リーサル・ウェポン3【凡作】リーサル・ウェポンだと思わなければ楽しめる(ネタバレあり・感想・解説)

(1992年 アメリカ)
第一作の荒んだ空気に惹かれた私としては、ここまでアットホームになったリッグスには落胆しかありませんでした。ただしアクションを撮ることがうまい人材が集まった作品なので、アクション映画としての見応えはあります。

©Warner Bros.

あらすじ

リッグスとマータフは偶然遭遇した強盗を逮捕するが、その強盗は防弾ベストをも貫く特殊貫甲弾コップキラーを所持していた。コップキラーの出元を探るリッグスとマータフは、元刑事のジャック・トラヴィスという男に辿り着く。

スタッフ

シェーン・ブラック抜きの脚本家体制

『リーサル・ウェポン』(1987年)の生みの親は脚本家のシェーン・ブラックでしたが、『リーサル・ウェポン2/炎の約束』(1989年)の脚本がワーナー、ジョエル・シルバー、リチャード・ドナーによって原型を留めないまでに改変され、プロダクションの過程と完成した作品の両方に不満のあったブラックは、本作より不参加となりました。

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その代役が『1』『2』にもリライトで参加してきたジェフリー・ボームであり、加えてB級アクション映画界の職人脚本家ロバート・マーク・ケイメンも参加し、いよいよ本作は『リーサル・ウェポン』が本来持つ良さの失われた映画となりました。なお、レイア姫ことキャリー・フィッシャーもスクリプトドクターとして参加しています。

  • ジェフリー・ボーム:1946年生まれ。スティーヴン・キング原作の『デッドゾーン』(1983年)の脚色で評価され、ノークレジットで『リーサル・ウェポン』(1987年)のリライトを行い、『リーサル・ウェポン2/炎の約束』(1989年)のリライトでクレジットを獲得。他にスピルバーグ製作の『インナースペース』(1987年)、リチャード・ドナー製作の『ロスト・ボーイ』(1987年)、スピルバーグ監督の『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)の脚本を手掛けており、手堅い仕事で使い勝手の良い脚本家だったと思われます。
  • ロバート・マーク・ケイメン:1947年生まれ。若き日のショーン・ペンとトム・クルーズが共演した青春軍事アクション『タップス』(1981年)の脚本を経て、『ベスト・キッド』(1984年)が大ヒット。『ベスト・キッド2』(1986年)、『ベスト・キッド3/最後の挑戦』(1989年)、テレビシリーズ版『ベスト・キッド』(1989年)としばらく『ベスト・キッド』関係の仕事をした後に、本作に雇われました。
    本作後のキャリアは、『フィフス・エレメント』(1997年)のリライトをした縁でリュック・ベッソンのお抱え脚本家となり、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』(2001年)、『トランスポーター』シリーズ、『96時間』シリーズ、『コロンビアーナ』(2011年)など、2019年現在に至るまで低偏差値のアクション映画を量産しています。最新作はマイク・バニングシリーズ第3弾”Angel Has Fallen”(2019年)。B級アクション一筋で40年近いキャリアを築いていることは尊敬に値します。

撮影はヤン・デ・ボン

『1』『2』の撮影を手掛けたスティーブン・ゴールドブラットは本作より降板し、当時ハリウッド随一の撮影監督だったヤン・デ・ボンが就任しています。

1943年オランダ生まれ。オランダ時代にはポール・バーホーベン監督作品の常連で、トム・クルーズ主演の青春映画『栄光の彼方に』(1983年)辺りからハリウッド映画も手掛けるようになりました。1980年代後半から1990年代前半にかけての仕事は『ダイ・ハード』(1988年)、『ブラック・レイン』(1989年)、『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年)、『氷の微笑』(1992年)という物凄い状態となり、その勢いで、レニー・ハーリンに監督を断られた『スピード』(1994年)のオファーを受けて監督デビュー。こちらも奇跡的な出来で注目の監督となり、続く『ツイスター』(1996年)の大ヒットでハリウッドトップクラスの監督になったものの、『スピード2』(1997年)での失速以降はロクな映画を撮っていません。

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なお、2018年に公開された『MEG ザ・モンスター』は、2005年頃にヤン・デ・ボン監督で進められていた企画でした。

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登場人物

  • マーティン・リッグス(メル・ギブソン):家庭的な雰囲気にすっかり馴染んだ元リーサル・ウェポン。逮捕した強盗が防弾ベストをも貫くコップキラーと呼ばれる弾丸を所持しており、こんなものが裏社会で流通すれば街の警察官達が大変な危険にさらされるということで、コップキラーの出元を捜査している。
  • ロジャー・マータフ(ダニー・グローバー):退職を8日後に控えており、残りの日々は平穏に過ぎ去って欲しいと願っているが、リッグスが起したトラブルのためにパトロール警官に降格させられたり、それほど乗り気ではないコップキラーの捜査に駆り出されたりと、今回も散々な目に遭わされる。中盤にてギャングの少年を正当防衛とは言え撃ち殺してしまい、その少年が息子の友人だったことから、少年に武器を持たせたギャングへの怒りを燃やす。
  • ローナ・コール(レネ・ルッソ):内務捜査部の女刑事。警察が押収した武器がブラックマーケットで流通している件につき、警察内部に手引きをしている者がいると見て内部捜査を行っている。女性ながら武闘派で格闘術に精通しており、体には過去に受けた銃創の痕もある。リチャード・ドナーがこの役を最初にオファーしたのはウィノナ・ライダーだったのですが、『ドラキュラ』(1992年)への出演を優先して本作は断られました。撮影当時20歳のウィノナ・ライダーと35歳のメル・ギブソンではさすがに見た目が釣り合わないので、レネ・ルッソで正解でした。
  • レオ・ゲッツ(ジョー・ペシ):麻薬組織のマネーロンダリング係として前作で初登場したが、本作では持ち前の人脈と情報収集能力を駆使して街の便利屋的に活動しており、マータフ邸の売却も担当している。ジャック・トラヴィスとも面識があったことから、トラヴィスを追っているリッグス、マータフ、ローナに協力した。初期稿ではLAからNYへ移ったという設定となっており、本編には登場しない予定でした。
  • ジャック・トラヴィス(スチュアート・ウィルソン):元警官だが生粋の犯罪者ですらドン引きするほどの凶暴な性格の持ち主。現在は街のギャングのトップに立っており、犯罪で稼いだ金を元手にして前科者ばかりが勤務する合法的な建設会社も経営している。リッグスが追っているコップキラーの流通と、ローナが追っている押収品の流出は、共にトラヴィスによるもの。
    トラヴィス役はマイケル・キートン、ジェームズ・カーン、ジャック・ニコルソン、ジーン・ハックマン、アル・パチーノらにオファーしたもののことごとく断られ、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身のスチュアート・ウィルソンに落ち着いたという経緯があります。

感想

もはやリーサル・ウェポンではない

奥さんを亡くして自暴自棄になった殺人マシーンこそがリーサル・ウェポンだったのですが、この二つの要素が本作からは完全に消え失せています。リッグスが奥さんを亡くしたことやベトナム帰りであることには一言も触れられなくなりました。性格は底抜けに明るくなり、もはや職場のムードメーカー。同僚から気味悪がられて麻薬課を追い出された第一作の姿は影もありません。加えて殺人スキルも失われ、ただの頑張り屋さんとなっています。

もっとも違和感を覚えたのは冒頭の爆弾解体場面であり、爆弾処理班が向かっている最中だと言うのにリッグスは爆弾の仕掛けられたビルに独断で入っていき、知識もないのに爆弾解体に挑み、失敗して爆発させてしまいます。爆弾処理というプロの仕事を軽く見た姿勢には、自身も格闘や狙撃のプロであることから来る敬意というものが欠けており、リッグスがアマチュアリズムの人間になってしまったことにはガッカリでした。

もはや捜査をしていない

第一作では点と点を線で結ぶ捜査が比較的しっかりと描かれていたのですが、本作ではそうした丁寧さはなくなっています。リッグスとマータフがパトロールをしていると偶然にも強盗現場に出くわすし、レオ・ゲッツは偶然にもお尋ね者のジャック・トラヴィスと知り合いで、レオがトラヴィスに年間シートを融通したというアイスホッケーの試合に行くと偶然にもそこにトラヴィスがいます。マータフがリッグスを馴染みのハンバーガー屋に連れて行くと、偶然にも店の真ん前でギャング同士の違法な取引が始まり、そのギャングは偶然にもマータフの息子の友達で、トラヴィスから渡された銃を持っていました。ここまで偶然性に引っ張られた物語は、もはや刑事ものではありません。

加えて捜査方法も手荒なものとなっており、本部への報告や捜査令状の取得といった手続きはすっ飛ばされ、リッグスが怪しいと睨んだ場所には躊躇せず押し入っていきます。さすがに雑すぎるでしょ。

B級アクションとしては楽しめる

そんなわけで『リーサル・ウェポン』として見ると全然ダメだったのですが、本作より参加した脚本家のロバート・マーク・ケイメンと撮影監督のヤン・デ・ボンのスキルが唸りまくっており、『リーサル・ウェポン』ではない別物として見ると、これがなかなか楽しいB級映画となっています。

見せ場のバリエーションはシリーズ随一。ビルの大爆破に始まり、銃撃戦、カーチェイス、格闘と見せ場はフルコース状態で、よくぞこれだけ詰め込んだものだと脚本家の構成力には感心しました。白眉は中盤のカーチェイスであり、舞台が地下鉄からハイウェイへと展開していくのですが、閉鎖空間から開放空間へのシームレスな移行がなかなか斬新で、測ったようにエスカレートしていく様には興奮させられました。

このカーチェイスではアクション映画の巨匠ヤン・デ・ボンの手腕も光っています。『1』『2』を撮ったスティーブン・ゴールドブラットは空撮などで素晴らしいスキルを見せる一方、カーチェイスにおけるスピード感の演出には失敗していました。そこに来て本作のヤン・デ・ボンは2年後に『スピード』(1994年)を撮る人というだけあって、カーチェイスの撮影では抜群の手腕を披露しています。ヤン・デ・ボンの力により、見せ場のレベルは前作よりもツーランクほど上のものになっています。

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