【駄作】リーサル・ウェポン4_人種差別的すぎて引く(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1998年 アメリカ)
もはやリッグスは最終兵器ではなくなっており、動きのキレもキャラとしてのトゲも完全に失っています。捜査らしい捜査もせず思いついた場所に押しかけているだけなので捜査過程にも面白みがなく、このシリーズの良さは完全に失われました。

©Warner Bros.

あらすじ

釣りに出掛けたリッグスとマータフは、釣り船の近くを通った貨物船から銃声が聞こえたことから船に乗り込み、チャイニーズマフィアとの銃撃戦となる。座礁した船からは大勢の中国人密航者が発見されたが、その中にいたホン一家はマータフ家に匿われることとなった。しかし、チャイニーズマフィアはある目的でホンを狙っていた。

作品解説

突貫作業で作られた作品

『リーサル・ウェポン3』の続編企画は何度も上がっており、1995年には『2』『3』の脚本家ジェフリー・ボームがネオナチによるテロを題材にした脚本を書いたのですが、製作には至りませんでした。

なお、この企画で考えられていた見せ場の一つは、後にジョエル・シルヴァーが製作する『DENGEKI 電撃』(2001年)の副大統領襲撃場面として復活しました。

状況が大きく変わったのが1997年下旬であり、1998年のサマーシーズンのラインナップに大作が一本もないことに気付いたワーナーが、急遽製作を決定したのでした。なんでそれほど切羽詰めるまで誰も気付かなかったんだろうかとも思いますが、とにかくそういう事情があったのです。

1998年7月と設定された公開日に対して、撮影開始が1998年1月。もうギリギリのスケジュールだったので、脚本が完成しないまま撮影に入りました。

すべての撮影が終了したのが公開33日前の1998年6月のことであり、編集のフランク・J・ユリオステ(『ロボコップ』『ダイ・ハード』)はこのめちゃくちゃな締め切りに間に合わせるために、不慣れなデジタル編集で仕上げました。

全米No.1ヒット

1998年7月10日に全米公開され、前週の1位だった『アルマゲドン』(1998年)を抑えて全米No.1ヒットを記録。このシリーズの強さを証明しました。

翌週は『マスク・オブ・ゾロ』(1998年)に敗れて2位だったもののそれでも金額的には僅差であり、全米トータルグロスは1億3044万ドルに及びました。

世界マーケットでも同じく好調で、全世界トータルグロスは2億8544万ドル。年間興行成績では第10位という大ヒットでした。

1998年の年明けから撮り始めた突貫工事の映画にしては期待以上の結果を残したと言えます。

感想

もはやリーサル・ウェポンではない

今回のテーマは寄る年波。『1』の時点では若いリーサル・ウェポン(最終兵器)・リッグスと、年齢を実感し始めた中年のマイホーム刑事マータフという対局のコンビが売りだったのですが、本作ではリッグスまでが老化を口にし始めます。

主人公の二人ともが「歳いった」「体が動かなくなった」とぼやいているアクション映画なんて前代未聞だし、ならば新キャラであるバターズ辺りを動けるキャラとすればいいものをそういった手立ても打たれていないので、ただただ緩みきった映画となっています。

そういえば、バターズのキャスティングにはウィル・スミスも考えられていたようで、それが実現していればスミスがアクションパートの担い手になった可能性もあったのですが、結局バターズはコメディリリーフという位置づけにされてコメディアンのクリス・ロックが起用されました。

もはや捜査をしていない

探偵ものの大ファンであるシェーン・ブラックが脚本を書いていた頃にはリッグスとマータフはちゃんと捜査らしい捜査をしていたのですが、ブラックが完全に離れた『リーサル・ウェポン3』(1992年)よりリッグスは思いついた場所に押し込み捜査をかけるという荒っぽい手法に切り替わり、本作ではその傾向はより顕著になりました。

何の証拠もないのにベニー・チャンのレストランに押しかけて「お前、怪しいな」と言って絡んだり、ベニー・チャンが通院する歯医者に押し入って笑気ガスを使って自白させたりと、おおよそ警察のすることとは思えない手法で進めていきます。さすがに乱暴すぎて引きました。

リッグスの中国人差別が目に余る

ここで気になったのが、リッグスが中国人に対してえらく差別的だったということです。”R”と”L”を正しく発音できない東洋人が話すと”fried rice”(チャーハン)が”fly and rice”(ハエとコメ)に聞こえるというネタでベニーをおちょくる様は、ちょっと笑えなかったです。

続けて、ベニーのレストランのマジックミラーを割り、営業中のレストランでスプリンクラーを作動させて客と店を水浸しにした挙句、「どうせお前らは悪人なんだから警察には通報できないだろ」と言って去るくだりは、どちらが悪人だか分からなくなっていました。やりすぎです。

また、ラストバトルでリッグスに兄を殺されて悲しみに暮れるクーに対し、リッグスとマータフが「あいつ怒ってんのかな」「ヤバそうだし退散するか」なんてことを言い合っている辺りも不快でした。いくら相手が犯罪者とは言え、肉親を殺してしまったことに対して悪いと思ったり、同情したりという気分は起こらないのかなと。中国人犯罪者を同じ人間として見ていないかのような二人の態度は、ちょっとどうかと思いました。

南アフリカの外交官を悪役にした『リーサル・ウェポン2』(1989年)でも感じたのですが、悪く言っても構わないと決めた国に対して物凄く失礼な態度を取る傾向がこのシリーズにはあります。

生かせていないサブプロット多数

一応は散りばめておいたが、全体から見てまったくの不要だったサブプロットが余りに多すぎます。これら余計な枝葉のために作品全体が間延びしており、127分という上映時間が間延びして感じられました。無駄を省いて100分程度にまとめていれば、まだ見られた作品になったと思うのですが。

  • ローナの妊娠
  • マータフと娘婿バターズの関係
  • リッグスとマータフの警部昇進
  • マータフの賄賂疑惑
  • マータフと不法移民ホン一家の交流
  • クー兄弟の物語

ジェット・リーの超絶アクションのみ良い

そんなわけで肯定できる要素がまったくないほど酷い出来だったのですが、本作がハリウッドデビューとなるジェット・リーが出ている場面のみ輝いていました。

動きが余りに早すぎてカメラのシャッタースピードが追い付かず、撮影監督からゆっくり動けと指示されたなど、本作でのジェット・リーはもはや伝説です。当初のシナリオではリッグスとクーの一騎打ちがラストになるはずだったのですが、どう見てもリッグスが勝てる相手ではないことからマータフも参戦させて、2対1の変則マッチに変更されたという逸話もあるほどです。

銃を突き付けられれば一瞬で解体し、フォークリフトが相手でも飛び掛かっていく。本作におけるリーサル・ウェポン(最終兵器)とはリッグスではなくクーを指していると言えます。

リーサル・ウェポン5が作られるらしい

批評家からの酷評も何のその、本作はワーナーの期待通りに稼いで1998年のサマーシーズンを支え、公開直後より続編の企画が上がっていたのですが、実現しないままに22年が経過しました。

その後メル・ギブソンはスターではなくなったし、監督のリチャード・ドナーは90歳近いお歳だし、もう続編はありえないだろうなと思っていた2020年1月29日に、突如『リーサル・ウェポン5』製作開始のニュースが流れました。これには驚きましたね。

メル・ギブソンは64歳、ダニー・グローバーは73歳でどうやってバディアクションをやるんだって感じですが、往年のバディもののお久しぶりの続編『バッドボーイズ・フォーライフ』(2020年)の大ヒットや、出演者がおじいさんばかりだった『アイリッシュマン』(2019年)の高評価が企画実現を後押ししたものと思われます。

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