エイリアン4【良作】今度はダークヒーローもの(ネタバレあり・感想・解説)

(1997年 アメリカ)
世評は良くない作品のようなのですが、アクションとVFX両面で見応えがあり、私は十分に満足できました。ファンサービス的な情報が付加された『完全版』も面白く、こちらも見る価値ありです。

©Twentieth Century Fox

あらすじ

前作から200年後。惑星フィオリーナ161に残されていた血液からリプリーがクローン再生されたが、彼女は軍の科学者たちがエイリアンを抽出した際の副産物だった。抽出されたエイリアン達は人間の手には負えず兵士や科学者を虐殺し始め、リプリーは宇宙貨物船ベティ号のクルー達と共に脱出を図る。

プロダクション

まさかのシリーズ続行

一生懸命作ったのに興行的にも批評的にも苦戦した『エイリアン3』(1992年)では、関係者もファンも辛い思いをしました。

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『エイリアン3』への出演も渋々だったシガニー・ウィーバーはともかく、プロデューサーのウォルター・ヒルもデヴィッド・ガイラーも『エイリアン3』後のシリーズ継続には否定的でした。フォックスも同意見であり、せっかく保有しているコンテンツを活かして『エイリアンvsプレデター』を作ろうかと考えているところでした。

こうして誰もがシリーズ継続を諦めていたのですが、ある日ウォルター・ヒルとデヴィッド・ガイラーがクローン技術でリプリーを復活させるというアイデアを思いつき、『スピード』(1994年)や『トイストーリー』(1995年)などで注目されていたオタク脚本家ジョス・ウェドンに話を書かせてみたら、手ごたえのあるものが出来上がりました。

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これにはプロデューサーもフォックスもノリノリになり、当初は誰も作る気のなかった『エイリアン4』の製作が始動。唯一シガニー・ウィーバーだけは乗り気じゃなかったのですが、1100万ドルという法外なギャラを支払うことで彼女も納得しました。世の中金ですね。

監督はフランス人のジャン・ピエール・ジュネ

『エイリアン』シリーズの監督は非アメリカ人という法則性があったのですが、これを破ってアメリカ人監督を起用した『3』のみ失敗しました。

今回はこの法則を意識的に遵守したのか、デヴィッド・クローネンバーグ(カナダ人)、ダニー・ボイル(イギリス人)、ポール・W・S・アンダーソン(イギリス人)、ピーター・ジャクソン(ニュージーランド人)と、監督候補に挙がったのは非アメリカ人ばかりでした。

最終的に決まったのはジャン・ピエール・ジュネとマルク・キャロ。『デリカテッセン』(1991年)、『ロスト・チルドレン』(1995年)で評価を受けたフランスのコンビ監督でした。しかし、ロスでの製作開始後すぐにキャロはフランスに帰国してしまい、ジュネ単独で監督することになりました。ジュネによると「キャロにはロスの日差しが合わなかった」とのことです。

スタジオの過干渉が敗因の一つだった『3』の反省を踏まえてジュネには大きな権限が与えられ、脚本の書き換えなどを自由に行うことができました。ジュネが実際にこの権利を発動したことが原因で、ジョス・ウェドンは完成した作品に不満を持っているようですが。

感想

今度はダークヒーローもの

閉鎖空間でのエイリアンとの攻防というシリーズを貫く概要は本作でも守りつつも、これだけお馴染みの存在となったエイリアンはもはや恐怖の源泉にはなりえないだろということで、本作はダークヒーロー映画として味付けされています。

同じ起源を持つ善と悪のせめぎ合いというあらすじは『仮面ライダー』や『ブレイド』を彷彿とさせ、いかにも漫画チックです。リプリーはすでに人間を超越し、エイリアンと互角に渡り合う能力を持っています。

加えて今回のエイリアンの数は12匹と設定されており、これらを1匹ずつ倒していくというバトル映画的な要素も付加されています。これらは後に『アベンジャーズ』(2012年)を監督するジョス・ウェドンらしい切り口でした。こういう映画って大好きです。

息をのむパニック・アクション

エイリアンがラボから脱出した30分を過ぎたところから、アクションの連続となります。

ある地点からある地点へと移動するというシンプルな構図は『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)を彷彿とさせ、シリーズ中でもかつてないスピードで疾走するアクションは見応え十分でした。

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ガンアクションはキメっキメ。ジョス・ウェドンは二丁拳銃を扱うクリスティにチョウ・ユンファをイメージしており、実際にユンファへの出演依頼がなされたようなのですが、ジョン・ウー作品のプロデューサーであるテレンス・チャンに断られたようです。ユンファが出ていれば最高だったのに勿体ない限りです。

VFXはシリーズ最高の出来

リドリー・スコットの完璧主義が炸裂した『エイリアン』(1979年)のVFXは素晴らしかったのですが、『エイリアン2』(1986年)、『エイリアン3』(1992年)のVFXにはいろいろと難もありました。

そこに来て本作ですが、ライブ、ミニチュア、CGを組み合わせた画作りがほぼ完璧であり、製作から20年以上経過した現在の目で見てもアラが見当たらないほどの壮絶な完成度となっています。白眉はシリーズ初の水中を泳ぐエイリアンであり、魚のようなしなやかな動きにはまるで違和感がありませんでした。

これが水中エイリアンだ!

ツールの使い分け方が素晴らしく、エイリアンにはCGを多用して今までになかった動きをさせる一方で、宇宙船はあえてミニチュアで製作し、CGにはない実物感を出しています。

リプリーとエイリアンの愛憎関係は描写不足

今回のリプリーとエイリアンは兄弟のような関係にあります。エイリアンの脱走を知らせる警報が鳴り響く中、リプリーは「逃げなきゃ」という目的意識と同時に、エイリアン達が汚い人間の手元を離れたことにうっすらと笑みを浮かべます。同族同士の愛憎関係こそが、本作の大きなポイントだったのです。

また、リプリーと遺伝子レベルでの融合をしたことでエイリアン達は人間の資質を受け継ぎ、エイリアン・ウォーリアーは高度な知能を身に着けてニュー・ウォーリアーと呼ばれる種類に進化を果たしました。クィーンも子宮を得ており、エイリアン達に人格らしきものを与えるという試みもなされています。

しかしこれらが面白いアイデアレベルで終わっており、観客にドラマ性を感じさせるレベルにまで昇華できていません。同族同士の悲しい戦いという構図にまで落とし込めていれば最高だったのですが。

ニュー・ボーンが残念すぎた

企画の時点では本作最大の収穫になるはずだったのがクライマックスに登場するニュー・ボーンでした。生後間もないニュー・ボーンが従前最強だったクィーンを一撃で葬るほどのパワーを披露し、「えらいのが現れた!」とリプリーと観客を絶望のどん底に突き落とはずのキャラクターでした。

しかし、脚本にはあったはずのニュー・ボーンが暴れる場面は予算の都合で製作されなかったらしく、実に中途半端な絡みのみで終わりました。

あと見た目ですね。エイリアンと人間を掛け合わせた姿はストレートに気持ち悪く、強い・怖い・カッコいいというエイリアンに求められる方向性とはズレていました。エイリアンはグロさの中にもカッコよさがあるから人気キャラになったし、カッコいいキャラは何となく強そうにも見えるものなのですが、ブサイクキャラでは実際の戦闘力以上に弱そうに見えてしまいます。

ニューボーンの模型。ブサイク。

完全版について

2003年のアルティメット版DVDリリースの際に、劇場版よりも7分長い完全版が収録されました。ただしジュネによると劇場版こそディレクターズ・カット版とのことで、これはこれで興味があれば見てねというバージョンのようです。

劇場版との相違点

  • メインタイトルがまったく異なる。エイリアンのような虫の頭部のアップから始まり、カメラが引くとその虫をパイロットが親指で押しつぶし、さらにカメラが引くと宇宙を航行中のオーリガ号の全景が映る。
  • 劇場版にはなかったH・R・ギーガーのクレジットの追加(ギーガーからの抗議によるもの)。
  • チェストバスターの摘出手術を受けたリプリーが麻酔から目を覚まし、外科医の腕を掴んでへし折る。
  • リプリーが記憶のチェックを受ける場面で、ブロンド少女の絵を見せられる。
  • 食事の場面でのリプリーとゲティマンの会話が長い。ゲティマンは前作の舞台フィオリーナ161の名前を出し、そこでの記憶があるかどうかをリプリーに尋ねる。また、ウェイランドユタニはウォルマートに買収されたとの言及もある。
  • ベティ号及びクルーの登場場面の編集が違う。
  • エルジンとペレスの取引後にも会話が続く。エルジンはペレスに3日間の食事と滞在を要求し、ペレスは滞在のための条件を出す。
  • 浸水した調理場を泳ぐ直前にクリスティとディステファノが武器について会話し、意気投合する。
  • コールがオーリガ号を地球に衝突させて破壊するよう進路変更した際に、場所が無人地帯であることに言及する。
  • チャペルでのリプリーとコールの会話の追加。リプリーは『エイリアン2』のニュートと思われる少女の記憶について話すが、彼女の名前すら思い出せないと言う。続けて、リプリーは毎晩エイリアンの夢を見ており、かつては彼らを恐れていたが、もう怖くないと言う。
  • ベティ号が地球に着陸し、リプリーとコールは荒廃したパリに降り立つ。

シリーズの関連性が明確になった

完全版を見ることで劇場版から受けた印象が大きく変わるということはなく、映画としてのレベルを左右するほどの追加情報はありません。他方で過去作品との関連性への言及が多く、ファンサービス的な意義のあるバージョンだと思います。

また両バージョンを比較することで、本作に対するジャン・ピエール・ジュネの姿勢も見えてきます。脚本家のジョス・ウェドンがオタクの本領を発揮し、全編に渡って過去作品と関連するセリフを散りばめていたのに対して、ジュネはおそらく意図的にこれらを切っています。ここから察するに、ジュネは本作をエイリアンという設定を借りた新作として捉えていたのではないでしょうか。

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