(2014年 フランス・アメリカ)
リーアム・ニーソンが家族のために殺戮の花を咲かせる名物シリーズの最終章。本国アメリカが舞台になったためかキル数は減ったが、それを補って余りあるほどスケールが拡大しており、これはこれでイケるアクション映画となっている。
感想
元CIA工作員ブライアン・ミルズ(リーアム・ニーソン)の家族は旅行する先々で命を狙われてきたが(いい加減、海外旅行をやめればいいのに・・・)、今回ついに本国アメリカでトラブルに巻き込まれる。
ブライアンの元妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)は、現夫スチュアート(ダグレイ・スコット)との関係がぎくしゃくしてきており、元夫ブライアンにその相談を持ち掛ける。
「朝食を一緒にとろう」と約束したまさにその日に、ブライアン宅にて遺体で発見されるレノーア。そこにタイミングよく駆け付ける警官隊。
レノーア殺害の第一容疑者となったブライアンはマッハで逃亡し、事の真相を追及するというのが、ざっくりとしたあらすじ。
このあらすじを見るに、妻を殺した真犯人への復讐劇が根底にあるのだろうとは思うけど、今回のブライアンはさほど感情を表に出さないので、家族を傷つけられてキレる殺人マシーンという要素はかなり薄め。
むしろ逃亡劇と謎解き要素に重きが置かれているが、これは本シリーズのアイデンティティとは違うような気がする。
そのほか、ブライアンを追ってはいるが全体にきな臭いものを感じ始めるドッツラー警部(フォレスト・ウィテカー)に、学生の身で妊娠してしまった娘キム(マギー・グレイス)など、いろいろと構成要素がブチ込まれており、その結果、上映時間はシリーズ最長の109分となっている。
ただしこれらのサブプロットは全然利いておらず、無駄にドラマを薄めただけだったので、もっとシンプルでも良かった。
そして映画を見終わった後に分かったんだけど、レノーアの現夫スチュアートは、第一作に出てきた再婚相手と同一人物という設定らしい。
第一作では、金持ちという意外にこれといった長所の見当たらないハゲ親父だったけど(演じるのはアクション映画の脇役としてよく見かけるザンダー・バークレイ)、本作では『ミッション:インポッシブル2』(2000年)のダグレイ・スコットに交代し、センター分けのイケオジに変貌。
あまりの変化に鑑賞中には別人だとばかり思い込み、「レノーアよ、何度目の結婚だよ」と半ば呆れて見ていたが、まさか同一人物だったとは。
…とまぁ映画としてのまとまりは悪く、全米公開直後にはソッコーで批評家たちからの酷評を受けたことにも納得はいくが、アクション映画として見れば、これがかなりイケる。
ブライアンが警官隊に追われる序盤より、見せ場のつるべ打ち状態。
舞台が外国から母国アメリカに移ったためか主人公がバシバシと殺人技を決めるわけにもいかなくなり、その空白を補うべく銃弾と火薬がかなり多め。ド派手なカーチェイスや大爆破が連続して目を楽しませてくれる。
クライマックスでは、今にも飛び立たんとする小型飛行機を相手に、ポルシェでタックルをかますブライアン。
中には身重の娘キムが乗っているんだが、必死になったブライアンには妊婦さんへの配慮など皆無だ。
こうしたロジック無視の堂々たるアクションを見せられると、B級アクション映画好きの血が騒いでくる。
万人にお勧めできる映画ではないが、アクション映画への造詣の深い方ならば、きっとわかってもらえるであろう魅力を持った憎めない作品である。