【凡作】スペシャリスト_爆破と裸は映画の華(ネタバレなし・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1994年 アメリカ)
美女の魅力に負けて危険に手を出してしまうスペシャリスト。この筋書きを見る限りはノワールでありファムファタールものなのですが、演技力や演出力がその内容に追いついていませんでした。とはいえ爆破と裸さえあれば2時間弱は持ち堪えるもので、見ていられないほど酷い映画でもありません。

作品解説

元はセガール主演企画だった

本作は小説家で脚本家でミュージシャンでもあるジョン・シャーリーの小説”The Specialist”を原作としており、『アサシン 暗・殺・者』(1993年)のアレクサンドラ・セロスの手で脚色がなされました。

この脚本はハリウッド界隈で評判になったようで、1993年にはロサンゼルスタイムスにて、未製作だが最高のスリラーとして紹介されました。

当初はスティーヴン・セガール主演で企画がスタートし、後に『フロム・ヘル』(2001年)を撮るヒューズ兄弟などが監督候補に挙がっていたのですが、セガールの要求してきた出演料が高すぎたので流れました。

その後にスタローン主演に変更。セガールからスタローンへという流れは直前の『デモリションマン』(1993年)でも起こったことですが、同じアクション俳優とはいえ両者のイメージは全然違うと思います。

ローランド・エメリッヒをハリウッドに紹介するなど監督選びにセンスを見せるスタローンは、本作の監督にデヴィッド・フィンチャーを推していたのですが、『エイリアン3』(1992年)でやらかした監督というイメージの強かった時期なのでプロデューサーが却下。

フィンチャーとスタローンの合体はぜひ見てみたかったのですが。

その後、ペルー出身で後に『アナコンダ』(1997年)などを撮るルイス・ロッサ監督に決定。『山猫は眠らない』(1993年)で職人気質の殺し屋(そちらはスナイパー)を描いたことが人選理由だと思われます。

低評価だがヒットはした

90年代と言えばスタローンが半ばネタキャラ化していた時期であり、その主演作を褒める批評家は皆無でした。

またラジー賞にも毎年のようにノミネートされており、例にもれず本作も5部門にノミネート(作品賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、スクリーン・カップル賞)。尚、同年にラジー賞を受賞したのはブルース・ウィリスがエロに挑んだ『薔薇の素顔』(1994年)でした。

そんなわけで肯定的な批評は皆無だったのですが、そうはいっても『クリフハンガー』(1993年)大ヒットの影響が続いていた時期だし、シャロン・ストーンとの激しいカラミもあるということで話題性は十分。

1994年10月7日に公開されるや、前週の1位だった『激流』(1994年)に2倍もの金額差をつけて堂々のNo.1を獲得しました。

全米トータルグロスは5736万ドル、全世界トータルグロスは1億7036万ドルで、90年代のスタローン主演作でも2番目に高い売り上げを記録(1位は2億5500万ドル稼いだクリフハンガー)。

4500万ドルという大作としては標準的な製作費とのバランスを考えても、上々の売上でした。

感想

ちぐはぐな映画

親の仇をとるため美貌を武器に組織に潜入する女と、心と経歴に傷を持つ殺し屋という組み合わせは間違いなくノワールなのに、舞台となるのは太陽のまぶしいマイアミで、ド派手な爆破で殺害という風情のなさ。

この構図が示す通り本作はちぐはぐな作品で、その違和感は随所から感じられました。

主人公レイ(シルベスター・スタローン)は目立たぬよう質素な生活を送り、移動手段も市営バスなのですが、バスではチンピラと派手に喧嘩。全然世を忍ぶ気がありません。スタローンのようなガタイの良い相手に喧嘩を売るチンピラ達もどうかしていますが。

そもそもスタローンが目標の行動を読んで爆弾を仕掛けるような神経質な殺し屋には見えないという問題もあるし。

またレイの孤独を嗅ぎつけたかのように野良猫が彼の後を追ってくるのですが、これが綺麗なメインクーン。ペットショップだと20~30万円ほどするお高い猫が、マイアミだとその辺の道端をウロウロしているのでしょうか。

なお、この猫はスタローンの次回作『暗殺者』(1995年)にも、ジュリアン・ムーアの飼い猫として登場します。

殺しの依頼主となるメイ(シャロン・ストーン)はと言うと、どこで売ってるのか分からないほどスカート丈の短い喪服を着て来たり、ノーブラ&へそ出しという凄まじい恰好で街を歩いたりと、セクシーを通り越して見せたがりの域に達しています。こちらも変でした。

そんな二人が織りなすラブシーンも変。

良い感じになってくるとムーディな音楽が流れ始め、ベッドから始まったのに肝心のカラミはバスルームという普通とは逆の動きをします。

バスルームではタコのように絡み合い、セクシーという感じではありませんでした。

御年48歳にしてラブシーン初挑戦のスタローンがガチガチだったたけではなく、ルイス・ロッサ監督もこの場面をどう撮ればいいのか分かっていなかったようであり、作品のハイライトであろうカラミの出来が悪いのは如何なものかと。

もしもトニー・スコット辺りが監督していれば良い感じになっただろうと思うのですが(本作の撮影監督は『トップガン』のジェフリー・L・キンボール)、スコットはスタローンの前妻ブリジット・ニールセンと不倫して離婚理由を作った人物だけに、その人選は無かったのでしょうね。

ファムファタールものになりきれていない

『スペシャリスト』というタイトルの通り主人公レイは用心深く、メイの依頼は自分をおびき出すための罠ではないかと疑っています。

しかしメイの声と容姿に惹かれ、彼女が潜入目的で犯罪組織のNo.2 トマス・レオン(エリック・ロバーツ)に抱かれていることにジェラシーも覚え、危険を感じつつも仕事を引き受けてしまいます。

本作はファムファタールものでもあるわけです。

女性の魅力に抗えず危険に飛び込んでしまった男のどうしようもなさや、これは本当に罠なのかというサスペンスこそが作品本来の魅力だったはずなのですが、スタローンの演技力とルイス・ロッサの演出力が致命的に不足していたために、この要素が全然生きてきません。

本編中にはいくつかサプライズが仕掛けられているのに、事前のドラマに没入感がないので「なんかごちゃごちゃやってんな」という印象にしかなりませんでした。

決して依頼人には姿を見せないというルールを自らに課してきたレイが、欲望に負けてメイの前に出て行って濃厚なラブシーンに突入するくだりも同様。

この場面でのスタローンは『氷の微笑』でのマイケル・ダグラスみたいな立場に置かれており、もしも女がクロなら殺されるかもしれないという危険と背中合わせのラブシーンだったはずなのに、レイの逡巡が描かれていないので、その緊迫感が伝わってきませんでした。

また、シャロン・ストーンの魔性性も引き出せていません。

憐れな被害者なのか、別の企みを持つ腹黒い女なのかという迷いを観客に対しても与えられておらず、最終的には落ち着くべきところに落ち着いていくだけなので、キャラとしての面白みがまったくありませんでした。

やはりバーホーベンほどの力量を持つ監督は稀少なのでしょう。

爆破は良かった

そんなわけでいろいろと企画倒れの部分が多かったのですが、そうはいっても本作は90年代爆破アクションの一翼を担った作品だけあって、ハイライトの爆破シーンには見応えがありました。

景気よく火柱が上がり、その後に起こる豪快な対象物の破壊。

爆破でホテルの外壁に損傷を与えて部屋の一角を落とすなど、やってることはかなり荒唐無稽なのですが、これくらいやっても気にならない90年代特有のおおらかな空気が流れていたので、決して嫌いではありません。

警官隊に取り囲まれたレイが自分の拠点をボコボコと爆破していくクライマックスの過剰なまでのド派手さも良かったです。

爆破と裸さえあれば、映画は2時間弱はもつということを示した好例ではないでしょうか。

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