(1988年 アメリカ)
大量破壊兵器シュワがコメディに進出したという話題性で公開当時には大ヒットとなったが、改めて見ると「シュワがコメディをやっている」「弟はダニー・デヴィート」という意外性の他には何もない凡作だった。

感想
『コナン・ザ・グレート』(1982年)、『ターミネーター』(1984年)、『コマンドー』(1985年)と、仏頂面で大量に人を殺しまくってきたシュワルツェネッガーがコメディに挑戦した作品。
従前のイメージとの落差もあってか映画は大ヒットし、固定の出演料の代わりに興行収入とビデオレンタルからの歩合を受け取る契約にしていたシュワにとっては、キャリアでもっとも稼いだ映画となった。
そしてシュワはコメディもイケる俳優という評価を受け、男性向け映画がズラリと並んだキャリアから脱却し、幅広い大衆人気を勝ち取るに至った。
・・・と、ビジネス面での成果を列挙すると本作は大成功作ということになるのだが、その評価とは裏腹に、本編の内容が顧みられることは驚くほど少ない。
私が初めて見たのは日曜洋画劇場で、確か小学生の時だったと思うけど、大好きなシュワ映画であるにも関わらずさほど楽しめず、本編の内容も記憶に残っていない。
以降の人生で本作のことを特に気にかけることはなく、一度も見返してこなかったのだが、いつもの午後ロー様が放送してくださったので、ありがたく鑑賞させていただいた。
ちなみに国内においてはBlu-ray化がなされていないので、本作をハイビジョン画質で見られる機会は貴重である。
午後ロー様にはお世話になりっぱなしで、いつか菓子折り持ってお礼に行かなきゃと何百回も書いているが、今回のオンエアでその決意を新たにした。
本作でシュワが扮するのは、生まれ育った絶海の孤島で科学者の助手をしている男ジュリアス。35歳の誕生日に、ジュリアスは双子の弟がいることを知らされ、アメリカで暮らしているという弟に会いに行くことにする。
で、その弟がダニー・デヴィート扮するヴィンセントで、チビ・デブ・ハゲの三拍子揃ったデヴィートと、高身長かつムキムキのシュワが双子という設定がひと笑いになっている。
ちなみに、今回の午後ローで放送されたのはソフト版吹替だったけど、どういうわけだかデヴィートが兄でシュワが弟という逆の設定になっていた。ま、双子なのでどっちが早かったかは大した問題ではないのだが。
本作の問題は、この設定こそがすべてであるということだ。お笑いで言う「出オチ」というやつである。
お笑いの用語で、登場した瞬間がすでに笑いを取る状態であること、出たそばからオチがついていること、などを意味する表現。しばしば、最初がクライマックスでありその後は痛々しい雰囲気に陥ることを表す。
weblio国語辞典で調べると「出オチ」とはこのように説明されており、まさに本作の感想とピタリと重なる。
私が本作のあらすじを記憶していなかったのも、双子設定以外の構成要素が恐ろしく希薄だったゆえだろう。
まだお互いを認識する前のジュリアスとヴィンセントがハリウッド大通りですれ違い、似たようなクセを見せるあたりなどは面白かったのだけれど、本編開始後数十分で二人が出会ってしまうと、以降は見るべきものがなくなってしまう。
そこで二人が母親に会いに行くというメインプロットと、ヴィンセントが盗んだ車が産業スパイ絡みの厄介な代物だったというサブプロットがくっつけられるのだけれど、双子設定という本ネタと比べるとあまりにも弱すぎる。
肉体と頭脳で優れてはいるが世間知らずのシュワと、世間ズレしたデヴィートがバディとなって困難に挑むという構成自体は80年代に流行したバディアクションの一つのアレンジ例として見られなくもない。
が、お互いが強みを発揮して勝利を掴むという王道の流れではなく、トラブルを持ち込むのが専ら弟のデヴィートで、シュワ兄が力技で問題を解決するというワンパターンなので、バディ映画としての面白みもさほど追及はされていない。
かといって笑えるコメディとしても作られておらず、一体何に着目すればいいのか分からないまま2時間が過ぎ去ったという印象。
しかしこの程度の出来の映画でも大ヒットしたのだから、シュワがコメディをチョロいと感じたのも無理はないだろう。