【凡作】U-571_リアルでも荒唐無稽でもない中途半端さがダメ(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント

(2000年 アメリカ)
「潜水艦を舞台にしたタイトなアクションとくれば大好物やんけ!」というわけで劇場に見に行ったのですがあまりノレず、その後もDVDで何度か見たもののノレず、今回Netflixで見返してもノレなかったので、本当に合わない映画なのだろうと思います。

作品解説

監督・脚本は『ターミネーター3』のジョナサン・モストウ

本作の監督・脚本を務めたのはジョナサン・モストウ。

ハーバード大学卒業後に映画製作を志してL.A.に移り、初期には『ウォー・バーズ2/天空を駆ける無敵のF-16』(1991年)などのビデオスルー映画を撮っていました。

1992年には後に『ゲーム』(1997年)となる企画に監督として携わり、カイル・マクラクランとブリジット・フォンダ主演で製作準備に入っていたのですが、企画がプロパガンダフィルムズからポリグラムに売却されるなどして製作が一時中断。この混乱の中でモストウは監督から外れ、5年後にデヴィッド・フィンチャー監督が完成させました。

1997年、カート・ラッセル主演のスリラー『ブレーキ・ダウン』(1997年)を監督し、地味な作風ながら批評的にも興行的にも成功を収めたことからユニバーサルと契約し、その契約に基づき製作されたのが本作『U-571』(2000年)でした。

脚本は『ブレーキ・ダウン』(2000年)と同じくジョナサン・モストウとサム・モンゴメリーが執筆し、それを米海軍で潜水艦乗組員として勤務した経験を持つ新人脚本家デヴィッド・エアーが手直して完成させました。

本作の成功により重厚なアクション映画を撮れる監督として見做されるようになり、ジェームズ・キャメロンに断られた『ターミネーター3』(2003年)の監督に抜擢され、全世界で4億3340万ドルを稼ぐ大ヒットに導きました。

その後は、ブルース・ウィリス主演のSFスリラー『サロゲート』(2009年)を豪快にコケさせたくらいしか印象に残る仕事をしていないのが残念な限りです。

豪快な史実改変にイギリス激怒

米海軍がドイツのエニグマ暗号機を奪取し、以降の戦況に極めて大きな貢献をしたという本作の内容に対し、イギリスでは大変な物議が起こりました。

史実によるとエニグマを奪取したのはイギリス海軍であり、しかもアメリカが対独参戦する前の1941年5月のことだったので、イギリス海軍とイギリスの大衆は「その時アメリカは何もしてなかったじゃないか!」と怒ったというわけです。

この時の騒動はかなりのもので、労働党議員のブライアン・ジェンキンスが、時の首相トニー・ブレアに対して「当該作戦で命を落とした英国人クルーに対する侮辱ではないか」との質問状を送り、ブレアもその指摘に同意。

話は米大統領ビル・クリントンにまで波及し、クリントンは映画の筋書きはフィクションであることを再確認しました。

常日頃から好き勝手書かれまくっているドイツや日本からすれば、特段悪く描かれたわけでもなくアクション映画で手柄を取られたくらいでそんなに怒るなやという感じなのですが、ともかく大変な騒動になったというわけです。

後年、本作の脚色を行ったデヴィッド・エアーはこの時の史実改変を認めた上で、二度と同じことはしないと発言しました。

2週連続全米No.1

本作は2000年4月21日に全米公開され、スポーツ映画『ワン・オン・ワン・ファイナルゲーム』(2000年)や前週1位の『英雄の条件』(2000年)を抑えて初登場1位。翌週も引き続き好調でV2達成。全米トータルグロスは7712万ドルでした。

国際マーケットでも好調であり、全世界トータルグロスは1億2766万ドル。6200万ドルという戦争映画としては控えめな製作費だったこともあって、大爆発こそしないものの堅調に利益を出しました。

感想

敵はどうやって状況を認識したんだ

独海軍の潜水艦U-571が大西洋上で立ち往生しており、友軍に救援を要請中との情報を掴んだ米海軍が、これを好機と見てU-571に積まれているエニグマ暗号機強奪作戦を立案します。

その内容とは、ドイツ軍に先回りしてU-571の元に行き、詰まれているエニグマ暗号機を奪った後にU-571が力尽きて沈んだように見せかけるというものであり、そこで派遣されるのが米海軍潜水艦S-33。

途中まで首尾よく作戦は進んでいくのですが、思いのほか早くドイツ軍側の救援がやってきたことからS-33は撃沈され、生き残った米海軍クルーはU-571に乗り込んで友好国を目指すことがざっくりとしたあらすじ。

この通りシチュエーションがとにかく込み入っているのですが、前半の敵となるUボートと後半の敵となる独駆逐艦が、アメリカ人にU-571を占拠されているという通常では想定されえない状況をいかにして認識したのかが分からないので、展開に無理が生じています。

自軍のU-571を敵と見做して攻撃するのは余程のことであり、仮に怪しいと思う点がいくつかあったとしても、確認もせず撃沈という判断はそう簡単には下せないのではないでしょうか。

この辺りをうまく片付けられていないので、脈絡なく戦闘が始まったように見えてしまっています。

敵をドイツ海軍とするのではなく、事情を知らず普通のUボートだと思っている味方に追われるという話にした方が、まだ無理はなかったような気がします。

相手が味方なので撃ち返すことができない、かと言って無線で事情を説明すると敵に傍受されて暗号コードを変えられてしまい、今回の作戦の目的を達成できなくなるという中で、何とか自陣に戻るというスリラーにすべきではなかったかと。

リアルな戦記ものと荒唐無稽なアクションの中間

ともかくU-571のサバイバルが開始されるのですが、豪快な荒業が多々炸裂するので、展開だけを見ると荒唐無稽なアクション映画となっています。

U-571は航行不能な状態にあったはずなのに、米海軍クルーがちょっといじっただけで戦闘可能な状態に戻ったり、爆雷攻撃を避けるべく性能を越える深度まで潜っても気合で何とかなったり、申し訳程度に取り付けられた砲台で駆逐艦の通信室を狙い撃ちすることに成功したりと、いろいろとご都合主義が炸裂。

極めつきはクライマックスで、残されたたった一発の魚雷で駆逐艦を撃沈するというウルトラCが炸裂します。

他方で、実話を謳ったり、極力CGを使わない製作姿勢だったり、部下の生死に責任を持てるかというテーマが打ち出されていたりで、表面上はリアルな戦記ものとして組み立てられているものだから、作風に混乱が生じています。

宇宙世紀にマジンガーZが登場してジオン軍を一掃するかのような変な感覚があって、この違和感には最後まで馴染めませんでした。

なお、第二次世界大戦当時のソナー性能では潜水艦が敵潜水艦に魚雷を当てるということはほぼ不可能だったようで、そのような事例は大戦を通じても英海軍MHSベンチャーがU-864を沈めた一件だけでした。

しかし、本作ではU-571が別のUボートを撃沈するという場面が存在しており、その点でも本作がリアリティ度外視の作品だったと言えます。

時代錯誤的なドイツ軍の描写

またドイツの軍人は殺しても構わない相手なんですよというエクスキューズがちょいちょい入るのですが、これが時代錯誤的で馴染めませんでした。

U-571の艦長は、救命ボートに乗って助けを求めに来るイギリス人を機銃で皆殺しにしたり、捕虜として拘束後にも友軍にモールス信号を送って撃沈を指示しようとしたりと、かなりの悪人として描かれています。

しかも彼にそれ以外の個性が与えられていないものだから、極めて偏った描写で純粋悪にされており、大昔の映画ならともかく、2000年代の映画でその描写はマズイと思います。

なお、史実においてUボートは人命救助を頻繁に行っていたようで、連合国側の生存者を収容し、食事や医療の提供をしていたという記録は多く残っています。

Uボートが敵生存者に対して故意に発砲したのは1944年のU-852の事例一件のみだとされています。

副長の成長譚として不十分

そして作品の横糸として描かれるのがマシュー・マコノヒー扮するタイラー大尉の成長譚です。

タイラーはS-33の副長としては誰もが認めるほど優秀なのですが、彼を艦長にするかどうかの判断にあたって上官のダルグレン艦長(ビル・パクストン)より資質なしと判断されたことから、昇格を見送られていました。

なぜダルグレン艦長がそう判断したのかというと、タイラーは部下としては気が利くし、クルー達からは兄のように慕われているが、艦長の絶対要件であるリーダーシップがないと判断されたためでした。

で、今回のエニグマ強奪作戦においてはS-33と共にダルグレン艦長を失ったことから、タイラーがU-571艦長を務めざるを得なくなり、彼がリーダーとしての資質を身に着けることが大テーマとなります。

ただし、客観的に見て序盤と終盤でそこまでタイラーに変化がありません。

序盤でもタイラーはダメなリーダーではなく、むしろあそこまで切羽詰まった状況でよくぞ危機を切り抜けたと言える仕事をしたし、終盤にかけて見違えるほど素晴らしい指揮を執るわけでもありません。

終盤でタイラーがやったことと言えば、魚雷の発射管を直している部下のラビットに対して「絶対にやれ!泣き言は聞かん!」とパワハラ上司のような言葉をぶつけることと、今撃てば作業中のラビットが犠牲になるというシチュエーションでも魚雷を発射する決断を下したことだけで、いずれも部下を犠牲にしてるだけなんですよね。

それを「艦長として立派な判断を下せるようになった!」と褒めるのは、なんか違うような気がします。