【良作】デューン 砂の惑星 PART2_どうしても世界情勢を重ねて見てしまう(ネタばれあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(2024年 アメリカ)
映像美は相変わらず素晴らしく高品質な映画であることは間違いない。決して低い評価にはできないけど、娯楽作としての抑揚を頑なに拒否しているかのようなドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のもったいぶった演出は、もっと柔軟にならないものかと思った。

感想

“凄い”けど”面白い”とは違う・・・

公開が3月だったのに今更ながらのレビュー投稿。最近では珍しいIMAX先行ロードショーで見ていたんだけど、ここ数か月は仕事が忙しすぎて感想を書けずにいた。

1か月以上置いての感想文なので細かい部分の記憶には自信がなく、よってざっくりとした感想になってしまう点はご容赦いただきたい。

好評をもって受け入れられた前作『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年)から輪をかけて映像美には磨きがかかっており、長尺ながらすべての場面が絵画のように完成されている。

物語的にも窮地からの逆転というおいしい部分であり、見ごたえは間違いなくあった。映画館で、IMAXで見て本当に良かったと思える作品だった。

ただし面白いかと言われると微妙で、かねてより感じてきたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の高尚すぎる演出が若干鼻についた。

『メッセージ』(2016年)あたりもそうだったけど、せっかく良いものを持っているのに、いざ盛り上がりそうになると娯楽性から遠ざかろうとするあの感じですね。

前作でアトレイデス家を一族郎党惨殺したサーダカーとの戦闘なんて、もっとチャンチャンバラバラで盛り上がってくれればいいのに、なぜかそういう客がアガりそうな部分はスルーしてしまう。

この映像でもっとハジけてくれればSF映画史上の傑作になったかもしれないけど、ドゥニさんの抑えた演出がリミッターになってしまったという印象。

製作が決定したPART3では、今度こそ一皮むけたドゥニさんに期待しましょう。

どうしても世界情勢を重ねて見てしまう

そんな全体感の一方で、個人的に興味を持ったのは、主人公ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)の苦悩だった。

ポールは周囲から「救世主だ!」と持て囃され、実際、非凡なことをいくつもやり遂げて覚醒していくんだけど、その先に見えるのは銀河系全体で信じられないほどの人が死ぬという大戦争のビジョンだった。

奇しくも日本では同時期に公開となった『オッペンハイマー』(2023年)とも一部テーマが重なるんだけど、大勢の死を背負ってしまった個人のドラマに突入していくのだ。

本作を中東情勢と絡めての議論がアメリカで起こったらしい。

フレメン=パレスチナ人、ハルコネン=イスラエル、皇帝=アメリカという図式での理解のようだが、むしろ私はフレメン=イスラエルとして受け取った。

虐げられてきた彼らには、報われるべきナラティブがある。

だからここでハルコネンとサーダカーに反撃をすることは正義だといえるのだけど、この辺境の惑星で起こった地域紛争が火種となり、やがて世界大戦が起こる。そのトリガーを引くか引かないかでポールは悩むわけである。

前述したドゥニ・ヴィルヌーヴの煮え切らない演出が、こうした戦争に対する深い洞察に根付いたものだとするならば、大したものだと思う。

本作への真の評価は、来るべき大戦争が描かれる次回作PART3を見てからが良いのかもしれない。

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