【駄作】スピード2_驚くべき失速ぶり(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1997年 アメリカ)
キャラクター、アクション共に後退したガッカリな続編でした。またユーモアとスリルのバランスも崩れており、監督や俳優が笑いを取ろうとする度に観客の舌打ちが聞こえてきそうな内容となっています。クライマックスの豪勢な見せ場こそ楽しいのですが、そこに至るまでの時間は拷問のように長く感じられます。

©Twentieth Century Fox

あらすじ

ジャックと別れたアニーは新しい彼氏アレックスと付き合っており、二人は豪華客船でのカリブ海クルーズへと旅立つ。しかし客船には不当解雇されたことで会社に恨みを持つシステムエンジニア・ガイガーが乗り込んでおり、彼は船を大型タンカーに衝突させて大爆発させるつもりでいた。

作品概要

『ダイ・ハード3』の没脚本の流用

前作『スピード』(1994年)の公開直後から続編製作の話があり、一時期はある高度以下に下がれない飛行機という案もあったものの、最終的には船に決定しました。

この脚本は元々、ジェームズ・ハギンという人物が書いた”Troubleshooter”というオリジナル脚本を改変したもので、フォックスは『ダイ・ハード3』の原案として使うつもりでいました。

しかしワーナーが『沈黙の戦艦』(1992年)を製作中であることが判明し、どうしても印象が似通ってしまうシージャックネタはボツにされ、そのまま埋もれていました。

その後『スピード』の続編として流用することとし、ヤン・デン・ボンの前作『ツイスター』(1996年)の脚色を行ったジェフ・ナサンソンがこれを脚色して決定稿を仕上げました。

キアヌ・リーブスに断られる

主演には当然キアヌ・リーブスが考えられていたのですが、キアヌは『チェーン・リアクション』(1996年)に出演した直後でアクション大作に食傷気味だったこと、同時期に『ディアボロス/悪魔の扉』(1997年)のオファーも来ていて、アル・パチーノと共演できるそちらに出演したかったこと、自身も参加しているバンド・ドック・スターのツアーがあったことから、本作の出演を断りました。

代役としてはマシュー・マコノヒー、ジョン・ボン・ジョヴィ、クリスチャン・スレイターらが考えられていたのですが、最終的に『スリーパーズ』(1996年)のジェイソン・パトリックが選ばれました。キアヌと比べると随分とパッとしないルックスなのですが、ジュリア・ロバーツやジェニファー・ジェイソン・リーと次々交際するモテ男で、アメリカではセクシーな男性にも選ばれるような人物でした。

前作の5倍以上の製作費

前作の制作費3千万ドルに対し、本作の製作費は1億6千万ドル。

実に5倍以上もかかっているのですが、一体何にそれだけかかったのかというと、まずはサンドラ・ブロックのギャラに1150万ドル、クライマックスでシーボーンレジェンド号が港町に乗り上げる場面に2500万ドル(当時としては史上最もコストのかかった場面だった)、また実在の豪華客船シーボーンレジェンドを6週間に渡り借り切って撮影したことも製作費高騰の一因でした。

興行的には失敗した

1997年6月13日に公開され、前週に公開されていた『コン・エアー』(1997年)を抑えて初登場1位を獲得しました。しかし観客受けが悪く翌週には5位にまで急降下し、5週目にしてトップ10圏外へと弾き出されました。

なお本作の翌週に公開されて全米1位を獲ったのは『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997年)であり、2週連続で駄作を掴まされた当時の観客には同情の念を禁じえません。

北米でのトータルグロス4860万ドルに留まり、1億2124万ドルを稼いだ前作『スピード』(1994年)の半分も稼げませんでした。

苦戦は世界マーケットでも同様であり、全世界での最終的な興行成績は1億6450万ドルで、3億5044万ドルを稼いだ前作には遠く及びませんでした。

また1億6000万ドルという製作費を考えると大赤字であり、興行的には惨敗したと言えます。

感想

スピード感皆無の演出

本作の構成は恐らく意図的に前作をなぞっているのですが、同じ監督とは思えないほどにスピード感がなくなっており、一切ハラハラドキドキさせられませんでした。

このままいけばどんな問題が起こるのか、それを防ぐためにヒーロー・ヒロインは何をしなければならないのか、対応策を行うに当たっての障害物は何なのかという情報整理がまったくできていないままにアクションが始まるので、危機また危機の連続のはずなのに「あぁ、何かワタワタしてんなぁ」という冷めた目で眺めるに留まりました。

加えて全体的にユーモアを増やしているのですが、スリルとユーモアのバランスを完全に間違えていて、肝心な場面でコミカルなやりとりが発生することが観客にとってのストレスになっています。

例えば捕らえられたアニーとガイガーのやりとり。これは前作でアニーがハワードに捕らえられた場面の焼き直しなのですが、前作では完全に怯え切ったアニーが場面全体の緊張感を高めていたのに対して、本作では強気に言い返すアニーとガイガーとのやりとりがややコミカルに演出されています。そのことによって敵の存在感が軽くなり、引いては場面全体の緊張感が失われるに至っています。

ジェイソン・パトリックの華の無さ

キアヌ・リーブスという奇跡的なイケメン俳優を失い、その代わりが地味顔で生え際のやや寂しいジェイソン・パトリック。彼では完全に役不足でした。『プレデター』(1987年)の続編がダニー・グローバー主演だった時くらいにガッカリしました。

別にジェイソン・パトリックやダニー・グローバーが嫌いではないのですが、あまりに華のあった前任者と比較した時に、そのチョイスは無さすぎやしないかというガッカリ感ですね。

そして作品はアニーとアレックスの結婚問題が横軸となるのですが、そもそもアレックスという人物に関心を持てていないので、二人の関係が実にどうでもよく感じました。

『スピード』のジャック
©20th Century Fox
『スピード2』のアレックス
男の趣味の変化が凄い

クライマックスの大スペクタクルは見もの

そうは言っても1億6000万ドルがかけられた大作なので、金のかかった見せ場には相応の見応えがありました。

クライマックスではタンカーを避けた客船が港町に乗り上げ、建物を破壊しながら減速して止まるのですが、実に2500万ドルもの費用が投じられ、実物大の建物と船首が建造されただけに、その迫力は段違いでした。

尋常ではない破壊

続いてガイガーの乗った飛行機がタンカーに突っ込み、タンカーを巻き込んで大爆発を起こすのですが、先ほどの場面とは対照的にフルCGで作られたこの場面は当時としては驚異的な完成度であり、現在の目で見てもアラが見当たらない程によく出来ています。

客船がタンカーとの衝突を避けた結果として港町を破壊したのに、結局最後はタンカーが爆発するんかいという構成上の不備はあるものの、細かいことには目を瞑りたくなるほど見ごたえが両場面にはありました。

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