【良作】ワイルド・スピード7 SKY MISSION_エピローグが感動的(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(2015年 アメリカ)
シリーズ第7弾にして、現時点で最大のヒット作。話は相変わらず適当で、都合が悪くなると方向転換を繰り返すが、ジェイソン・ステイサムを悪役に据えたことで戦いには緊張感が漂っており、アクション映画しては筋が通っている。また撮影中に急死したポール・ウォーカーを送り出すエピローグが素晴らしかった。

感想

これも映画館で見たけど、やはり印象的ではなかったので見返したことはない。

が、今回のシリーズ総括で見返してみて、もっとも面白いと感じたのが本作だった。

第3作目より監督してきたジャスティン・リンはパラマウントで『スター・トレックBEYOND』(2016年)を製作するために離脱し、新監督にはアクション大作の経験がないジェームズ・ワンが就任。

また主演のポール・ウォーカーがクランクアップ前に事故死を遂げて製作が一時中断といろいろ大変な映画だったが、公開されるや空前の大ヒットとなり、全世界で15億ドルもの興行成績を上げた。

その年のすべての公開作の中で第3位。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』よりも上であり、人気アクションシリーズ『007/スペクター』『ミッション:インポッシブル/ローグネイション』を合わせたのとほぼ同額を本作だけで稼ぎ出したのだから、これがいかに凄い数字かお分かりになるだろう。

現時点においてもシリーズ最高の興行記録を持つのは本作である。

前作で弟オーウェンに重傷を負わされた元SASのデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)が、ついにドム一家への復讐を開始する。

時を同じくしてアメリカ政府の秘密機関がドムに接触。モーゼ・ジャカンディ(ジャイモン・フンスー)率いる軍事組織がゴッドアイと呼ばれる監視装置を狙っており、その開発者であるハッカーを奪い返して欲しいとのことだった。

ゴッドアイを使えばデッカードの居場所も掴めるということで、この作戦への協力を決めるドム一家。

本作にて、ミスターノーバディ(カート・ラッセル)とラムジー(ナタリー・エマニュエル)が初登場。

また前作ラストに登場したデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)が本格参戦し、『3』の主人公ショーン・ボズウェル(ルーカス・ブラック)が久しぶりに顔を見せる。

こうして書き出してみて気づいたんだけど、デッカード・ショウって元SASという以外の肩書が不明で、現職が殺し屋なのかテロリストなのか武器商人なのかすら判然としない。常に単独行動で組織らしい組織も持ってなさそうだし。

そんなわけでお話はあってないようなもの。

デッカードを探すための機械の獲得を主目的としつつも、その過程でデッカード側から何度も何度も接触を受けているという構成は論理的に破綻しているような気がしなくもない。

そしてアゼルバイジャン山中でラムジー奪還作戦を実行し、いろいろありつつも奪還に成功するドム一行だが、ラムジーとちょこっとだけ話すと「よし、次はアブダビだ」と言い出す。私が集中して見ていなかったせいかもしれないが、なぜアブダビへ行く必要があったのかよく分からなかった。

そしてアブダビでは王族が所有するスポーツカーを強奪するんだけど、これまたどういう理由であのスポーツカーが必要だったのか最初分からなかった。

見せ場の後に車からゴッドアイを回収して、ようやっとアブダビに来た理由、スポーツカーを奪った理由が分かったんだけど、なぜスポーツカーにゴッドアイが詰まれていたのかはいまだによく分からん。

そしてアブダビの王族は敵側の人物でもなく、事情を丁寧に説明すれば協力してもらえる可能性は十分あっただろうと思うんだけど、毎度毎度、ドム一味はややこしくなる方法ばかりをチョイスするのだから見ているこちらが疲れてしまう。

兎にも角にもゴッドアイを入手したドム一行とミスターノーバディは、部隊を引き連れてデッカード・ショウの拘束に向かうものの、敵方の情報収集を怠っていたせいで返り討ちに遭わされるなど、基本的にこちら側の作戦は有効に機能していない。

とまぁいつもながら話は酷いんだけど、「ヒールが弱い」というシリーズの弱点を克服した結果、アクション映画としては大いにアリな内容となっている。

何せ相手はジェイソン・ステイサムで、さらにその関係者としてジャイモン・フンスーまでいる。脇役としてトニー・ジャーまで出ている。

ヴィン・ディーゼルとドウェイン・ジョンソンをもってしても勝てるかどうか分からないという素晴らしい対戦カードが実現しており、最後までハラハラしながら見ることができた。

見せ場はどんどん大規模化・過激化しており、本作において車はほぼ”飛ぶもの”として扱われているが、ライブアクションとの組み合わせ方がうまいためか、前作ほど「ありえねぇ」とは感じなかった。

この辺りは監督の演出力の違いなのだろう。

ジェームズ・ワンは『ソウ』(2004年)シリーズや『死霊館』(2013年)シリーズですでに実績を上げてきた監督だが、ホラー監督が一般的な娯楽作との親和性も高いというのは、ピーター・ジャクソンやサム・ライミといった過去事例からもお分かりの通り。

ありえないほどスケールの大きなアクションを「生身の人間が戦っている」という感覚を残しながら見せた演出力には恐れ入った。

またポール・ウォーカー追悼を湿っぽくなり過ぎずにやり切ったクライマックスの素晴らしさよ。

Y路でブライアンとドムの進む道が分かれるという詩的な美しさを、まさかこの脳筋アクションで見られるとは思ってもみなかったし、これをやったのがシリーズ常連の監督ではなく、今回たまたま担当しただけの雇われ監督だったという点にも感慨があった。

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