【凡作】F.L.E.D./フレッド_逃亡者×48時間(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1996年 アメリカ)
豪華キャスト出演の劇場未公開・未ディスク化作品。そんな見る機会の限られた作品がアマプラに上がっていたので鑑賞してみたけど、90年代アクションとしては類型的すぎる内容に、あまり高くない演出力ゆえに、パッとしない仕上がりとなっていた。

感想

映画好きを自覚し始めた中学生頃には全米興行収入を紹介する番組を熱心に見ていたんだけど、その際に初登場6位だった本作を見かけており、なぜだか妙に記憶に残っている。

ただし全米でのトータルグロスが1700万ドルと低調に終わったことから日本での劇場公開が見送られ、ビデオこそ出たもののDVD以降のディスクメディアの国内リリースはなく、引きの強いキャスティングでもないので地上波放送がなされるでもなく、結局未見の状態が続いてきた。

そんな浅い思い出のある作品だったが、つい最近アマプラに上がっているのを発見して、およそ30年越しの鑑賞となった。

国内ではビデオのみで止まっている作品なので画質・音質には特に期待していなかったのだが、そこはさすがはアマプラ、フルHD画質で何だか得した気分になった。

古い映画なので多少粗い部分も散見されるのは致し方ないが、前半にて空撮で収められた大自然などはなかなかの高画質だった。

本作の撮影監督は『コマンドー』(1985年)『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)など、数多くのアクション大作を手掛けてきたマシュー・F・レオネッティなので、画面作りは申し分ない。

必死の逃走劇、爆破、カーアクション、銃撃戦などを実に無難に収めていき、その手腕はもはや職人技の域に達している。

受刑囚のパイパー(ローレンス・フィッシュバーン)とドッジ(スティーヴン・ボールドウィン)は、野外労働中の喧嘩に端を発したトラブルで他の囚人に撃たれかけ、手錠に繋がれたまま逃亡する。

うちドッジはハッキングで服役中だったが、以前に彼が入手したデータの中に司法省から訴えられている大物マフィアの有力証拠が含まれていたものだから、危険な追跡者に狙われる羽目になるというのが、ざっくりとしたあらすじ。

なお「フレッド」というタイトルは”Flee”の過去形・過去分詞形で、フレッドという人が出てくるわけではない。

前半は二人の逃走劇、後半は追っ手を交わしながらの陰謀劇となり、その構成はハリソン・フォード主演の大ヒット作『逃亡者』(1993年)によく似ている。

そして、当初はソリの合わない2名の主人公が、次第に息の合ったバディに変わっていくというドラマは80~90年代のアクション映画の王道であり、異人種による組み合わせであることや、コメディ要素の強さを考えると、『48時間』(1982年)がもっとも近いと言える。

この通り、売れ線2本のハイブリッドでなかなかマーケティングの行き届いた企画だったと言えるのだけど、完成した作品は爆発力に欠ける。「これは!」と思う場面や展開がないのだ。

監督はウェズリー・スナイプス主演のゆるゆるスカイアクション『パッセンジャー57』(1992年)のケヴィン・フックス。彼の凡庸さが作品の足を引っ張っているように感じる。

本作はキャラクター劇の要素が強い。

本人も無自覚の内に危険に巻き込まれていくドッジがボケ役ならば、しっかり者で腕っぷしも強いパイパーがツッコミ役という組み合わせだ。

彼らを追うギブソン刑事(ウィル・パットン)はおちゃらけてはいるのだけど、大事な場面では鋭い観察眼や推理力を披露するカッコマンだし、中盤から登場するラテン系女性コーラ(サルマ・ハエック)は底抜けに明るく楽しい性格だ。

脚本レベルでは、キャラクター達の個性はそれなりに作りこまれていたと思うのだが、いざ動かしてみると観客を夢中にさせるほど強烈な者はいないし、役者間での化学反応も起こっていない。

演じているのはいずれも有名俳優なのにこの体たらくなのだから、監督の演出力不足に原因があるのだろう。

また謎解き部分も面白みに欠ける。

主人公2人は司法機関とマフィアの両方に追いかけられる羽目となるし、その過程で思いがけない事実も判明するのだけど、どうにもこれが盛り上がらない。

ネタばらしのタイミングがあまりうまくないし、空砲を使ったトリックなんかは『ダイ・ハード2』(1990年)で見たところで、尖ったアイデアが何一つなかったことが痛恨だった。

短い上映時間なので見ていて退屈することはないが、かと言って「見てよかった」とも思えない凡作。

スポンサーリンク
公認会計士のB級洋画劇場