【凡作】ワイルド・スピード(2001年)_当時のドムはトラック強盗(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(2001年 アメリカ)
アクションフランチャイズの第一作目だが、直近作品とは比較にならないほどこじんまりとしている。主人公ドミニクは魅力的ではあるけれど、この時点での彼の言動にはツッコミどころも多く、また潜入捜査ものらしいスリル感もなく、作品としての完成度はさほど高くないように感じる。

感想

ソフト化時点で一度見たっきりだった作品だけど、今一度シリーズのおさらいをしてみようという気になったので、二十数年ぶりの鑑賞となった。

アクション映画史上屈指のフランチャイズになり、新作を作るたびに記録的な金額の製作費が投じられるようになった現在の感覚からすると意外だけど、第一作の製作費はたったの3800万ドルだった。

同時期に公開された『トゥームレイダー』(2001年)や『ソードフィッシュ』(2001年)の製作費1億ドルと比較しても明らかに少なく、メジャー作品としては低予算の部類に入る。

主演のポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルは共に売り出し中だったし、実績のある脇役がいるわけでもない。

そんなわけで公開前にはさして期待された映画でもなかったが、ふたを開けてみると他の大作と比較しても遜色のない金額を稼ぎ出し、全米年間興行成績第12位と大健闘した。

LAで頻発するトラック強盗を追うFBIと市警は、夜中に行われる違法レースを仕切っており”悪そうな奴はだいたい友達”な車屋ドミニク(ヴィン・ディーゼル)の元に、ストリートでまだ顔を知られていない若手捜査官ブライアン(ポール・ウォーカー)を潜入させるというのが、ざっくりとしたあらすじ。

はっきり言ってしまうと、キャスリーン・ビグロー監督『ハートブルー』(1991年)の二番煎じである。

カリスマ犯罪者の元に若い捜査官が潜入させられるも、いつしかその魅力に飲まれていくという同作の概要が、そっくりそのまま移植されている

異なるのはヤンキー漫画的な要素が多いことで、『ハートブルー』の犯罪者ボディ(パトリック・スウェイジ)がXスポーツの求道者的な性格だったのに対して、本作のドミニクはストリートの支配者という感じ。

身内に対しては強力な仲間意識を見せる一方、隣町の松村雄基似の中国人ギャングとは一触即発の関係にあり、ドミニクが身内とそれ以外とで全然違う顔を見せるあたり、いかにもヤンキー的。

実力あるレーサーだったドミニクの父は事故死を遂げていた。その事故の原因を作ったとおぼしき人物をついつい半殺しにしたことでドミニクは服役し、正規のレースには出場できなくなったので、ストリートの違法レースを仕切るようになったとのこと。その背景もいちいちヤンキー的だ。

そこに入り込んだブライアンは、当初は一番の格下扱いを受けるのだが、恩を売ったり売られたりの中でドミニクのお気に入りとなり、そのうち同格に近い存在となっていく。

そんな二人の関係を見ているうちに本筋を見失いがちになるのだが、そもそものブライアンの任務はトラック強盗を捕まえることだ。

上司たちはドミニクが怪しいと睨んでいるが、その人柄に触れるうち、ブライアンは「ドミニクは悪くない」と思うようになる。

「果たしてブライアンの見立ては正しいのか!?」というプロットが前面に出てこないといけないのだろうけど、捜査の部分がどうにも弱いのが本作の欠点だ。

有名な映画なので構わずネタバレさせてしまうけど、案の定、ドミニクがトラック強盗犯だったという何の捻りもないオチを迎える。

それまで積み上げてきたドミニクの”筋を通すワル像”からはかけ離れているので、どうにもこれが腹落ちしないのだが。

仲間に対してさんざん説教臭いことを言っておきながら、自分自身は遊ぶ金欲しさに何の落ち度もないトラック運転手を襲っていたのかと。

また見せ場であるカーレースも直線を走っているだけなのでドライバーの腕前を感じられず、なぜドミニクが崇められているのかがよく分からない。

あんなのドライビングテクニックではなく、どれだけ車を魔改造したかで決まるんじゃないの?

だとすれば、トラック強盗を働いて得た資金をたっぷりと車に注ぎ込めたドミニクが強いのは当然だろう。

というわけで文句の方が多く出てきてしまうので、やはり本作は私には合わないのだろう。

【凡作】ワイルド・スピード(2001年)_当時のドムはトラック強盗
【凡作】ワイルド・スピードX2_話はマズイがカーアクションはイケる
【駄作】ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT_柴田理恵の名演が見せ場
【凡作】ワイルド・スピード4 MAX_ドムの学習能力ゼロ
【良作】ワイルド・スピード5 MEGA MAX_金の亡者と化したドム
【凡作】ワイルド・スピード6 EURO MISSION_滑走路長すぎ
【良作】ワイルド・スピード7 SKY MISSION_エピローグが感動的
【良作】ワイルド・スピード8 ICE BREAK_車の雪崩現象
【凡作】ワイルド・スピード9 ジェットブレイク_車である必然性がない
【良作】ワイルド・スピード10 ファイヤーブースト_筋肉の宝石箱やぁ

スポンサーリンク
公認会計士のB級洋画劇場