【良作】ユニバーサル・ソルジャー_デラックスなB級アクション(ネタバレあり・感想)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(1992年 アメリカ)
ベトナム戦争に出征していたリュック・デヴロー二等兵は、錯乱した上官のスコット軍曹と相打ちになって戦死した。25年後、ユニバーサル・ソルジャーと呼ばれる特殊部隊が世の注目を集めるが、そこにあったのは戦死したはずのリュックやスコットの姿だった。

©TriStar Pictures, Inc., 

ローランド・エメリッヒのハリウッド進出作

4年後の『インデペンデンス・デイ』でハリウッドの頂点に立つこととなるローランド・エメリッヒの、ハリウッド進出作です。

エメリッヒは西ドイツ出身であり、映画学校時代に卒業作品として撮った『スペースノア』を皮切りに数本のSF映画を西ドイツで製作しました。ドイツ時代の作品である『スペースノア』と『MOON44』は私も見たことがあるのですが、どちらも大した出来ではありませんでしたね。

ただし玄人はちゃんと見ているようで、なんとシルベスター・スタローンが『MOON44』でのエメリッヒの仕事を絶賛し、ハリウッド中のプロデューサーにエメリッヒを紹介して回りました。そして、スタローン主演、マリオ・カサール製作のSF大作『Isobar』から監督のリドリー・スコットが降板したので、後任としてエメリッヒが起用されました。ただし、遺伝子改造されたモンスターが特急内で乗客を襲うというSFホラー『Isobar』に9千万ドルもの予算が計上された時点で、この企画の採算性が疑問視されて製作はキャンセルされたのでした。

ちょうどその頃、マリオ・カサールは『ユニバーサル・ソルジャー』の企画も進めており、こちらはチャック・ノリスやスティーヴン・セガールとの仕事で実績を出してきたアンドリュー・デイヴィス監督の次回作となる予定だったのですが、彼は『沈黙の戦艦』へと移っていきました。そして、ピンチヒッターとしてエメリッヒが監督に選ばれたのでした。

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冒頭の掴みの素晴らしさ

ユニソル大活躍に燃える

ユニバーサル・ソルジャーの任務遂行が序盤の掴みとなっていますが、この掴みが非常に素晴らしいものでした。

物々しい音楽をバックに輸送機が着陸すると、その輸送機の腹から巨大トレーラーが発進。短時間ながらメカ描写がかっこよく、トレーラーには未来の車両といった感じのデザインやギミックが施されていて、SFを専門分野とするエメリッヒの強みが表れています。

続くユニソルの出撃場面では、引きとアップの組み合わせによりダムという広大な舞台でのユニソルの超人的な活躍を効果的に見せているし、現場を監視しているSWATのスナイパー達がユニソル達の動きを見て驚くというリアクションの挿入が、良い合いの手になっています。SFやアクションにはリアクションというものが重要なのですが、本作ではそれがきちんとできているのです。

あと細かい部分では、今回が初出撃ではなく3度目の出撃であるという設定もSF感があってよかったです。初出しのものよりも、ある程度運用が進んでいるものの方が燃えるというのは『機動戦士ガンダム』以来の伝統ですね。

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人物の背景処理のうまさ

ヴァンダムの相手役となるニュースリポーター・ヴェロニカの人物描写や背景もこの場面で簡潔に説明できています。

ヴェロニカはある程度知名度のあるリポーターではあるものの、態度の悪さから現場での評判は悪く、今回の中継を最後に局から解雇を言い渡されます。挽回したいヴェロニカは目の前のユニソルという大ネタの特ダネを狙って危険な取材を敢行しますが、そのことがリュックの異常行動を引き起こし、二人の逃避行が始まります。面倒くさい導入部はこれで終わり。エメリッヒってやっぱりうまい人なんですね。

キャラ描写の素晴らしさ

リュックの人外描写

  • 銃で撃たれても痛がる様子がなく、シガーソケットで出血を止める
  • 逃走中の車がガス欠になると何キロも押して走らせる
  • 安モーテルの薄い壁程度ならタックルで破れる
  • 埋め込まれた発信機を取り出すために、ためらいなく自分の皮膚をえぐる
  • 大食いで定食を何人分も平らげる

以上の通り、リュックが人外であることを示す描写が全編に散りばめられており、SFらしいガジェットがほとんど登場しない作品ながら、観客に本作がSFであることを忘れさせないよう工夫がなされています。この辺りには、マリオ・カサールが前年に製作した『ターミネーター2』のノウハウが投入されていると思うのですが、こうしたひと手間も気が利いているなと感心させられました。

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スコットのサイコパス描写

リュックの後を追う形で、ドルフ・ラングレン扮するスコットも自我を取り戻し、こちらは制御不能の殺人マシーンと化すのですが、彼のヤバイ奴描写もよく出来ていました。

平気で人を殺したり、訳の分からないことを喚いたりといった直接的な描写に加えて、人を殺した後に血の付いた手を服で拭ったり、鼻をすすったりといった些細な仕草を加えることで、残虐性をより際立てています。この映画、やはり細部の描写がよくできています。

よくよく考えてみれば、なぜスコットがリュックを追いかけているのかは分からないのですが、精神に異常を来した記憶喪失の殺人マシーンが、唯一の知り合いをストーカーする話と思えば、ある程度の納得感はあります。

見せ場の充実

全体的には大味なB級アクションではあるものの、夜(ベトナムでの同士討ち)→昼(ダムでのユニソル出撃)→夜(モーテルでの戦闘)→昼(ガソリンスタンドでの戦闘)→夜(スーパーマーケットをスコットが襲撃)→昼(砂漠でのチェイス)→夜(リュックの実家での対決)と律儀なまでに見せ場の色を交互に変えてくるので、飽きがこない作りとなっています。

加えて、全体的な見せ場のバランスもよく考えられていて、せっかくヴァンダムとラングレンを共演させているのに直接対決の場面がないなぁと観客を飢餓状態に置いたところで、ついに両者を相まみえさせるクライマックスにすべてを集約させるという流れの作り方は合理的でした。

また、VFXの扱いに長けたエメリッヒらしい見せ場もあって、トラックと護送車が崖から落下する場面は劇場公開時には本物だと思っていたのですが、よく見てみると精巧なミニチュアなんですよね。VFXを映画の一部として自然な形で織り込むという技術の高さや演出の巧みさには驚かされました。

基本的なストーリーラインが弱い

上記の通りディティールは良いのですが、基本的なストーリーラインの脆弱さが気になりました。

記憶喪失の主人公・リュックが自分は何者かを探る物語を基礎としているのですが、本作の場合は冒頭でベトナムの場面を見せているのですでに主人公の素性は明らかで、今更何を探ろうとしているのかが曖昧で謎解きが作品の構成要素としてうまく機能していません。

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加えて、製作年代を考えるとユニソルを湾岸戦争の戦死者という設定にしても良かったところを、敢えてベトナム戦争の戦死者にしたことには、浦島太郎的なカルチャーギャップものや、馴染みのものすべて失ったリュック達の悲しいドラマを指向したものと思われるのですが、その点が企画倒れに終わっている点も残念でした。

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