ご家庭に眠っているビデオテープは20年物、30年物であるが、テープにカビが生えていてどうにもならないという悩みも多いのではなかろうか。実はこのカビ取り、大したスキルや道具がなくてもできるものなので、その方法を説明したい。
注意!カビたビデオテープを再生してはならない
と、カビ取りの前にまず注意事項であるが、カビたビデオテープをそのままデッキに入れて再生してはならない。その理由は以下の2点。
- デッキ内でカビが飛び散り、ビデオデッキにダメージを与える
- カビが固着している場合、無理矢理再生するとテープが破れる
1.についてはYoutubeで実験動画を見たことがあるが、びっくりするほどカビが飛び散る。ヘッドなんか一発でダメになるんじゃないかというレベルで。
ビデオデッキの部品の製造が終わってから久しく、替えの部品がないので動作するビデオデッキを大事に使わなければならないこのご時世に、そのお命を奪うかもしれないカビたテープの再生はご法度なのである。
次に2.であるが、これは私自身に経験あり。
カビたビデオテープをビデオデッキに入れるというご法度を十数年前にやらかしたのだが、再生した瞬間にテープが切れて使用不可能になった。
今思えば、カビをまき散らしてビデオデッキを終わらせるくらいなら、テープが切れてビデオカセット一つが死んだ方が随分とマシだったが、そのテープの録画物は見れなくなったことは損失だった。
この通り、カビとはまことに手ごわい植物であり、舐めてかかることは厳禁なのである。
カビ取りの実務
次に、カビ取りをどうすればいいのかを説明する。使うのは最近買った『ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団』(1974年)の中古ビデオ。

大して面白い映画ではない、というか駄作と言った方が適切な映画ではあるのだが、国際的な裁判沙汰となったウルトラマンの著作権騒動の火種となった作品であり、円谷プロとしてはその存在を無視するしかない作品であるため、1995年頃から封印状態が続く作品である。
将来に渡って封印が続くことはほぼ間違いなく、30年ほど前に流通していたビデオには資料的価値があるのだが、カビだらけにつき送料込みで1000円という破格で同作のビデオがフリマアプリに出品されていた。

実物を見てみると、なるほど結構なカビ具合。
このテープのカビ取り作業をご覧いただきたい。
準備するもの
- プラスドライバー
- 無水エタノール
- 霧吹き
- 眼鏡拭き
準備するものはこれだけ。難しいものは何ひとつございません。
ビデオカセットを開く
まず、プラスドライバーを使ってビデオカセットを開腹する。
カセットをひっくり返すとこの通り5つのネジ穴があるので、これをプラスドライバーで外す。

これで開く状態にはなるのだが、必ず表面にひっくり返してから開くこと。
なぜなら、カセットの内部には細かい部品が多く、裏返したまま開くと、それらの部品が外れてしまうから。
で、開いた状態がこちら。

念のためこの状態をスマホ等で撮影しておき、もしも部品がポロリした場合にも、復元の参考にできるようにしておきたい。
特に下部にある白と黒のストッパーが外れやすく、かつ、元に戻せと言われると結構難儀なので、どんな構造になっているのか意識的に見ておいた方がいい。
磁気テープを優しく拭く
開いたら、磁気テープ部分を取り外す。
そして、もしもカビが固着しているとテープが裂けるかもしれないので、磁気テープに無水エタノールを霧吹きして、カビを柔らかくする。

矢印で示したリールの開口部分と、テープとリールの隙間部分から、エタノールを吹きかける。
そして磁気テープを眼鏡拭きで拭くのだが、記録面を傷つけると映像を見られなくなるので、拭くというよりも眼鏡拭きの間を通すだけというイメージで。

あとはひたすら磁気テープを綺麗にするだけなのだが、120分テープだと230メートルもあると言われており、これをやり切るには結構な根気が必要。
私がやってみると1時間かかった。
で、やり切った結果がこちら。

何ということでしょう!あれだけカビていたテープが黒光り!
そしてリール部分にもカビの胞子などが残っているかもしれないので、エタノールを振りかけた眼鏡拭きで丁寧に拭いておく。
磁気テープを元に戻して完成
最後に磁気テープをカセットに戻して完成だが、マル囲みの部分、上部のローラーの間にテープを通すということを忘れないでいただきたい。

そして再生。カビだらけのテープがちゃんと見られるようになった。

この通り、素人でもできるほど、ビデオテープのカビ取りは難しくない。
難しくはないが、230メートルもある磁気テープをクリーニングする作業にはある程度の時間と根気が必要なので、そういう地道な作業が苦手という方にはおすすめしない。
私はドラマ『アーカイブ81』(2022年)を見たこともあって、ビデオテープの復元作業を自分でやりたいというマインドであったが、すべての人が『アーカイブ81』を見ているわけでもなかろう。
ネットで探すと、手間賃1000円+送料でカビ取りをしてくれる業者もいるので、そうした業者に依頼するのも手である。