DENGEKI 電撃【駄作】セガールをワイヤーで吊っちゃダメ(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(2001年 アメリカ)
セガールの良さを完全に殺したダメ映画。雑魚を千切っては投げるセガール無双はないし、セガールをワイヤーで吊って本物志向の彼のアクションを台無しにしているし、危機に陥るはずのないセガールで誰が敵だか分からない本格ミステリーをやったって盛り上がるわけがないのに、それをやっちゃうし、試みのすべてが裏目に出ていました。

©Warner Bros.

あらすじ

デトロイト市警21分署のボイド刑事(スティーブン・セガール)は、日頃からの過激な行動の上に、テロリストから副大統領を救った際の乱暴な行動が問題視され、治安の悪い15分署へと異動となった。ある夜、麻薬取引と思われる光景を偶然目撃したボイドは現場に踏み込むが、そこは麻薬の売人ラトレル・ウォーカー(DMX)を逮捕するためのモンティーニ刑事(デイビッド・バディム)のおとり捜査の現場だった。捜査を台無しにしたボイドは交通整理に格下げにされるが、きな臭いものを感じたボイドは独自捜査を開始する。

作品概要

ついに実現したシルバー×セガール

アクション映画の名プロデューサー・ジョエル・シルバーと、有無を言わせぬアクションスター・セガールのコンビがついに実現した作品。

両者の歴史は意外と古く、ジョエル・シルバー製作の『プレデター2』(1990年)にシュワルツェネッガーが出演しないと決めた時に、フォックスが代役候補として挙げていたのが1988年にデビューしたばかりのスティーブン・セガールでした。しかしスティーヴン・ホプキンスがセガール案に難色を示したためにセガールvsプレデターという夢のカードは実現せず、『リーサル・ウェポン』(1987年)のマータフ主演で落ち着きました。

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次に、『デモリションマン』(1994年)の主演候補としてセガールの名前が上がりました。完成作品ではスタローンが演じたジョン・スパルタンをセガールで、ウェズリー・スナイプスが演じたサイモン・フェニックスをジャン=クロード・ヴァン・ダムでというキャスティング案だったのですが、ヴァンダム側から悪役はちょっとという返答があり、ならばと役柄をひっくり返すと今度はセガールから断られ、セガールvsヴァンダムという夢のカードは実現しませんでした。

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ようやくセガールがジョエル・シルバーの作品に出演したのが『エグゼクティブ・デシジョン』(1996年)でしたが、まさかのメインミッション開始直後に散るという噛ませ犬役で観客の度肝を抜きました。

『エグゼクティブ・デシジョン』のドンデンは映画としては面白かったのですが、ジョエル・シルバーの準備した舞台でセガールが暴れるというアクション映画ファンの夢はまたしても叶わなかったのでした。

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その5年後、ついに両者のコラボが実現したのが本作『DENGEKI 電撃』(2001年)なのでした。当時のセガールは窮地に陥っていました。興行成績の低下著しく、1988年のデビュー以来パートナー関係にあったワーナーとの蜜月関係は終了し、前作『沈黙の陰謀』(1998年)は独自に資金調達して製作しなければなりませんでした。

加えて、『沈黙の陰謀』(1998年)は初のビデオスルーとなった上に、デビュー作以来のパートナー関係にあったプロデューサーのジュリアス・R・ナッソーとも険悪になっており、立て直すためにはシルバーほどの強力な後ろ盾が必要だったのです。

これに対しシルバーは、ポニーテールを切ること、ダイエットをすることなどをセガールに要求し、あれほどわがままだったセガールがシルバーの要求に従う形で本作は実現したのでした。

ヒップ・ホップ・カンフー第二弾

SFとカンフーを組み合わせた『マトリックス』(1999年)の製作で目覚めたのか、本作製作当時のジョエル・シルバーはマーシャルアーツにこだわっていました。

翌年には『リーサル・ウェポン4』(1998年)でハリウッドデビューさせていたジェット・リー主演で『ロミオ・マスト・ダイ』(2000年)を製作し、中規模予算ながら堅実に稼ぎました。『ロミオ~』はマーシャルアーツ×ワイヤーアクション×ヒップホップという異色の組み合わせで製作された映画であり、このテンプレートを元に2本の映画が製作されました。

本作『DENGEKI 電撃』(2001年)と、再びジェット・リーが主演した『ブラック・ダイヤモンド』(2003年)です。『ロミオ・マスト・ダイ』(2000年)とあわせた3作品は、アンジェイ・ヴァーコウィアックが監督し、DMXとアンソニー・アンダーソンが出演という共通点を持っており、物語に直接的な繋がりはないのですが、ヒップ・ホップ・カンフー三部作と呼ばれることもあります。

登場人物

デトロイト15分署

  • オーリン・ボイド(スティーブン・セガール):もとはデトロイト21分署の刑事だったが、テロリストから副大統領を救った際の活躍があまりに乱暴すぎたため、懲罰的に治安の悪い15分署へ異動させられた。
  • ジョージ・クラーク(イザイア・ワシントン):15分署でのボイドの相棒。21分署時代のボイドの活躍を報道から知っており、ボイドを尊敬している。
  • ストラット(マイケル・ジェイ・ホワイト):巡査部長。仲間内での信頼が厚い。
  • モンティーニ(デイビッド・バディム):ラトレルの組織へのおとり捜査をしている刑事。
  • マルケイヒー署長(ジル・ヘネシー):元内部調査部で、現15分署の女性署長。

ストリート

  • ラトレル・ウォーカー(DMX):麻薬の売人としてモンティーニに接触している。
  • T.K(アンソニー・アンダーソン):ラトレルと常に行動を共にしているクラブ経営者。

感想

話がわかりづらい上に興味を持てない

本作は元警察官のジョン・ウェスタマンによる小説を原作にしており、本来はデヴィッド・エアーが監督するような骨太な汚職警官ものだったと思われます。

途中から敵味方の構図が崩れ始め、誰を信用できるのかが分からないサスペンスに突入するのですが、セガール主演のアクション映画としては少々煩雑で分かりづらい話となっています。

語り口が下手くそで、謎解きが進行する時にはアクションがピタっと止まって「実は〇〇は××でした!」なんてことがダラダラと長いセリフのみで説明されるし、アクションをしている時には話がピタっと止まっているしで、物語はただただアクションを遮るものとして機能しています。これは失敗でした。

加えて、ミステリー要素が強い割には細かい部分が雑。副大統領がテロリストに襲撃される冒頭を含め、セガール扮するボイドがたまたま犯罪現場に居合わせるということが何度も起こって、その偶然性により話が進んでいくので、捜査を楽しむことがほぼ無理な内容となっています。

セガールをワイヤーで吊っちゃダメ

スタント・ファイト・コレオグラファーとしては、ユエン・ウーピンの弟子筋の武術指導者ディオン・ラムが起用されており、吊って動かすという発想でアクションシーンが演出されています。

これは『ロミオ・マスト・ダイ』(2000年)のジェット・リーでうまくいったモデルではあるのですが、リーの場合は中国武術でも表演大会、つまり型の美しさを競う大会でのチャンピオンなので、そもそもワイヤーとの相性は良いわけです。

しかしセガールの場合は型を見せるタイプのマーシャルアーツではなく、実際に組手をするタイプのマーシャルアーツなので、そもそもワイヤーとの相性はありません。加えて、セガールファンは合気道七段の達人の動きを見に来ているようなものであり、ワイヤーを使った舞踏は彼の持ち味を殺しています。

マイケル・ジェイ・ホワイトとの対決が台無し

従前のセガール映画が抱えていた問題は、セガールと同等レベルの強敵を作り出せないことでした。『暴走特急』(1995年)のマーカス・ペンや『グリマーマン』(1996年)のドナルド・カニンガム辺りはその線を目指したキャラだったのですが、達人セガールと同等に渡り合う画というものは難しかったらしく、結局は造作もなく捻り潰されるという展開を迎えました。

そこにきて、本作はマイケル・ジェイ・ホワイトというもう一人のマーシャルアーツ・スターを配置しています。空手など複数の黒帯を持っており、全米大会での多くのタイトルを持つ実力者。しかもイェール大やブラウン大で演技を学んでおり俳優としての存在感もあるという、セガールの敵としては申し分ない相手でした。

しかしあろうことか、本作のスタッフは名人二人の組手にワイヤーアクションをトッピングするという、実に要らんことをやってくれます。そのままで十分うまい料理に「サービスです」と言ってソースやマヨネーズをドバドバかけられているような気分になりました。

さらには、劇中では同時並行していたDMXとデイビッド・バディムのまったく盛り上がらない格闘とクロスカットで見せており、せっかくの好カードが見せ方のマズさによって台無しになっていました。

セガールである必要を感じない内容

本作を総括するとこれです。絶対危機に陥らないことが分かっているセガール主演で二転三転のサスペンスなんて有効に機能するはずがないし、合気道の達人であるセガールをワイヤーで吊ることは余計な工夫でしかありません。

同じアクション俳優でもスタローンやヴァンダムといった、まだ普通の人間を演じられる者を使っていれば真っ当なサスペンスアクションになっていたかもしれないし、ワイヤーアクションとの相性の良いジェット・リーなら見せ場も面白くなったかもしれません。いずれにせよ、スティーブン・セガールという特異な俳優がやるべき企画ではありませんでした。

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