【凡作】薔薇の素顔_ジェーン・マーチだけが良すぎる(ネタバレあり・感想・解説)

(1994年 アメリカ)
犯人探しのミステリーも危険の連続の展開も盛り上がらないダメサスペンスではあるのですが、主演のジェーン・マーチの魅力で何とか持ち堪えているので、まったく見られない駄作でもありません。

作品解説

ゴールデンラズベリー最低作品賞受賞作

全米公開時には酷評の嵐で、ゴールデンラズベリー賞(通称ラジー賞)9部門にノミネート、うち最低作品賞を受賞するという不名誉を受けました。

ラジー賞にかすった作品は数多く存在するものの、最低作品賞を受賞した真の駄作とはそうそうありません。

で、驚きなのがブルース・ウィリス主演作でラジー賞最低作品賞受賞作は二本目だということで、彼は『ハドソン・ホーク』(1991年)でも真の駄作の称号を得ています。ここまで立て続けに駄作に出るというのは、それはそれで凄いことです。

興行的失敗とレンタル市場での好調

本作は1994年8月19日に公開されたのですが、『フォレスト・ガンプ一期一会』(1994年)『今そこにある危機』(1994年)といった息の長い人気作に阻まれて初登場4位と低迷。

その後もランクを上げることはなく、全米トータルグロスは1972万ドルに留まりました。一体何に使ったのか製作費は4000万ドルもかかった作品でしたが、興行は大赤字に終わったというわけです。

ただし大スター ブルース・ウィリス主演の上にエロもありということでレンタルビデオ市場では好調であり、全米では年間トップ20に入るほどの人気作となりました。どこで人気に火が点くかは分からないものです。

感想

センスのない官能映画

現在から振り返ると信じられないことなのですが、90年代前半はやたら女優が脱ぐ映画が流行していました。

ポール・バーホーベン監督の『氷の微笑』(1992年)が全世界で3億5200万ドル(同年の『アラジン』をも凌ぐ金額)という特大ヒットになったことがきっかけなのですが、同じく官能サスペンスを標榜したマドンナ主演の『BODY/ボディ』(1993年)、レベッカ・デモーネイ主演の『ストレンジャー』(1996年)などが続々公開。

また『ゲッタウェイ』(1994年)や『スペシャリスト』(1994年)など、ジャンルは違うし話の流れ的にもまったく不要なのに、突如濃厚なラブシーンがおっ始まる映画もありました。男としては、そのサービス精神を有難く受け取りましたが。

本作も、そんな中で製作された官能サスペンスの一本。

ラブシーンは他作に負けず劣らずの濃厚ぶりで目を楽しませてくれるのですが、同時にエロをやるにも才能が必要であることも思い知らされました。

ビシっとスーツを着てディナーを食べようとするブルース・ウィリスの向かいには全裸のジェーン・マーチが座っていて、「やっぱり君を食べたいなぁ」とか言って始まるラブシーンなど死ぬほどダサかったです。笑わせようとしてるのかと。

その他にも裸にエプロンなど、センスも捻りもないエロ描写の連続にはまったく風情がありませんでした。この監督はギルガメッシュナイトでも見て勉強したのでしょうか。

スリルのないサスペンス

NYの精神科医ビル(ブルース・ウィリス)は、セラピー中の患者が目の前で飛び降り自殺を図ったことから精神を病み、友人の精神科医ボブ(スコット・バクラ)の元に一時的に身を寄せるのですが、ボブは何者かに殺されます。

ボブ亡き後には彼の患者を引き取ったビルですが、どうやらその中にボブ殺しの犯人がいるらしいというのが本作のあらすじ。

犯人は一体誰なのかというミステリーと、ビルの身にも危険が及び始めるというサスペンスが映画の両輪だと思うのですが、どちらもうまく機能していませんでした。

まずミステリーですが、容疑者である5人の患者にイマイチ興味を持てないので犯人探しが盛り上がりません。

それぞれ固有の精神疾患を抱えているという設定であり、演じるのもブラッド・ドゥーリフやランス・ヘンリクセンなどの曲者俳優ではあるのですが、人物描写に深みが無さ過ぎるので「心に深い傷を負った多彩なキャラクター」ではなく「変わり者の集まり」でしかないわけです。

次に主人公が危険な目に遭うサスペンスですが、主演がブルース・ウィリスなので「絶対に大丈夫」という無用な安心感が終始漂っています。

中盤では結構派手なカーチェイスにも巻き込まれるのですが、ブルース・ウィリスにとっては日常茶飯事ですからね。ここで死ぬなんてことはまずありえないわけです。

企画の初期にビル役にキャスティングされていたのは『スペースバンパイア』(1985年)のスティーヴ・レイルズバックであり、線が細い上に神経質そうなレイルズバックならばサスペンスにもスリルが伴ったと思うのですが、プロデューサーは一体何を思ってブルース・ウィリスに変更したのでしょうか。

ジェーン・マーチのみ素晴らしい ※ネタバレあり

そんなわけで面白い要素が少ない作品なのですが、謎の女を演じるジェーン・マーチだけは輝いていました。

軽い追突事故が原因でビルは偶然にも彼女と知り合い、その美貌とエロさの虜になるのですが、ビルが夢中になるのも納得できるくらい彼女は魅力的なのです。

またシャロン・ストーンやマドンナのような肉食系の雰囲気ではなく、幸薄い感じや儚い感じがこのキャラクターの独自性となっています。

加えて、ラストのドンデンは完璧に騙されました。性別を超越した役柄を演じられるって凄くないですか?

彼女はラジー賞で最低女優賞と最低助演男優賞にノミネートされているのですが、なぜそんな評価を受けたのかが全く理解できません。

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