【凡作】ミッション:インポッシブル_話が分かりづらい(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(1996年 アメリカ)
話が複雑な割に謎解きの面白さが伴っておらず、見せ場の数が多いわけでもなく、実はあまり面白くない映画。ただし国際的な諜報戦という「スパイ大作戦」らしい趣がもっとも残っているのが本作なので、このパリっとした雰囲気自体を味わう楽しみはあります。イーサンも超人化しすぎていないし。

©Paramount Pictures

あらすじ

イーサン・ハントが率いるIMFのチームは、プラハのアメリカ領事館に敵の内通者がいるという情報から、その内通者を押さえるための任務に従事する。しかし任務の情報は敵に漏れており、イーサンを除いてチームは全滅。回収地点でCIAと合流したイーサンは唯一の生き残りであることから裏切り者と見做される。

スタッフ

『アメリカン・グラフィティ』のグロリア・カッツ&ウィラード・ハイクによるオリジナルを『ジュラシック・パーク』のデヴィッド・コープと『シンドラーのリスト』のスティーヴン・ザイリアンが推敲し、それをさらに『チャイナタウン』のロバート・タウンが手直ししたというハリウッドの叡智を結集したかのような脚本、さらにブライアン・デ・パルマを監督に引っ張ってくるという鉄壁の布陣を作り上げたあたりに、ハリウッドにおけるトム・クルーズの権力がよくわかります。

感想

内容は中途半端

しかし出来上がった作品は、ド派手な見せ場で目を楽しませるアクション大作でもなく、優秀な脚本家によるインテリジェントなサスペンスでもなく、デ・パルマの作家性を感じさせるようなギミック溢れる作品でもなく、実に中途半端な映画という印象です。

悪くはないが、それほど面白いわけでもない。やる気マンマンなのはトム・クルーズだけで、他のメンバーはプロデューサーから言われた通りに仕事をしましたという感じだったのでしょうか。

ジャンルを愛する若手クリエイターに一任した「M:i-Ⅲ」がシリーズ随一の面白さだったことを考えると、その何倍も優秀な人材を配置した「1」がこの程度というのは、集められたスタッフ達のやる気や思い入れが影響しているのでしょうか。

サスペンス映画なのにバレバレのオチ

本作の最大の問題点は、フェルプスが怪しいことが最初からバレバレなところでしょうか。デ・パルマという人は過去の作品からしてそうですが、サスペンスを撮る監督なのに犯人がバレバレで、それを隠しもしないという変わったところがあります。

ストーリーよりもデ・パルマのテクニックを楽しむことが優先の自前企画ならそれでもいいのですが、「スパイ大作戦」でこれはマズイように思います。フェルプスが自分の死を偽装するところなど、笑わせているのかと思うほどチャチで困ってしまいました。もうちょっとやりようがあったでしょうに。

また、イーサンがフェルプスの裏切りに気付いたきっかけが、フェルプスが滞在していたドレイクホテルの押印のある聖書がアジトに置かれていたからという点は、地味だし非常に分かりづらい(謎の裏切り者ヨブは武器商人マックスとのやりとりを聖書の引用により暗号化していたが、ドレイクホテルのスタンプにより聖書とフェルプスが繋がったことで、「ヨブ=フェルプス」をイーサンは疑い始めたわけです。って、分かりづらいよ笑)。謎解きの核心部分なのだから、もう少し丁寧に見せるべきだったと思います。

サプライズに繋がっていない大オチ

そして、ヨブの正体をクライマックス前に暴き、クレアはどちら側の人間なのかという点が最後の争点となるのですが、これについては観客に対して適切な問題提起ができていない上に、オチに繋がる伏線の張り方も不十分なので、実はクレアも逆賊でしたというオチが観客にとってのサプライズにはなっておらず、それどころか「どっちでもええがな」となってしまっています。

また、クレアに惚れていたがためにイーサンの判断力が鈍り、イーサンは自分で考えているようでいて、実はクレアとフェルプスにうまく使われてCIA本部潜入までをやってしまったという図式も観客にうまく伝えられておらず、総じてどんでん返しが機能していません。

シリーズでは一番『スパイ大作戦』している

本作はアクション大作と化した『2』以降とはまったく毛色の違う作品であり、シリーズ中唯一、冷戦時代に製作されたスパイドラマと同一の雰囲気を作ろうという努力が見て取れました。シリーズが恐竜的進化を遂げた今、本作には古典としての風格も漂っています。

また、イーサン・ハントが超人化しておらず、フェルプスに殴られただけで失神する程度の戦力だったことが現在の目で見ると新鮮であり、もはや諜報部員というよりも特殊部隊員か何かに近い存在となっている現在よりも、こちらの方が本来あるべき姿だよなと納得できました。

よくよく考えれば見せ場もイーサンの戦力に合わせてあり、水槽を爆破しての脱出やCIA本部潜入など通常のアクション映画で見る力押しとは一味も二味も違うもので、創意工夫の跡は伺えます。また、ダニー・エルフマンによる音楽も良くて、全編に渡って落ち着いた曲調を流しながらも、必要な場面ではアガる曲調のメインテーマをジャジャーンと流すことで音楽がうまくテンポを作っています。

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