ターミネーター【傑作】どうしてこんなに面白いのか!(ネタバレあり・感想・解説)

(1984年 アメリカ)
ホラーを軸として、SF、アクション、サスペンス、ロマンスと多くの要素が入り混じった作品なのですが、そのすべてを見事に捌ききってみせたキャメロンの天才的なストーリーテラーぶりが光っています。また、無駄のないタイトな上映時間や、かけた予算以上のインパクトを観客に残す手法など、大規模化した後のキャメロン作品には見られない手作り感も本作独特の味となっており、キャメロンの最高傑作は本作だと思います。

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あらすじ

核戦争と人類抵抗軍vs機械軍の戦争で荒廃した未来から、1984年のロサンゼルスに1体のサイボーグと一人の戦士が送り込まれた。サイボーグの目的は人類抵抗軍のリーダーを産むこととなる女性を抹殺することであり、戦士の目的はその阻止である。現在のロサンゼルスで、未来の人類の運命を決する戦いが始まるのだった。

スタッフ・キャスト

監督・脚本はジェームズ・キャメロン

1954年カナダ出身。若い頃は大学を中退して結婚し、トラック運転手をして生計を立てるという生活を送っていたのですが、『スター・ウォーズ』(1977年)を見て元映画少年の血が騒ぎ、B級映画の帝王ことロジャー・コーマン率いるニュー・ワールド・ピクチャーズに入社しました。

幼少期から美術の才能を示していたことから映画界でも特撮マンとして働いていたのですが、本作『ターミネーター』の脚本がハリウッド界隈の話題になったことから『ランボー』(1982年)や『エイリアン』(1979年)の続編の執筆依頼が舞い込むようになり、ビッグプロジェクトにも参加するようになりました。

製作・共同脚本はゲイル・アン・ハード

1955年ロサンゼルス生まれ。スタンフォード大学卒業後にニュー・ワールド・ピクチャーズに入社し、B級映画の帝王ロジャー・コーマンのエグゼクティブ・アシスタントとなりました。後に彼女が、バカバカしくも大衆受けする素材を見分けるプロデューサーとなったのは、この時に身に付けた選別眼の賜物だったのかもしれません。

このニュー・ワールド時代に、当初は雑用係として出入りしていたジェームズ・キャメロンと出会い、1985年に結婚。『ターミネーター』(1984年)、『エイリアン2』(1986年)、『アビス』(1989年)と、キャメロンの80年代の作品は、すべて彼女が製作しています。

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キャメロンとは1989年に離婚し、1991年にブライアン・デ・パルマと結婚。1993年にブライアン・デ・パルマと離婚し、1995年に脚本家のジョナサン・ヘンズリーと結婚と、なかなかの破天荒ぶりでおられます。ヘンズリーとは『アルマゲドン』(1998年)の初期プロダクションやアメコミ大作『ハルク』(2003年)の製作を共同で行いました。

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アーノルド・シュワルツェネッガー(ターミネーター役)

1947年オーストリア出身。1962年にウェイトトレーニングを開始し、1968年に本格的にボディビルに取り組むために渡米。1970年にはアーノルド・ストロングの名で『SF超人ヘラクレス』に出演したものの、英語が流暢ではなかったためにセリフはすべて吹き替えられました。言葉の問題はその後も付きまとい、初主演作の『コナン・ザ・グレート』(1982年)においてジョン・ミリアスはナレーションをコナン役のシュワルツェネッガーにさせたがったものの、ユニバーサルからのNGで魔法使い役のマコ岩松がナレーションを務めました。

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そんな問題を抱えていたシュワにとって、言葉が流暢である必要のないターミネーター役はうってつけでした。当初はカイル・リース役をオファーされており、シュワ本人もターミネーター役には乗り気ではなかったものの、結果的にはシュワのバリューを大きく引き上げる当たり役となりました。

マイケル・ビーン(カイル・リース役)

1956年アラバマ州生まれ。アリゾナ大学中退後にハリウッドに行き、1978年に俳優デビューし、『グリース』(1978年)の端役などをこなしました、カイル・リース役には上記の通りシュワルツェネッガーをはじめとしてブルース・ウィリスやスティングなども考慮されていたのですが、演技がもっともよかったということでマイケル・ビーンが選ばれました。

リンダ・ハミルトン(サラ・コナー役)

1956年メリーランド州生まれ。幼少期から劇団の所属し、19歳から3年間、名門アクターズ・スタジオに入ってリー・ストラスバーグに演技を学びました。『Night Flowers』(1979年)で映画デビュー。ジェニファー・ジェイソン・リーやミシェル・ファイファーが考慮され、またシャロン・スローンやジーナ・デイヴィスがオーディションを受けたと言われるサラ・コナー役が初の大役でした。

後にキャメロンと結婚し、離婚します。また、キャメロンの元奥さんのゲイル・アン・ハードが製作した『ダンテズ・ピーク』(1997年)に主演しました。

登場人物

  • ターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー):2029年製の潜入型アンドロイドであり、人類抵抗軍を指揮するジョン・コナーの存在を消すべく、1984年に送り込まれた。そのミッションはジョンの母親のサラ・コナーを抹殺すること。
  • カイル・リース(マイケル・ビーン):2029年の人類抵抗軍の兵士。ジョン・コナーの母サラを抹殺しようとするターミネーターに対抗するために、ジョンの指示で1984年に送り込まれた。
  • サラ・コナー(リンダ・ハミルトン):核戦争後の人類抵抗軍のリーダーとなるジョン・コナーを産む女性。1984年時点ではウェイトレスのバイトをしている平凡な大学生で、遅刻癖があったり、客から嫌がらせをされても言い返せない、楽しみにしていたデートをドタキャンされても文句も言えないなど、伝説の母親としての面影はない。
  • トラクスラー警部(ポール・ウィンフィールド):ウエストハイランド警察署の警部。サラ・コナーという名前の女性が電話帳の順番で殺されるという「電話帳殺人事件」の担当であり、サラの身柄を保護し、カイルを容疑者として拘束した。未公開シーンでは、未来について語るカイルの話を信じ、「君の役割を果たせ」と言って送り出す場面があった。
  • ブコビッチ(ランス・ヘンリクセン):ウエストハイランド署の警部補で、トラクスラーと共に電話帳殺人事件を担当している。演じるヘンリクセンは『殺人魚フライングキラー』(1981年)の主演であり、当初はターミネーター役の候補だった。

プロダクション

ジェームズ・キャメロンが見た悪夢がモチーフ

ニュー・ワールド・ピクチャーズに入った当初のキャメロンは特撮マンとして働いていましたが、『殺人魚フライングキラー』(1981年)の監督チャールズ・イグリーが解雇されたことから、同作に特撮で参加していたキャメロンに監督の鉢が回ってきて、これが監督デビュー作となりました。低予算ホラーでもやれることはやりきろうとキャメロンは張り切ったのですが、そのことが原因ですぐにプロデューサーと衝突し、たったの5日間で解雇。さすがに自分の作品とは言えない状況だったので監督のクレジットから名前を外すようプロデューサーに掛け合ったのですが、北米での興行を考えるとアメリカ人らしい名前の監督が欲しかったという事情もあって、クレジットには残され続けました。

本作『ターミネーター』の着想を得たのは、まさにこの時でした。『殺人魚フライングキラー』の撮影地はローマだったのですが、キャメロンにとっては言葉も通じない異国の地で解雇されてたった一人。さらには心労から体調を崩して寝込んでいた際に、金属製の骸骨が自分を殺そうと炎の中から這いずってくるという悪夢を見ました。キャメロンはこのイメージを絵に描き、ゲイル・アン・ハードと共にホラー映画として制作することにしました。

キャメロンの見た悪夢。この時点でエンドスケルトンの姿が確立されており、スタン・ウィンストンはデザインをする必要がなかったと言います。

低予算しか得られなかった

キャメロンとハードは企画を映画会社にプレゼンして回り、1978年に設立されたばかりの新興の配給会社・オライオンピクチャーズの配給を受けることが決定しました。ただしオライオンは配給だけで製作費は出さないと言い出したので製作会社を別途探す必要があり、こちらは『トミー』(1975年)や『キャノンボール』(1976年)のヘムデール・ピクチャーズに決定しました。

オライオンもヘムデールも新興の中規模会社だったために資金力はなく、与えられた予算は400万ドル。最終的には640万ドルで製作されたのですが、それでもシュワの前作『コナン・ザ・グレート』(1982年)の製作費の1/3以下であり、最先端の視覚効果や特殊メイクを用いねばならない企画としてはカツカツでした。キャメロンとハードは個人資産を投げ打ってまで撮影し、映画が完成した時には無一文だったと言われています。

ラウレンティスにシュワを強奪される

当初、キャメロンはターミネーター役に平凡な見た目の俳優の起用を考えていました。それは、ターミネーターに潜入型サイボーグという設定が置かれていたことと、何の特徴もない男が突然怪力と狂暴性を発揮することを恐怖の源泉にしようとしていたことからであり、『殺人魚フライングキラー』(1981年)で主演を務めたランス・ヘンリクセンがターミネーター役にキャスティングされていました。ヘンリクセンをモチーフにしたコンセプトアートまでが描かれており、映画会社へのプレゼンの際にもヘンリクセンを連れて行っていたほどでした。

ヘンリクセン版ターミネーターのコンセプトアート

しかし、カイル・リース役の候補として面会したシュワルツェネッガーの爬虫類系の顔が非常に気に入ったキャメロンは、ターミネーター像をガラリと変えてジェイソン・ボーヒーズのような大男が問答無用で迫ってくる物語に変更しました。

こうして主演俳優を得た本作は1983年初頭に撮影に入る予定だったのですが、ここで大きなトラブルが発生しました。ディノ・デ・ラウレンティスが『コナン・ザ・グレート』(1982年)の続編を製作するためにシュワルツェネッガーを持って行ってしまい、本作の製作がストップしてしまったのです。当時世界最強の独立系プロデューサーだったラウレンティスに無名のキャメロンや中小企業のヘムデールが太刀打ちなどできず、去って行くシュワを指をくわえて眺めるのみでした。

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給料の入って来なくなったキャメロンはカナダのお母さんから仕送りしてもらうビッグマックのクーポン券で食いつなぐほど困窮し、生活費を稼ぐために雇われ仕事で二本の脚本を執筆しました。『エイリアン』(1979年)と『ランボー』(1982年)の続編企画です。前編から打って変わった大作路線やミリタリー趣味など両作には共通点が多いのですが、それは同時期に書かれたものだったからです。

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捨てるように公開された

そんなこんなを経て作品はようやく完成したのですが、配給のオライオンピクチャーズからはまともに扱われませんでした。同年にオライオンはアカデミー賞8部門を獲得する『アマデウス』(1984年)を抱えていたため、ロジャー・コーマン組あがりの若手監督による中規模予算映画は眼中になかったようで、マスコミ向けの試写も一般向けの広告もまともになされませんでした。作品の興行成績は3800万ドルと、640万ドルの製作費と比較すると十分な結果は出せたのですが、後のレンタルビデオでの大ヒットやシリーズ化までを考えるとコンテンツのポテンシャルを引き出せたとも言えませんでした。

感想

SF映画としてのハッタリの利かせ方

まずは世界観を説明する冒頭のテロップに注目してください。

核戦争によって荒廃した地球。

そこでは人類の絶滅を図る機械と、追いつめられた人間の死闘が、数十年に渡って続いていた。しかし最後の決戦は未来ではなく、現代のロサンゼルスで戦われるのだ。

今夜…。

日曜洋画劇場の翻訳

核戦争後の地球や人類vs機械という大風呂敷を広げながらも、「現代のロサンゼルス」「今夜…」とギュギュっと舞台を狭めていき、空想の世界とこちらの世界を繋げてみせるという秀逸なイントロです。夜の街で大男が女性を追いかけているだけの内容が、このイントロによって人類の存亡をかけた話に見えてくるのだから、この華麗なハッタリの利かせ方には恐れ入ります。

また、未来から送り込まれたカイル・リースこそがジョン・コナーの父親だったことが判明するという大オチには初鑑賞時に驚かされた記憶があります。本編からはカットされていたのですが、最終決戦の場となった工場はサイバーダイン社であり、そこに残ったターミネーターの残骸がスカイネット開発に繋がっていったという設定も置かれており、タイムトラベルものとしての面白さがしっかりと追及されたストーリーとなっています。

加えて、細かい描写にまで監督の目が行き届いています。損傷を受けたターミネーターの生体パーツが腐り始めていて顔に蠅が止まっている場面や、未来の回想でブラウン管テレビを暖炉替わりに使っている場面などは、妙に印象に残りました。リアリティとはディティールにこそ宿るものと言いますが、本作はそういったディティールのこだわりによって、大金をかけられなかったというハンデを乗り越えています。

よくできたホラー映画

「スタッフ・キャスト」の項でも触れた通り、本作は『ハロウィン』(1978年)のようなホラー映画を指向して製作された作品なので、話し合いの通じない大男に追われることの恐怖が軸となっています。

何の躊躇もなく人を殺す文字通りの殺人マシーン。銃撃をしても進路を爆破しても止まることはなく、警察署に居ても警察官をなぎ倒して標的を目指してくるという逃げ場のなさであり、『ハロウィン』(1978年)のマイケル・マイヤーズや『13日の金曜日PART3』(1982年)のジェイソン・ボーヒーズを更に強化したキャラクターとして設定されています。

骨格だけになっても止まることはなく、下半身を失っても這いずりながらターゲットを目指し続けるという執着に、初見時には震えあがりました。

アクションとドラマの見事な融合

冒頭から見せ場の連続で、アクションでストーリーが語られていくという理想的なアクション映画にもなっています。象徴的だったのがカイルとサラが出会った直後のカーチェイスであり、ここでカイルはサラと観客に対して世界観の説明を始めるのですが、なんとカーチェイスをしながらという、驚きの方法がとられています。一瞬たりともサラと観客を休ませないという姿勢が、作品にとてつもない緊張感と面白さを付加しています。

また、本作はカイルとサラのラブストーリーであり、平凡な女性サラが人類の存亡の鍵を握る女性へと成長していく物語でもあるのですが、危機また危機の中でドラマが語られ、人物の関係性が変化していく様を捉えています。こちらも見事でした。

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