コラテラル・ダメージ【駄作】社会派と娯楽の隙間に挟まった映画(ネタバレあり・感想・解説)

(2002年 アメリカ)
シュワの演技力不足がはっきりと表れた映画でした。悲しみに暮れる消防士には決して見えないし、怒り狂った演技は滑稽に映りました。作品的にも、深遠なテーマを掲げかけはしたが結局下ろしたり、見せ場も盛り上がり切らない中途半端なものだったりと、社会派と娯楽の隙間に挟まったまま動けなくなったような映画でした。

©Warner Bros.

あらすじ

L.A.の消防士のゴーディー(アーノルド・シュワルツェネッガー)はカフェで妻子と待ち合わせをしていたが、そこに現れた白バイ警官のバイクが爆発し、ゴーディーは妻子を失った。事件直前にテロリストの顔を目撃したゴーディーは当局の捜査へ協力し、犯人はウルフと呼ばれるコロンビア解放軍のリーダーであることが判明するが、コロンビアとの関係性もあって米政府は真剣に捜査をする様子がない。

業を煮やしたゴーディーは単身コロンビアへと乗り込み、コロンビア解放軍の拠点を目指す。

スタッフ・キャスト

監督はアクションの名手アンドリュー・デイヴィス

『野獣捜査線』(1985年)、『刑事ニコ/法の死角』(1988年)、『沈黙の戦艦』(1992年)にてアクションスターを演出する際の卓越した手腕を披露し、また『ザ・パッケージ/暴かれた陰謀』(1989年)や『逃亡者』(1993年)などサスペンス・アクションも得意とするアンドリュー・デイヴィスが本作の監督。

シュワルツェネッガーとは『バトルランナー』(1987年)でコラボする予定だったのですが、製作費超過が原因で撮影初期段階で降板させられたという経緯があり、両者にとって念願の初コラボとなりました。

撮影は『ターミネーター2』のアダム・グリーンバーグ

1939年ポーランド出身。『ターミネーター』(1984年)、『ターミネーター2』(1991年)の撮影監督を務め、後者ではアカデミー撮影賞にノミネート。他にも『ジュニア』(1994年)、『イレイザー』(1996年)とシュワの現場に呼ばれることが多く、お気に入りだったと思われます。

共演者が地味に豪華

シュワの顔からのみがデカデカと映し出されたポスターとは裏腹に、共演者は意外と豪華で、かつあまりアクション大作に出ないような人が出ており、思いのほか真剣に作られた映画であることが伺えます。

  • イライアス・コティーズ:CIAエージェント・ピーターブラント役
  • クリフ・カーティス:テロリスト・ウルフ役
  • ジョン・レグイザモ:フェリックス・ラミレス役
  • ジョン・タトゥーロ:ショーン・アームストロング役

作品概要

911で公開延期になった作品

本作は2001年10月6日の全米公開が予定されていたのですが、その1か月前の9月11日に同時多発テロが起こり、テロ被害者を扱った本作はあまりにタイムリー過ぎるとのことで公開が延期されました。

序盤の爆弾テロは大幅に変更され、ハイジャック犯のくだりもカットなど大幅に手を入れられた状態で2002年2月4日に公開されたのですが、素人の消防士がたった一人でテロリストのアジトを探し当て、首謀者を退治するなどという話が風潮的に受け入れられるはずがなく、製作費8500万ドルに対して全米興行収入は4000万ドルに留まりました。

なお、本作が公開されるはずだった2001年10月にワーナーは『トレーニング・デイ』(2001年)を公開し、こちらは製作費4500万ドルの中規模作品ながら興行成績が1億ドル突破、デンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞受賞と、本作とは対照的な大成功を収めました。

感想

シュワルツェネッガーの演技力が相当厳しい

  • 幸せな家庭を持つ父親が、
  • 妻子を失って悲しみに暮れた後に、
  • 復讐の鬼と化して敵地に乗り込む。

本作の主人公ゴーディーを演じるに当たっては豊かな感情表現が必要だったのですが、シュワルツェネッガーでは力不足でした。

幸せな家庭を満喫する場面は不自然だし、悲しみに暮れる場面からは痛々しさが伝わってきません。「目的のための仕方のない犠牲(=コラテラル・ダメージ)だった」と心無いことを言うメディアの元に乗り込み、「目的のための仕方のない犠牲だと?じゃあこれも目的のための犠牲だな!これもだな!」と言ってオフィスを破壊する様は、ちょっと滑稽に映りました。

ここではたと気付いたのですが、シュワルツェネッガーが演じる役にバックグラウンドというものがあると、たいていうまくいきません。『ゴリラ』(1986年)のレビューでも書いたのですが、作り込まれた設定があるとシュワの演技力のなさが浮き彫りになってしまいます。他方で、殺人マシーンとか元特殊部隊とかソ連の暴力刑事のような肩書だけを与えておくと、不思議とうまく回ります。

「報復の連鎖」というテーマが尻切れ

なんやかんやがありつつもゴーディーはテロリスト・ウルフの元に辿り着くのですが、そこで知ったウルフの正体は意外なものでした。彼は血も涙もない殺人者でも、政治的主張に傾倒した狂信者でもなく、米軍による攻撃の二次被害で息子を失った元教師、つまりゴーディーと同じ背景を持つ親だったのです。

ウルフはウルフでゴーディーに対して感じるものがあったらしく、足を引っ張る者は即処刑のウルフが、ゴーディーについては殺さず監禁という措置をとります。

ジャングルの中で敵を追いかけていると、そこに居たのは合わせ鏡に移った自分だった。「報復の連鎖」という深遠なテーマが姿を現わし、物語は意外な方向へと向かい始めて「おっ」と思ったのですが、すかさずCIAによる掃討作戦が入ってドラマが中断されます。

その後もこのテーマが掘り返されることはなく、普通に勧善懲悪のクライマックスへと突入していって一件落着。興味深いテーマが実に中途半端な形で終わってしまって残念でした。

ただし、これについては作品の落ち度とも言い切れない部分もあります。

と言うのも、米国内の社会風潮的に「報復の連鎖」が取り沙汰されるようになったのはイラク戦争とアフガン戦争が泥沼化し始めた2005年頃からであり、イラク戦争も始まっていない2002年時点では「NYを攻撃したテロリストに徹底した反撃を」という主張一色でした。

そんな社会風潮ですから、仮に元の作品で報復の連鎖というテーマが鮮明に打ち出されていたとしても、ワーナーはテロリストに対して同情的な部分をカットせざるを得なかったはずです。

見せ場が質・量ともに不満足

アンドリュー・デイヴィスとアーノルド・シュワルツェネッガーのコラボとなれば、盆と正月がいっぺんに来たようなアクション大作を期待するものです。しかし、完成した作品には目を見張るような見せ場がなく、しかも見せ場の量も少なく、アクション映画として完全に期待外れでした。

主人公は消防士なので銃を使わないとか、シュワルツェネッガー主演作にそんな新機軸を求める人が世界中のどこにいるんでしょうか。「妻子を殺された元特殊部隊員がテロリストに銃弾の雨を降らせる!」でいいのです。

本作の委縮しまくったアクションを見ると、一つ一つが小さくなったうえに、数も減ったカントリーマアムのファミリーパックを開けた時のような切ない気持ちになりました。

≪シュワルツェネッガー関連作品≫
コナン・ザ・グレート【凡作】雰囲気は良いが面白くはない
コマンドー【傑作】人間の心を持ったパワフルな男
ゴリラ【駄作】ノワールと爆破の相性の悪さ
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ラスト・アクション・ヒーロー【凡作】金と人材が裏目に出ている
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イレイザー【凡作】見せ場の連続なのに手に汗握らない
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