワルツェネッガー

1947年オーストリア出身。1962年にウェイトトレーニングを開始し、1968年に本格的にボディビルに取り組むために渡米。

1970年にはアーノルド・ストロングの名で『SF超人ヘラクレス』に出演したものの、英語が流暢ではなかったためにセリフはすべて吹き替えられました。

言葉の問題はその後も付きまとい、初主演作の『コナン・ザ・グレート』(1982年)においてジョン・ミリアスはナレーションをコナン役のシュワルツェネッガーにさせたがったものの、ユニバーサルからのNGで魔法使い役のマコ岩松がナレーションを務めました。

そんな具合でキャリア初期には苦労をしたのですが、その後は『ターミネーター』(1984年)『コマンドー』(1985年)『ゴリラ』(1986年)と毎年のように主演作が公開される人気となり、本作も『プレデター』(1987年)とほぼ同時期に製作されています。

作品解説

スティーブン・キングの原作を映画化

本作の原作”The Running Man”はリチャード・バックマンという人物の著作なのですが、これはスティーブン・キングの変名でした。

舞台は荒廃した未来のアメリカであり、主人公はスラムに住む男ベン。ベンは妻子持ちではあるものの無職であり、一家は妻が売春で稼いでいる金で何とか生きています。

金銭的に差し迫ったベンは、多額の賞金が支払われるテレビショー「ランニングマン」への出演を決意。

そのショーとは参加者がランニングマンとなって番組側の兵士から逃げ回るという内容であり、米国全土が舞台。最終日まで生き延びれば10億ドルの賞金が与えられます。

ランニングマンの居場所をタレ込んだ視聴者には報奨金が与えられるルールもあり、ベンは全米から追い回されることとなります。

以上が原作の内容であり、サバイバル劇の要素が強かったのですが、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で逃げるドラマが成立するはずもなく、スティーヴン・E・デ・スーザは『グラディエーター』(2000年)のようなバトルアクションとして大幅な改変を加えています。

度重なる監督交代劇

当初、本作の監督に就任していたのは『ランボー/怒りの脱出』(1985年)『コブラ』(1986年)のジョージ・P・コスマトスでした。コスマトスはショッピングモールを舞台にした物語に置き換えようとしていたのですが(それだと『逃走中』っぽくなりますね)、製作のロブ・コーエンは方向性の違いを感じてその案を却下しました。

次にスイス人監督のカール・シェンケルに声をかけたのですが、巨大なプロジェクトは扱い切れないとして断られました。

次いでトミー・リー・ジョーンズ主演の『キャプテン・ブーリーの大冒険』(1983年)の監督フェルディナンド・フェアファクスが雇われたのですが、またしてもコーエンの望む方向性とは一致しなかったので解雇されました。

その後、『野獣捜査線』(1985年)のアンドリュー・デイヴィスが雇われました。当時は新進のアクション監督だったデイヴィスですが、後に『沈黙の戦艦』(1992年)や『逃亡者』(1993年)を撮ることになる監督だけあってプリプロダクションをテキパキと進め、撮影に入りました。

しかしたった8日間の撮影で800万ドルもの予算超過と4日のスケジュール遅れを起こしたことでコーエンはデイヴィス体制に不安を覚え、シュワルツェネッガーが現場を離れた数日のうちにデイヴィスを解雇し、予算と納期に厳しいテレビ界の住人であるポール・マイケル・グレイザーを後釜に据えました。

デイヴィスの演出に手応えを感じていたシュワルツェネッガーはこの決定に反対。「グレイザーはまるでテレビ番組を作るように映画を撮り、全ての深いテーマが失われた」とまで述べています。

ただし悪いのはグレイザーではなく、そういう仕事をして欲しいと思ってグレイザーを選任したロブ・コーエンなんですけどね。

興行的には苦戦した

1987年11月13年に全米公開され、オープニング興収1023万ドルという好成績で全米No.1を獲得しました。めぼしいライバルがいなかったことから翌週も1位だったのですが、3週目以降の売上高の落ち込みが激しく、公開6週目にしてトップ10圏外へと弾き出されました。

全米トータルグロスは3812万ドルであり、2700万ドルという製作費を考えると満足のいく結果ではありませんでした。

同年にシュワルツェネッガーが主演した『プレデター』(1987年)が1500万ドルという控えめな製作費ながら全米で5973万ドルを稼いだことまでを考えると、本作は興行的に苦戦したと言えます。

感想

アクションの出来がひどい

前述の通り、原作は平凡な男が屈強な兵士から逃げ回る話だったのですが、アーノルド・シュワルツェネッガー主演ということでバトルアクションものに変更されています。

主人公ベン・リチャーズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は市民を虐殺せよという上からの指示に従わなかったために警察を追われたどころか、実行された虐殺の罪を着せられて服役囚となった元警察官という設定。

人気番組「ランニングマン」の司会者であるキリアン(リチャード・ドーソン)は、番組を盛り上げるために屈強な囚人を求めており、その際にベンの存在が目に止まりました。

懐柔と脅迫の末にランニングマンに出演することとなったベンと2名の囚人仲間は、ストーカーと呼ばれる完全武装の兵士(というよりもレスラーですが)と戦うことを余儀なくされます。

シュワルツェネッガーのことなのでもちろんやられる一方ではなく、逆にストーカー達を追い込んでいくことになります。

狩られる側が狩る側に転じるという窮鼠猫を噛む的なアクションは、同年にシュワルツェネッガーが主演した『プレデター』(1987年)とも共通しています。ただし本作には『プレデター』のような緊張感や熱さはありませんが。

演出にはスピード感も重量感もなく、ノロノロと走ったり転がったりしているだけ。ランナーとストーカーとの間の戦力差も描写されていないので、不利な状況をひっくり返すという興奮も宿っていません。

シュワルツェネッガーが勝つんだろうなぁと思って眺めていると、大した危機に陥ることもなく勝つ。これを数度繰り返すのみなので、まったく盛り上がりませんでした。

悪役の魅力のなさ

ストーカーの造形が余りにもみっともなさ過ぎて、恐怖の源泉たりえていない点も問題でした。

先端が刃物になったホッケースティックを操るサブゼロ、バイクに乗ってチェーンソーを振り回すバズソー、電飾に覆われた装備を着て電流を発射するダイナモ、火炎放射器を装備したファイアーボール、こうして文字に起こすとなかなかイケる悪役達なのですが、造形が壊滅的でした。

古今東西、キャラクターものには「カッコいい=強そう」という定式があって、あるキャラクターを強そうにみせたければ、まずカッコよく描くことは必須なのです。プレデターだってカッコいいからこそ強そうに見えたのです。その点で本作は完全に赤点でした。

加えて、ストーカー全員がガチムチ系というバリエーションのなさ。シュワに対抗しうるパワーファイターが一人くらいは居てもいいのですが、小柄だがスピード勝負のキャラクターや、正確無比の達人系なども加えて、戦いにバリエーションを持たせて欲しいところでした。

舞台設定がよく分からない

原作がディストピアと化したアメリカ全土が舞台だったのに対して、本作はテレビ局の巨大スタジオが舞台となっています。

スタジオが舞台なので管理が行き届いているのかと思いきや、過去のランナー達の死体が何年も放置されたままだったり、地下にレジスタンスがいたりと、一体どんな感覚で管理されているのか、どんな構造になっているのかがサッパリ見えてきませんでした。

原作の舞台から大幅変更したものの、中途半端に原作の要素を残したためにこんなおかしなことになったのだろうと思うのですが、SFにおいては舞台も重要な要素の一つなので、これがお座成りでは作品の完成度に影響します。

風刺の要素が弱い

また、本作には同年の『ロボコップ』(1987年)と似た雰囲気もあります。メディアをカリカチュアして描き、一見すると冗談のようだが笑えない怖さのある毒が描かれているのですが、これもまた『ロボコップ』には及んでいません。

ランナー達を血祭りにあげるストーカーを観客や視聴者が熱狂的に支持しており、ランナーが追い込まれると商品をもらえる。一見すると気の弱そうなおじさんや優しそうなお婆さん達が「殺せ!殺せ!」と大合唱する。

こうして文字に起こすとなかなか面白い場面なのですが、シュワが指摘した演出の薄さゆえか、どうにも毒気が足りていません。

現実社会の一側面を切り取ったような生々しさや、自分達もこの視聴者みたいになってしまうのではないかと怖くなるような瞬間がなく、結構ありがちなメディア批判に終わっているのです。

加えて、そこに描かれているのが熱狂のみであり、憎悪が希薄であることも気になりました。

原作を改変した本作ではランナーがが囚人という設定にされている以上、メディアはストーカーによる暴力を娯楽化するための熱狂と、暴力を振るわれる対象であるランナーが成敗されるべき人間であるという憎悪の両方を煽るはずだと思うのですが、その一方の憎悪が描かれていません。

主人公ベンは虐殺者だと思われているのだから、視聴者はもっとベンを憎むべきだと思います。

そして、大衆からは忌み嫌われており、助けてくれる人はいない、言うことはまったく信用されないというマイナスからスタートして、ベンはどうやって巻き返すのかという物語であれば熱くなったと思うのですが、勝ち進んでいくうちに何となく人気も出てくるので、真っ当な逆転劇にもなりえていません。

≪シュワルツェネッガー関連作品≫
【凡作】コナン・ザ・グレート_雰囲気は良いが面白くはない
【傑作】ターミネーター_どうしてこんなに面白いのか!
【傑作】コマンドー_人間の心を持ったパワフルな男
【駄作】ゴリラ_ノワールと爆破の相性の悪さ
【良作】プレデター_マンハントものの教科書的作品
【駄作】バトルランナー_薄っぺらなメディア批判とヌルいアクション
【良作】レッドブル_すべてが過剰で男らしい
【良作】トータル・リコール(1990年)_ディックらしさゼロだけど面白い
【良作】ターミネーター2_興奮と感動の嵐!ただしSF映画としては超テキトー
【凡作】ラスト・アクション・ヒーロー_金と人材が裏目に出ている
【凡作】トゥルーライズ_作り手が意図したほど楽しくはない
【凡作】イレイザー_見せ場の連続なのに手に汗握らない
【凡作】エンド・オブ・デイズ_サタンが間抜けすぎる
【駄作】シックス・デイ_予見性はあったが如何せんダサい
【駄作】コラテラル・ダメージ_社会派と娯楽の隙間に挟まった映画
【良作】ターミネーター3_ジョン・コナー外伝としては秀逸
【凡作】ターミネーター4_画だけは最高なんだけど…
【凡作】ターミネーター:新起動/ジェニシス_アイデアは凄いが演出悪すぎ
【凡作】ターミネーター:ニュー・フェイト_キャメロンがやってもダメだった