ミッション:インポッシブル2【駄作】シリーズ随一の駄作(ネタバレあり・感想・解説)

(2000年 アメリカ)
汚い男をかっこよく描くのは天才的なジョン・ウーですが、元からきれいにまとまっている男をかっこよく見せるのは苦手だったようです。本作のトム・クルーズは美しいんだけど、かっこよくはありません。

あらすじ

強力な殺人ウィルス・キメラとその治療薬ベレロフォンが、元IMFエージェントで現在は国際的なテロリストであるショーン・アンブローズに強奪される。これに対しイーサン・ハントのチームは、アンブローズの元恋人であり国際的な窃盗犯であるナイア・ホールの身柄を確保し、アンブローズの元に送り込む。

感想

スパイ映画としてスベっている

主人公が恋仲になった女性を敵地に送り込むという構図は007とほとんど変わらないものなのですが、あちらがジェームズ・ボンドという現実的にありえないキザ男をひとつのキャラクターとして確立しているのに対して、まだ2作目である本作の主人公には観客に有無を言わせないほどのパワーはなく、終始「そんなわけないだろ」という違和感ばかりが残りました。

例えば、協力者となるナイアを序盤でナンパする件。ニッコリ笑顔で胡散臭く近づいて、その後男らしいところを見せるとムキになっていた女ももうメロメロって、いつの時代の映画なんだと。その後の山道でのカーチェイスは粋な男と女が高級車で戯れているという感じの撮り方でしたけど、そのわりに事故起こして死にかけるのはさすがにかっこ悪いでしょ。あれで死んでれば本当のバカップルです。

悪役のアンブローズもアンブローズで、寝起きにガウンでくつろいでいるのに髪型だけはばっちり決まっていたり、部下に対してキレるところが微妙にズレていたり、元カノに裏切られてメソメソしたりと、恐らく予測不能な異常者のつもりで演出されているんでしょうけど(髪型ばっちりは違うか)、観客に対して恐怖心を抱かせるどころかおかしな奴に見えちゃっています。

スパイ映画の様式美のようなものを恐らくは意図的に持ち込んでいるのですが、観客との間の阿吽がまだできていないので、ことごとくスベった状態になっているのです。

放棄されたドラマ要素

本作のディレクターズカットは3時間半あったのですが、パラマウントはこれを2時間以内に収めろとかなり無茶な再編集要求をしてきました。その煽りをモロに受けたのがドラマパートであり、イーサン・アンブローズ・ナイアの三角関係がまったく機能していません。

元カノへの未練を抱くアンブローズの元にナイアを送り込むイーサン、タイミングよく戻ってきたナイアを疑いつつも、彼女を信じたいという気持ちの方が勝っているアンブローズ、元カレは危険人物だということは分かっているが、イーサンへの思いから危険なミッションへの参加を決意するナイアという構図は、『1』でのイーサン・フェルプス・クレアの関係をまんま逆転させたものなんですよね。

かつては仕掛けられる側だったイーサンが、今度は仕掛ける側に回るという点に面白さがあったはずなのですが、完成版ではこのドラマがほぼ死んでいます。これはとても勿体ないと思いました。

プロダクションには同情すべき点も

本作については、制作時のゴタゴタも作品に悪影響を与えています。『アイズ・ワイド・シャット』の大幅なスケジュール超過に巻き込まれ、1999年3月に撮影開始予定なのにトム・クルーズが本作の準備に入れたのは1998年6月で、これだけの大作なのに準備期間が9か月しかないという強行スケジュールとなったことがみそのつきはじめ。

アイズ・ワイド・シャット_風俗行こうか悩むだけの映画【6点/10点満点中】

当初監督する予定だったオリバー・ストーンは時間切れで降板して急遽ジョン・ウーが雇われたのですが、ウーの香港仕込みの早撮りに現場が対応できず、撮影監督のアンドリュー・レスニー(後に『ロード・オブ・ザ・リング』三部作を撮る人)が1週間足らずで降板。

レスニー子飼いの現地スタッフ達は親分への忠誠を貫くか、トム・クルーズが送り込んできた替えの撮影監督(『トップガン』を撮ったジェフリー・L・キンボール)の指示に従うかで仕事どころではなくなるし、この降板劇で労働組合は乗り出してくるし、オーストラリアでは公道でのカーチェイスの撮影許可がなかなか下りないし、パラマウントは制作費超過の釘を刺してくるし、トム・クルーズとジョン・ウーはまさに満身創痍でした。もう品質どころの話ではなく、期限内にやり遂げることが至上命題の現場となっていたのです。

ちなみに、トム・クルーズは受け取る予定だった2,000万ドルのギャラを全額製作費に充当するほど身を切っていました。

シリーズ中では珍しい平常ミッション

シリーズ中唯一、平常ミッションを扱った作品であるという点で興味深く感じました。このシリーズはイーサン達が組織から切り離されて独自行動をとるという展開が多く、ミッションも何もあったもんじゃないのですが、本作に限っては組織からの指令に従ってイーサンが動くという点で、ちゃんと『ミッション:インポッシブル』になっているわけです。

ナイアを案ずる気持ちはあるものの、敵地に送り込めという組織からの指示を優先するイーサンのプロフェッショナリズムなどは、他の作品では見られない要素です。

ただし問題は上記の通り007のような様式美がうまく馴染んでいないことや、職務と私情の間で揺れる登場人物達の心境が観客に伝わるレベルで表現されていないことから、肝心のドラマがほぼ見過ごされてしまうということですが。

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