【良作】ゴジラxコング 新たなる帝国_ある意味で究極の怪獣映画(ネタばれあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2024年 アメリカ)
人間を完全に脇役に追い込み、怪獣を名実ともに主人公に据えたエポックメイキングな怪獣映画。怪獣映画の行きつく果てを見せてくれる、実はすごい映画だと思う。

感想

IMAXにて鑑賞。やはり大怪獣映画はなるべく大きなスクリーンで見るに限りますな。

私は熱烈な怪獣映画ファンというほどでもないが、そうは言っても昭和のゴジラシリーズは小学生時代にすべて鑑賞したので、普通の人よりは東宝の怪獣への思い入れがあると思う。

怪獣映画好きなら誰しもが思うのが「かったるい人間ドラマをなくせないかな」ってことだけど、本当にそれをやってしまったのが本作である。

今回、小学生の息子と一緒に映画館に行った。息子にとって字幕での映画鑑賞は初めての経験だったけど、ほとんど字幕を読む必要がないほどの映画だったので何の支障もなかったようだ。

本作の主人公はコング。

モンスターバース初登場の『キングコング:髑髏島の巨神』(2016年)ではコング族最後の個体とされており、島で孤独な生活を送っていたが、前作『ゴジラvsコング』(2021年)にて地下空洞世界にルーツがあることが判明。

本作ではコングの仲間探しがテーマとなっている。

通常、怪獣のドラマにはその通訳となる人間キャラが同伴するものだが、本作は怪獣キャラだけで話が進んでいくという、ある意味でエポックメイキングな内容となっている。

一応、イーウィス族最後の生き残りという点でコングと似た境遇にある少女ジア(カイリー・ホットル)の居場所探しという相似形のドラマが平行して描かれていて、これがコング側ドラマへの理解を補完する役割を果たしているんだけど、構造的にはコングとジアのドラマは別個に描かれるので、コングパートは本当に怪獣だけで進んでいく。

冒頭、コングの表情だけで彼が仲間を求めていることが分かる。

中盤ではようやく出会えた同族達とのコミュニケーションや、彼らを支配するスカーキングとの対立が描かれるが、巨大猿たちが「ウガー」と叫んでいるだけなのに、彼らが何の話をしているのかがこちらにちゃんと伝わってくるのだから大したものだ。

そりゃ本作は『オッペンハイマー』(2023年)のような立派なテーマを扱っているわけでも、観客に複雑な思考を要求してくる映画でもない。

だからこれを見下す人も多いとは思うが、大猿達が「ウガー」と叫ぶだけで話を伝えてしまうという表現力は相当なものではないか。つくづく、こういうのをバカにする人間にはなりたくないと思う。

スカーキングは、地球を氷河期にしたシーモ(日本語の”霜”が名前の由来らしい)という大怪獣の弱みを握って支配しており、その威力を利用してかつて地上への侵攻を試みたこともあるが、その野望は地上界の怪獣王ゴジラに阻止された。

で、スカーキングから同族を救わんとするコングは、切り札として旧知の仲であるゴジラを地下空洞世界に召喚するというのがざっくりとした流れ。

繰り返しになるが本作はコングの物語であり、ゴジラは客演に近い扱いだ。しかし対スカーキング戦における最強の切り札という扱いなので悪い気はしない。

ゴジラとコングが並んで走っている姿はプロモーションでもよく用いられる本作のキービジュアルであるが、ここに至るまでのコングはもう散々だった。

ようやく見つけた同族は悪い奴に支配されているし、スカーキングとの初戦ではボロ負けして片腕を損傷するし、やむなく地上に戻ってゴジラを呼んでもなかなか言うことを聞いてもらえない。

そんなこんなを経てのゴジラとのダッシュなので、見ているこちらも大興奮である。

気になったのは、ほとんどが地下空洞内で起こったことなので大怪獣感が出ていないことだったけど、それは製作陣も分かっていたようで、リオデジャネイロが最終決戦の地となる。

地下空洞からリオへ、ゲップが出るほど怪獣バトルを見せられてお腹一杯になったし、こうして振り返ってみると怪獣映画としての構成に穴らしい穴がない。

本作には『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『シュレック』の名脚本家テリー・ロッシオが参加しており、内容は低偏差値ながらも、構成は考えに考え抜かれている。よくできた映画だったと思う。

終盤では、損傷したコングの腕にメカアームが取り付けられる。

あれは対ゴジラ用にモナークが開発していたコング強化アーマーの一部とのことだが、将来的にメカニコングを登場させるための布石でしょうな。

メカニコングにまで目配せしているとは、アダム・ウィンガード監督の東宝オタクぶりも相当なものだと思う。

本作の世界的大ヒットを受けてゴジ・コンシリーズ第3弾製作の可能性も濃厚になっているが、次回作はゴジラにスポットを当てた内容になるらしい。

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