【良作】ウィズアウト・リモース_本当に容赦がない(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント

(2021年 アメリカ)
見せ場の質もキャラクター造形も良く、トム・クランシー原作映画の中では上位の作品だと思います。ただしポリティカルスリラーを標榜する割にはやたらいい加減なところがあったり、過去作品との連携で不明な部分があったりするので、めちゃくちゃ良い!とも言えないのが困ったところです。

作品解説

原作はトム・クランシー著『容赦なく』(1993年)

本作の原作はテクノスリラー小説の大家トム・クランシーの『容赦なく』(1993年)、ジャック・ライアンシリーズに登場するジョン・クラークのオリジンを描いた小説です。時系列的にはもっとも古く、1歳の頃のジャック・ライアンが登場します。

その内容はと言うと、元シールズ隊員のジョン・ケリーが身重の妻を交通事故で亡くし悲しみのどん底にいたところ、パムという娼婦と出会いメンタルを持ち直します。しかし麻薬組織から追われる身だったパムは殺され、ケリー自身も負傷。

復讐を誓ったケリーは特殊部隊仕込みの殺人技で密売人を処刑して回るのですが、そんな折、ベトナム戦争の捕虜救出作戦を立案したCIA職員リッターより、作戦への参加を要請されます。しかし情報が漏れていたことから作戦は失敗し、やむなくケリーはソ連空軍大佐のみを捕らえて連行するのでした。

こんな感じで『イコライザー』(2014年)と『ランボー/怒りの脱出』(1985年)を合わせたような内容であり、こんな素敵なお話をハリウッドが放っておくはずがなく、何度も映画化企画が立ち上がっていました。

最初は1995年頃で、『今そこにある危機』(1994年)のジョン・ミリアスが脚本を仕上げ、主演にはキアヌ・リーブスの名前が挙がっていたのですが、資金調達が難航して実現しませんでした。

2012年には『ミッション:インポッシブル/ローグネイション』(2015年)のクリストファー・マッカリーが起用され、トム・ハーディ主演で検討されていました。『エージェント・ライアン』(2014年)と世界観を共有する話だったようなのですが、先行した『エージェント~』がコケたこともあってこちらの企画も立ち消えになりました。

Amazonプライムで配信

本作は2020年9月18日に全米公開の予定だったのですが、新型コロナウィルスの影響で劇場公開の目途が立たなくなり、その後パラマウントは公開を断念。

アマゾン・スタジオに売却し、2021年4月30日にAmazonプライムビデオにて独占配信されました。

感想

殺人マシーン マイケル・B・ジョーダンに注目

映画化に当たっては豪快な脚色がなされています。ベトナム戦時下から現代に舞台が移され、ケリーの奥さんと娼婦のキャラは統合されて身重の奥さんが殺される話に変更。また復讐相手は麻薬組織ではなくFSB(ロシア連邦保安庁)となっています。

シリアでの作戦を終えた特殊部隊員のジョン・ケリー(マイケル・B・ジョーダン)は軍を退役し、母国アメリカで妊娠中の妻と平和な生活を送っていました。

そんな折、シリアでの作戦に関わったメンバーが次々と殺害されるという『コマンドー』(1985年)の冒頭みたいなことになり、ケリー宅にも武装集団がやってきます。ケリーは何とか反撃したものの、奥さんは死亡。後にFSBによる犯行であることを知ったケリーは、国防長官との方向性の一致も見たことから報復作戦を実行するというのがざっくりとしたあらすじ。

何と言っても主人公を演じるマイケル・B・ジョーダンの殺人マシーンぶりが素晴らしく、銃を構える姿、格闘する姿が実に様になっていました。

また殺人マシーンらしい目つきや表情が最高ですね。特に刑務所の場面。その前にロシア外交官を殺した自分は命を狙われているという自覚を持っており、いよいよ監房にお客さんがやってくるのですが、その際のケリーの「よっしゃこいや~!」という激しい表情が最高でした。

これまでのジャック・ライアンシリーズに足りていなかったのは、こういう闘志に満ち溢れた男の表情だったのだなと、この場面でハタと気付かされました。

本当に容赦がない

このケリーですが、本当に容赦がありません。

例えばロシア外交官を尋問する場面。外交官の乗った車を荒っぽい方法で停車させると、ガソリンをまいて車に火を点けます。普通はそれだけでも十分な脅しになっているのですが、さらにケリーは燃え盛る車に乗り込んで、妻を殺った奴の名前を吐けと迫ります。

しかも「お前を殺すことは決まってるが、とりあえず吐け」と映画史上でも前例のない尋問を行い、相手が一瞬口ごもっただけでも銃で足を撃ち抜くという物凄い暴力で口を割らせます。

激しい尋問では定評のある西部警察の面々ですら、この方法には震え上がるのではないでしょうか。

そしてクライマックスでも同様の「お前を殺すことは決まってるが」尋問が行われるのですが、今度は川底に沈む車。毎度毎度、切羽詰まったシチュエーションで尋問をするわけです。

これは憎い相手を極限にまで追い込むと同時に、今ここで自分が死んでも構わないという本気度の表明でもあり、ケリーの気迫に相手は負けるわけです。

戦闘場面がまんまFPS

後半ではロシアに殴り込んだケリー達が一大戦闘を繰り広げられるのですが、ロケットランチャーは撃たれるわ、敵スナイパーはいるわと『コール・オブ・デューティ』みたいな感じになってきます。

脚本家としてクレジットされているウィル・ステイプルズはテレビゲーム『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』(2011年)の脚本を書いた人物であり、本作は意図してFPSみたいにされているのだろうと思います。

戦争ものFPSは「『プライベート・ライアン』(1998年)みたいなのをゲームでも作りたい!」という思いから製作された『メダル・オブ・オナー』(1999年)を先駆けとし、その後方向性の違いから『メダル・オブ~』を離脱したスタッフにより製作された『コール・オブ・デューティ』(2003年)シリーズにより極められました。

当初はテレビゲームが映画のルックスを目指していたのに、いつの間にやら映画がテレビゲームのルックスを後追いするという逆転現象が起こり始めたようです。

この戦闘場面ですが、かなりの迫力があって目が釘付けになりました。

細部がいろいろ雑

そんなわけで見所の多い作品なのですが、ちょいちょいおかしな部分があることが評価を下げる原因となっています。

ケリー達が搭乗する飛行機が撃墜されて海に墜落するのですが、その後にゴムボートだけで大海原を渡り切ってアジトにまで辿り着くとか、モスクワで警察の包囲網を突破したケリーが、これまた難なくアジトに辿り着くとか、明らかに大変なところが豪快に端折られていることが気になって仕方ありませんでした。

また、クライマックスでは国防長官拉致というロシア殴り込み以上の難しいことを難なくこなすという荒業も披露。さすがにリアリティがありませんでした。

過去作品との接点が不明

あと、ジャック・ライアンシリーズとの連携がどうなっているのかも不明でした。

既存のどの作品との接点も持たない新規の世界観の作品かと思いきや、カレン・グリア少佐(ジョディ・ターナー=スミス)はグリア提督の姪っ子という設定が飛び出してくるので、どうやらハリソン・フォードが主演した90年代のシリーズとは世界観を共有しているようです。

でも『今そこにある危機』(1994年)にジョン・クラークとロバート・リターが出てきたこととの整合性はとれなくなるし、本作の世界観は謎です。

≪ジャック・ライアンシリーズ≫
【良作】レッド・オクトーバーを追え!_シリーズで一番面白い
【凡作】パトリオット・ゲーム_後半に向けてつまらなくなっていく
【駄作】今そこにある危機_長いだけで面白くない
【凡作】トータル・フィアーズ_全然恐怖を感じない
【凡作】エージェント:ライアン_役者は良いが話が面白くない
【良作】ウィズアウト・リモース_本当に容赦がない