【凡作】ツイスターズ_退屈な人間ドラマと迫力の音響(ネタバレあり・感想・解説)

災害・パニック
災害・パニック

(2024年 アメリカ)
誰が望んだのか90年代の大ヒット作『ツイスター』、28年ぶりの続編。豪勢な見た目に対する貧弱なストーリーは前作譲りで、あまりおもしろくなかった。

感想

ここ最近の投稿を見ると、砂の惑星だの猿の惑星だのマッドマックスだのビバリーヒルズ・コップだのバッドボーイズだのと、リブート・続編・スピンオフのオンパレード状態。

この秋から冬にかけては、さらにエイリアンとグラディエーターまでが行列に加わる見通しとなっており、もはやハリウッドは新しい企画を考える気をなくしたんだろうか。

・・・という文句は3週間前の『オーメン・ザ・ファースト』(2024年)の記事でも書いたような気がするが、いよいよ『ツイスター』(1996年)までが掘り起こされる事態となったとは。

続編のタイトルが複数形になるという『エイリアン2 “Aliens”』(1986年)方式で、実はちょっと期待する自分もいたので、奮発してIMAXで鑑賞した。

夏休みとだけあってIMAXシアターは作品間での取り合い状態。『キングダム4』『インサイドヘッド2』『僕のヒーローアカデミア』『デッドプール&ウルヴァリン』といった競合に押し出されたのか、本作のIMAX上映は朝イチ9:10の回のみという世にもあんまりな扱いとなっていた。

休日にも関わらず7時半起床で、9:10の回に見てきましたよ。もはや仕事である。

客層は中高年が多く、前作をリアルタイムで観て思い入れのある世代が中心のようだ。

竜巻研究をしている科学者チームが竜巻に突っ込んでいくという概要は前作からまったく変わってはいないが、キャラにもストーリーにも連続性はなく予備知識ゼロで見ても特に支障はない。

前作で登場したドロシーと呼ばれる竜巻測定機が本作にも登場することが唯一の接点だが、これにしてもさして重要に扱われてはいない。

前作は怒涛の映像技術が評価される一方で、人間ドラマの貧弱さが批判の的となった。

この批判を踏まえてか、28年を経た本作においては、監督に『ミナリ』(2020年)でアカデミー監督賞にノミネートされたリー・アイザック・チョン、主演に『ザリガニの鳴くところ』(2022年)のデイジー・エドガー=ジョーンズと、主にドラマ畑のメンバーを配置している。

主人公は気象学者のケイト・カーター( デイジー・エドガー=ジョーンズ)。オクラホマ州出身の彼女は竜巻を消滅させる技術の基礎研究に勤しんでいたのだが、研究資金欲しさで攻め過ぎた結果、恋人を含む仲間3人を死なせてしまい、現在はNYで気象予報の仕事をしている。

そんな彼女の元を、昔の仲間ハビ(アンソニー・ラモス)が訪れる。軍事技術を転用した革新的追跡システムのテストのため、ケイトの力を借りたいというのだ。辛い過去をひきずりつつも、竜巻被害を減らせるのならという思いで、ケイトはこれを引き受ける。

この通り、主人公のトラウマ克服というストーリーが置かれているのであるが、これが全然心に響いてこない。彼女の葛藤が表層的過ぎるのだ。

そんなケイトに絡んでくるのは、竜巻に突っ込んでいく動画で人気を博しているYouTuberのタイラー。

一見すると迷惑系でしかないタイラーであるが、実は被災者の力になりたいというアツイ思いを持ち合わせたナイスガイであることが判明する。

演じるのは『トップガン マーヴェリック』(2020年)のハングマン役で世界的な知名度を獲得したグレン・パウエルで、本作でも偽悪家的な役柄に扮しているのだが、ハングマンほど魅力的ではなかったかな。

登場時点から「ワルぶってるだけで、実は良い奴」ってことが伝わってくるので意外性がないのだ。

一見すると無学でも経験に裏付けられた知識は豊富で、MIT卒の頭でっかちなエンジニアの鼻を明かすという、90年代であればブルース・ウィリスが演じたであろうキャラ設定も類型的だった。

こんな低偏差値アクションを見に来る観客が、自分を重ね合わせて見られるよう設計されたキャラだったと考えれば、まぁ納得できなくもないが。

そんな主人公二人の間で化学反応が起こるはずもなく、二人のダラダラとしたドラマは本当につまらなかった。朝イチの上映回ということもあり、何度も寝落ちしかけたし。

そんな私の目を覚まさせたのが見せ場の大轟音で、ゴゴゴゴゴゴゴと重低音が物凄いことになっていた。大轟音のアクションを目の当たりにすると「大作を見たなぁ」という気分になれるので、これは本当に良かった。

見せ場のVFXも進歩しているのだが、CGIが売り物になっていた28年前とは状況が違うので、竜巻のCGだけで勝負するのはちと辛い。コンビナート炎上場面くらいかな、前作を越えたとはっきり言える見せ場は。

人間が風に巻き上げられそうになる場面では、俳優たちがかなり体を張った撮影をしたことは伝わってきたのだけど、それが見せ場全体のレベルアップにはつながっているわけでもなかったのがもどかしい。

CGとライブアクションの組み合わせ方は、前作のヤン・デ・ボン監督の方がうまかったと思う。

主人公グループが被災地救助か研究継続かを天秤にかける場面は意味わからなかった。

ここで被災地救助に振り切った主人公たちは良い人みたいな流れになるんだけど、災害救助のエキスパートでもない彼らが頑張るべき場面でもないように思う。むしろ彼らのやるべきは研究開発で、当たる予測技術を考えてこそ、人命を救うことにもつながるんじゃなかろうか。

あと、被災者の土地を買おうとする不動産屋が悪者扱いなのも意味わからなかった。地上げのために竜巻を起こしているわけでもないんだし。

復興費用を考えると土地を売り払って都会に引っ越した方がいいと考える被災者だっているだろう。あんなド田舎の竜巻直撃コースの土地に、どれほどの値が付くのかはよく分からんが。

今回は工業地帯や住宅地直撃竜巻が多かったけど、あんなに被害が出るのであれば、オクラホマ州にインフラなんて建設できないだろとも思ったりで・・・

そんなこんなの違和感もあり、本作は楽しめなかった。

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