【良作】スペースバンパイア_裸だけじゃない魅力(ネタバレあり・感想・解説)

サスペンス・ホラー
サスペンス・ホラー

(1985年 イギリス)
女バンパイアのことしか語られない作品なのですが、実はシブいキャストに超絶都市破壊にゾンビもどきと、SFホラーを盛り上げる要素がパンパンに詰まった素晴らしい作品でした。

© 1985 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

あらすじ

地球に接近するハレー彗星の探査に向かった宇宙船チャーチル号は、星雲に全長240kmもの巨大な人工物を発見し、そこから男女3名が収納されたケースを回収。その後音信不通となったチャーチル号を救出に出たコロンビア号が、ケースを地球に持ち帰った。

スタッフ・キャスト

バンパイア役のマチルダ・メイって一体何者?

本作の顔。ただし、彼女が画面に映っている時間を全部足してもたったの7分で、パトリック・スチュワートの18分と比較しても半分以下の露出時間なのですが、それでも全部持っていったのはマチルダ・メイであり、その存在感はすごいことになっています。

© 1985 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

マチルダ・メイは16歳にしてフランス国立高等演劇学校で主席をとり、1987年にはセザール賞新人賞受賞。またシンガーソングライターとしても活躍している多才な人です。本作は英国演劇界の錚々たるオヤジ達が出演し、スタッフも一流どころが集まった作品なのに、鑑賞後の印象はすべて彼女が持って行ったのは、単なる脱ぎ要員を越えたものがあったためだと思います。

1989年頃に本国フランスで売られていたマチルダ・メイグッズ
2019年頃のお姿

映画のレビューを見ても彼女の話題ばかりだし、かつ、作品自体は賛否両論でも彼女についての否定的な意見はまったく見当たらず、強烈なインパクトを残すと同時に満場一致の支持を得られているというのは、なかなか珍しい例ではないでしょうか。

英文のレビューを読んでもマチルダ・メイを褒め称えるものが多いので、日本人好みのルックスだからということでもなく、彼女に対する支持は世界的なものなんだろうと思います。

英国演劇界の錚々たる面々が出演

  • ピーター・ファース:1977年に舞台『エクウス』でトップスターの仲間入りをし、1979年にはロマン・ポランスキー監督の『テス』に主演と、文芸路線でキャリアを築いていました。
  • フランク・フィンレー:王立演劇学校出身で多くの舞台を経験した後、1965年に出演した映画『オセロ』でアカデミー助演男優賞にノミネート。本作直前の1984年には大英帝国勲章を受章しています。
  • パトリック・スチュワート:言わずと知れたピカード艦長にしてプロフェッサーX。名門ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで主演を歴任し、2010年にはナイトに叙任。また2007年にはオックスフォード大学に客員教授として招かれたこともあるという、めちゃくちゃ偉い人です。

製作はメナハム・ゴーラン&ヨーラム・グローバス

イスラエルからハリウッドに殴り込みをかけ、1980年代前半には「早い、安い」を売りにしたキャッチーなB級映画の量産体制を確立して大儲けしたコンビです。ただし、メナハム・ゴーランはどれだけ儲けてもハリウッド界隈での尊敬を得られないことに不満を持っており、1980年代半ばよりメジャーに負けない大作路線や、真剣にオスカーを狙いに行った文芸路線を模索し始めました。信じられないほどの豪華スタッフを揃えた本作は、大作路線の中での一作。

結局、大作路線でヒット作は生み出せずに会社の経営が圧迫され、二人が率いるキャノン・フィルムズ(日本のキャノン株式会社とは無関係)は1993年に倒産しました。

オーバー・ザ・トップ【4点/10点満点中_スターの集客力のみが頼みの綱】(ネタバレなし感想)

監督は『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパー

ホラー映画の大家。『悪魔のいけにえ』は低予算を逆手にとった粗さが観客の恐怖を倍増させており、金をかけない方がホラーは怖くなるという現在に至るまでの映画界の不文律を確立しました。また、テキサスという土地柄とホラーの相性の良さを最初に発見した偉人でもあります。加えて、1982年にはスピルバーグ製作の『ポルターガイスト』も監督しており、高度なVFXを駆使した金のかかった現場をコントロールした経験もあったため、本作の監督としては適任者でした。

メナハム・ゴーラン、ヨーラム・グローバスとは気が合ったらしく、彼らの人格やプロデューサーとしての姿勢を褒めたたえる発言をしており、キャノン・フィルムズでは『悪魔のいけにえ2』『スペースインベーダー』と本作を含めて3本の映画を製作しています。

関わった4人の脚本家

クレジットされているのはSFホラーの大御所ダン・オバノンですが、ノークレジットでホラー畑の人材も参加しています。オバノンが企画に参加した際にはすでに8本の脚本が別の脚本家によって執筆されており、混迷した企画だったことが伺えます。

  • ダン・オバノン:『エイリアン』『トータル・リコール』で知られる超一流脚本家で、基本的にはSFをフィールドとしていたのですが、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』に感銘を受けてホラーに傾倒していた時期があり、1981年に『ゾンゲリア』の脚本を書き、1985年には『バタリアン』の脚本を書き、また監督もしています。本作は、SFとホラーというオバノンの二本柱が揃った作品でした。
  • ドン・ジャコビー:ダン・オバノンとのコンビで『ブルー・サンダー』の脚本を執筆しており、キャノン・フィルムズではマイケル・エドモンズ名義で『スーパー・マグナム』の脚本を書いています。また、後にジョン・カーペンター監督の『ヴァンパイア/最後の聖戦』の脚本も書いています。
  • マイケル・アームストロング:スクリプトドクターとしてノークレジットで参加。1960年代末から活躍しており、1970年にはウド・キアが出演した『残酷!女刑罰史』を監督しています。
  • オラフ・プーリー:スクリプトドクターとしてノークレジットで参加。本来はテレビ俳優で1950年代から2000年代初頭まで活躍していたのですが、脚本家としての実績もあり、1979年には悪意を持った子供が人を殺す『死霊懐胎』の脚本を書いています。

トータル・リコール(1990年)【7点/10点満点_ディックらしさゼロだけど面白い】
スーパー・マグナム【4点/10点満点中_とんでもなく楽しいクソ映画】

撮影はベテランのアラン・ヒューム

1940年代から映画界で働き始め、1960年代には『吸血鬼の接吻』や『テラー博士の恐怖』などの怪奇映画を手掛け、また1980年代には『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』も担当しています。昔ながらの英国ホラーの撮影監督でありながらも、当時最先端のVFX技術を扱う現場にも慣れていたということで、本作に採用されたのだと思います。

本作はエロティックな文脈で語られることが多いのですが、女バンパイアが出てくる場面は合計で7分程度しかなく、しかも激しい絡みがあるわけでもなく、女優さんが脱いでいる映画、これよりもっと過激な映画は他にいくらでもあります。しかしなぜ本作のみが30年以上も語り継がれているのかというと、全体にいかがわしい雰囲気を作り上げ、実際に映っているもの以上のインパクトを観客に対して与えたアラン・ヒュームの功績によるところが大きいのではないかと思います。

音楽は巨匠ヘンリー・マンシーニ

こちらも1950年代からハリウッドで働く超ベテラン。『ティファニーで朝食を』などで3度のアカデミー賞受賞歴を持ち、『ピンク・パンサー』『刑事コロンボ』など印象に残るテーマ曲を多く手掛けています。またキャリアの初期には『大アマゾンの半魚人』などのB級モンスター映画も手掛けており、本作にはうってつけの人材でした。実際、壮麗かつ物々しい本作のテーマは耳に残る傑作だったと思います。

なお、当初作曲を依頼されていたのはジェームズ・ホーナーだったのですが、断られてマンシーニに話がいったという経緯があります。

VFXは『スター・ウォーズ』のジョン・ダイクストラ

『スター・ウォーズ』の宇宙戦は、同じ動きを何度でもリピートするモーション・コントロール・カメラのおかげで実現したのですが、世界初のコンピューター制御のモーション・コントロール・カメラ『ダイクストラ・フレックス』を開発したのがジョン・ダイクストラでした。この功績によりアカデミー視覚効果賞及び特別業績賞を受賞。その後は世界有数の視覚効果マンとして活躍し、『スタートレック』や『ファイヤーフォックス』などを手がけました。

ダイクストラ・フレックスを格安で開発したにも関わらず、「カメラシステムに金がかかり過ぎた」と小言を言われたことからルーカスとの関係が悪かった上に、ルーカスとユニバーサルが『宇宙空母ギャラクティカ』を巡る法廷闘争に発展した際にユニバーサル側の仕事をしていたことから、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』以降には参加していません。

そうしたいろいろがあったダイクストラですが、本作では現在の観客の目にも耐えられる視覚効果を提供しています。

作品解説

興行成績は低迷

1985年6月21日に公開されましたが、同時期に公開されたロン・ハワード監督の『コクーン』(1985年)には及ばず、また息の長い人気を保っていた『ランボー/怒りの脱出』(1985年)と『グーニーズ』(1985年)の猛威にも巻き込まれ、初登場4位に甘んじました。

その後も浮上することはなく3週目にしてトップ10圏外へと弾き出され、全米トータルグロスは1160万ドルにとどまりました。製作費は2500万ドルだったので大赤字です。

登場人物

  • 女バンパイア(マチルダ・メイ):人間の精気を吸い取ってエイリアンシップに送るという役割を果たしている。彼女を見た男は「もうどうなってもいい」という心境に陥るらしい。カールセンの願望を具現化した姿であり、コウモリの化け物みたいなのが本来の姿。目の前の人間を窒息させる、ガラスを割るなど念力のようなものも使える。
  • トム・カールセン(スティーヴ・レイルズバック):アメリカ空軍大佐で宇宙船チャーチル号船長。チャーチル号唯一の生き残りで、脱出艇で地球に帰還した。チャーチル号に回収された直後のバンパイア達はエネルギー切れで動けなかったのだが、その魅力に勝てなかったカールセンが女バンパイアと関係を持ったことでバンパイアが復活し、今回の惨事へと発展した。重大な罪を背負っている割には反省の色が薄い。
  • コリン・ケイン(ピーター・ファース):英国空軍情報部大佐。事態の収拾に呼ばれた。研究所を抜け出した女バンパイアを追いかける。実は隣にいるカールセンがこの騒動の引き金だったことを知っても怒ったりせず、淡々と受け流せる強靭なメンタルを持つ。最初この役をオファーされたのはアンソニー・ホプキンスだった。
  • ハンス・ファラーダ(フランク・フィンレー):バンパイアの生態を解明し、弱点を突き止めるなど見事な活躍をするが、みんなから教授と呼ばれている割に一体何の教授なのかはよく分からない。最終的に男バンパイアに肉体を奪われてケインに殺される。
  • ブコフスキー(マイケル・ゴザード):英国宇宙局の所長。職員の精気を吸った直後の女バンパイアと遭遇した際には無事だったが、その後、ロンドンがパニックに陥った際に死んだらしい。主要登場人物の一人なのに退場場面すら描かれなかった気の毒な人。
  • パーシー・ヘーゼルタイン(オーブリー・モリス):内務大臣。見た目は冴えないおっさんだが、カールセンとケインに付いて女バンパイアの捜索に参加するなど意外とアクティブ。精神病院で女バンパイアの発したエネルギー波を受け、首の骨を折って死ぬ。人生とは報われないものです。
  • アームストロング(パトリック・スチュワート):精神病院の院長。女バンパイアに肉体を乗っ取られている。この肉体に女バンパイアの精神を封じ込めるために鎮静剤を打たれまくった上、カールセンにビンタされるわ、キスされるわ、最終的に女バンパイアに肉体を破壊されて絶命するわで、気の毒でしかなかった。本作でのカールセンとのキスシーンは、演じるスチュアートにとって映画で初めてのキスシーンだったらしい。

感想

よくできたSFホラー

本作は往年の怪奇映画に当時最先端のSF映画の文脈を組み合わせた内容であり、さらには吸血鬼ものという古典の新解釈までを織り込んだ複雑な企画なのですが、さすがはダン・オバノンだけあって、なかなかうまく構成されています。

手の込んだSF設定

人類の宇宙船がエイリアンシップを発見し、そこで回収したものが種族の存続を危うくするほどの脅威だったという基本的なプロットはオバノンの代表作『エイリアン』を踏襲したものなのですが、ここには定番ならではの安定感がありました。また、エイリアンシップの全長が240kmもあるというハッタリの効かせ方も良かったですね。

バカでかいエイリアンシップ

細かい点では、バンパイアを収納していたケースの素材がよく分からず、ほっとくとそのうち勝手に消滅したという点や、回収されたバンパイアが生きているのか死んでいるのかの議論が交わされるという点など、バンパイアと現実世界との接点の持たせ方に意外と手が込んでおり、荒唐無稽な話を観客にそれらしく感じさせるための一知恵みたいなのがきちんと入っている点が好印象でした。

「あれは一体何なんだ」という会議が入ったSF映画が個人的には好みなのですが、『シン・ゴジラ』の30年も前に会議の場面を入れてきた本作の先見性はもっと評価してあげていいと思います。

バンパイアの設定

この企画のキモの部分ですね。従来よりバンパイアの吸血は性行為のメタファーでしたが、それをより分かりやすい形で提示し、性的魅力を全開にした女バンパイアと、その魅力に勝てず精気を吸い取られていく男達という構図が置かれています。

彼らのテクノロジーの基本は生命エネルギーのようで、エイリアンシップの動力源採取のため地球にやってきたという設定。またバンパイアに精気を吸い取られた者は2時間以内に他人の生命エネルギーを摂取しないと死ぬのですが、バンパイアはそうして吸い取られた生命エネルギーをピンハネするというネズミ溝方式によって大規模なエネルギー収集活動を行います。

巧みなミステリー

バンパイアの生態解明と併せて、チャーチル号で何が起こったのかというミステリーが作品の重要な要素となっているのですが、ミステリーの散りばめ方もよくできています。

チャーチル号の船内は焼かれており、フライトレコーダーの記録も消えていたので何が起こったのかが分からないという掴みがまずあって、キーパーソンであるカールセンが中盤で再登場するという動きの付け方。またチャーチルの謎→バンパイアの生態解明→チャーチルの謎→バンパイアの生態解明と二つの構成要素を交互に展開していくので観客に与える情報量にも無理がなく、よく整理された構成だと感心しました。

後半の転調の凄さ

怪奇映画から都市崩壊スペクタクルへの転換

研究所を出た女バンパイアを追跡する中盤では舞台が精神病院に設定されたこともあって往年の怪奇映画のムード全開なのですが、そこから現代的な都市崩壊スペクタクルへと雪崩れ込む後半の転調には目を見張るものがありました。

精神病院のくだりはバンパイア達による陽動であり、対策チームの目が精神病院に向いているうちにロンドン市内はバンパイアの群れで溢れかえっていたという急展開。ここで一気に物語のアクセルが全開になるのですが、密室を舞台にした中盤とのコントラストの付け方が実に見事でした。またモブを利用したパニックとミニチュアを利用した大爆破が組み合わされるのですが、日本の特撮映画にありがちな、現場での撮影と特撮が完全に分離しているということもなく、ライブアクションとVFXを駆使して一つの流れを作り出すことにも成功しています。

ホラー映画とは思えないスペクタクル

もはやゾンビ映画

ここまでくるともはやバンパイア映画ではなくゾンビ映画のルックスに近くなってきます。前述の通りダン・オバノンがロメロに感化されていたということもあって、確信犯的に『ゾンビ』のブローアップ版をやろうとしていたのだろうと思います。

そのロメロにしたって1968年に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を製作する際にはリチャード・マシスンの『地球最後の男』からの影響を受けているし、『地球最後の男』は吸血ウィルスの流行によって主人公以外の全人類が吸血鬼となったという話でした。つまり、バンパイアもののアプローチとしてゾンビ映画に似るということは、ホラー映画史の流れの中では自然なことなのです。

バンパイアで~す。

まとめ

本作を語る時にはマチルダ・メイの話ばかりになってしまいがちなのですが、実はよく作り込んである作品なので、構成の美しさや考察の面白さにもぜひ注目していただきたいと思います。めちゃくちゃうまい人が集まって作った良作ですよ。

≪底抜け超大作≫
デューン/砂の惑星【良作】見応えが凄い
スペースバンパイア【良作】一流スタッフによる豪勢なB級ホラー
アビス【凡作】キャメロンでも失敗作を撮る
エイリアン3【駄作】絶望的につまらないシリーズ最低作
ラスト・アクション・ヒーロー【凡作】金と人材が裏目に出ている
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ウォーターワールド【凡作】見るに値する失敗作
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アルマゲドン【凡作】酷い内容だが力技で何とかなっている
エンド・オブ・デイズ【凡作】サタンが間抜けすぎる

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