エイリアン2【良作】面白い!かっこいい!見せ場の満漢全席(ネタバレあり・感想・解説)

(1985年 アメリカ)
男子たちの「こういうのを見たかった!」が詰まった革命的SF大作であり、しかもそれらを大人の鑑賞に足る映画としてちゃんと成立させていることにキャメロンの天才性があります。視覚効果の品質がやや犠牲にされている点は残念でしたが、それでもこのサービス精神には頭が下がります。

©Twentieth Century Fox

あらすじ

前作から57年後、リプリーを乗せた救命艇が回収される。リプリー達がエイリアンシップを発見したLV426には数十年前から入植がはじまっていたが、ある日入植者からの連絡が途絶える。これに対し植民地海兵隊が派遣されることとなるが、事情に詳しいリプリーも同行を求められる。

プロダクション

生活苦のキャメロンのアルバイトが始まりだった

本作の脚本が執筆されたのは、キャメロンが『ターミネーター』(1984年)を製作中の1983年でした。

『ターミネーター』は1983年初頭に撮影に入るスケジュールで動いていたのですが、ちょうど同時期に『コナン・ザ・グレート』(1982年)の続編を製作中だったディノ・デ・ラウレンティスに主演のシュワルツェネッガーを持って行かれてしまいました。当時無名の映像作家だったキャメロンでは世界一の独立系プロデューサー相手に為す術もなく、『ターミネーター』の製作は10か月もの中断を余儀なくされたのでした。

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給料の入って来なくなったキャメロンは生活苦に陥り、カナダのお母さんから仕送りしてもらうビッグマックのクーポン券で食いつなぐほど困窮しました。そこで生活費を稼ぐために2本の映画の脚本執筆を引き受けました。『エイリアン』(1979年)の続編と『ランボー』(1982年)の続編です。加えて『ターミネーター』の脚本の手直しも必要だったため、僅か3か月で3本の脚本を書くという無茶苦茶なスケジュールでしたが、キャメロンはこれを見事にこなしたのでした。

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リドリー・スコットにはひと声もかけられなかった

当時の続編企画と言えば正編の縮小再生産品のようなものばかりだったのですが、『エイリアン』の続編を引き受けたキャメロンは大胆にも設定だけを引き継いだ別ジャンルの映画の脚本を書いてきました。この脚本にプロデューサーのウォルター・ヒルとデヴィッド・ガイラー(両者は映画監督でもある)は大喜びし、「もし製作が決定したら、君に監督させる」とキャメロンに約束しました。

ネタを明かすと、キャメロンは以前に『マザー』というエイリアンものの脚本を執筆しており、それを本作に転用したのでした。別の映画を流用しているのだから前作と別物になったのは当然っちゃ当然なのですが、これを手抜きではなく斬新と評価させた辺りに、キャメロンの天才性があります。別企画のどこを変えれば『エイリアン』の続編っぽくなるのかという勘どころを的確に押さえられていたのです。

こうして監督はキャメロンに決定したのですが、前作のリドリー・スコットには再登板の打診すらなかったようです。後のインタビューによると、スコットは続編を監督する気があったようなのですが…。キャメロンの演出に不満はないものの、美的センスではスコットはキャメロンを凌駕しています。もしキャメロンの脚本をリドリー・スコットが監督するようなことになれば、どれだけ凄い映画になっていたんだろうかと思います。

穏やかではなかった撮影現場

イギリス人スタッフが怠け者だった

撮影は1985年9月から1986年2月にかけてロンドンの名門パインウッド・スタジオで行われましたが、当時のパインウッドはスタジオに張り付きの現地スタッフを使う必要があったため、アメリカ人スタッフとイギリス人スタッフが共同で作業に当たりました。

自分の力量を見せようと仕事には常に全力で当たるアメリカ人スタッフにとって、作品の内容を理解しようとせず指示された作業しかやらない、仕事が終わっていようがいまいが定時になれば帰っていくイギリス人スタッフの仕事ぶりは悪い意味で衝撃的でした。

しかも彼らは前作の監督リドリー・スコット(英国人)への忠誠心があり、その続編を若いカナダ人が監督していることへの不満も抱いているようでした。キャメロンはスタッフ達の仕事に怒り、スタッフ達は現場をボイコットするという、かなり荒れた現場でした。

キャメロンのダメ出しが厳しかった

加えて、キャメロンは撮影監督、編集マン、作曲家とも揉めていました。『ターミネーター』(1984年)までは一人のスタッフが何役もこなす小規模な現場しか経験しておらず、本作が初の大作だったため、キャメロンは他のスタッフの仕事を尊重するということが分かっていなかったようです。

当初の撮影監督はリメイク版『恐怖の報酬』(1977年)で知られるディック・ブッシュでしたが、エイリアンの巣への照明の当て方を巡ってキャメロンと対立して降板。当時まだ駆け出しで、後にSF大作の大家となるエイドリアン・ビドルが後任となりました。

編集には『2001年宇宙の旅』(1968年)や『シャイニング』(1980年)などキューブリック作品の常連レイ・ラヴジョイが起用されましたが、キューブリックのゆっくりとした現場に慣れていたラヴジョイの仕事を当初キャメロンは評価していませんでした。結果、ラヴジョイはたった一人で編集室に籠って作業するようになり、仕上げた仕事を自信なさげにキャメロンに見せるほど追い込まれたようです。本作の仕事でアカデミー編集賞にノミネートされ、彼の苦労は報われましたが。

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音楽はジェームズ・ホーナーでしたが、当初ホーナーが作ってきた曲はキャメロンの考えていたカラーではなかったため、鬼のようなダメ出しを喰らいました。その結果、クライマックスの音楽を一晩で書き直すなど突貫での手直しを余儀なくされた上、結局間に合わなかった部分もあり、前作のためにジェリー・ゴールドスミスが作曲していた未使用スコアの流用などでしのぎました。本作はアカデミー作曲賞にノミネートされましたが、もはや自分の仕事とは言えない作品だったので、ホーナーは喜んでいなかったとのことです。

感想

メカデザインの異常なカッコよさ

SF映画の魅力とはメカの魅力と言っても過言ではなく、『3』以降はメカが立っていないことが不評の原因の一つだと思うのですが、本作のメカは大変魅力的でした。

まず植民地海兵隊の輸送機達ですが、スラコ号>ドロップシップ>装甲兵員輸送車と大中小揃った充実ぶりに、それぞれのデザインのカッコよさと、男子を燃えさせる要素盛りだくさんでした。大気圏外では魚のようなフォルムだったドロップシップが大気圏内では主翼を広げるなど細かいギミックも利いており、メカを楽しめる作品となっています。

植民地海兵隊の装備もカッコよく、台座とセットになっている巨大なスマートガンや、残弾表示が特徴的なパルスライフルなどは最高でしたね。これらは光線銃のようなSF的なアイテムではなく、現在のテクノロジーの延長線上で作られているので実在感もありました。スマートガンはかっこよさのあまり、Sガンダムに丸パクリされましたね。

加えて、キャメロンは銃声の演出が良いのです。後に製作する『ターミネーター2』(1991年)や『トゥルーライズ』(1994年)もそうだったのですが、キャメロンは高めの銃声を好みます。「ドキューン」ではなく「ヒュンヒュン」という感じの。本作のスマートガンやパルスライフルもやや高めの銃声が特徴的なのですが、現実の銃声とは違うこれらの音が適度にSF感を与えていました。

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群像劇としての完成度の高さ

リプリーの他に海兵隊員達が出てくるのですが、個性豊かな彼らのキャラクターは類型的ならもよくできています。

  • ヒックス伍長(マイケル・ビーン):口数は少ないが必要な場面では活躍するヒーロータイプ
  • ハドソン上等兵(ビル・パクストン):口数の多いお調子者。
  • バスクエス上等兵(ジェニット・ゴールドスタイン):勝ち気な性格の女性隊員で、もっとも血の気が多い。
  • ゴーマン中尉(ウィリアム・ホープ):隊の指揮官だが実戦経験も決断力もなく、隊員達からは信頼されていない。
  • バーク(ポール・ライザー):ウェイランド・ユタニ社員で表面的な人当りは良いが、実は会社の決定事項は非人道的なものでも忠実に実践する容赦のない男であり、自分のためなら他人を犠牲にしてもかまわないと考える卑劣漢でもある。

これらのキャラクターがなかなかバランスよく配置されている上に、前半では大口叩いていたハドソンが後半では不安ばかりを言うようになったり、前半ではほとんど目立っていなかったヒックスが後半では頼もしくなったり、ダメな上司だったゴーマンがラストで一矢報いたりと、一度こういう奴と決めたキャラクターが最後までそのままということはなく、映画の進行と共にキャラクター達も変化していく動的なドラマとなっています。群像劇として優れているのです。

サービス精神が素晴らしすぎる

エイリアンvs海兵隊という中学生感覚溢れる対戦カードの時点でサービス精神旺盛なのですが、大量のエイリアンに対して銃弾の雨を惜しみなく降らせるという画をきっちり作ってきたキャメロン最高でした。

クライマックスは規格外の大きさのクィーンエイリアンの登場で観客の度肝を抜いた後に、惑星の大爆破と大掛かりな見せ場が連続します。そこからは【舞台の爆破→ギリギリの脱出→しつこく船に紛れ込んでいたエイリアン→宇宙への放出】と第1作と同じ展開のアップグレード版となるのですが、惑星爆破までで十分満足していた観客に対してクィーンエイリアンvsパワーローダーというオマケまでをぶっこんできて見せ場の満漢全席状態です。

質より量の特撮が雑

本作はアカデミー視覚効果賞を受賞していますが、特撮の質は前作よりも相当落ちています。全体的にミニチュア然とし過ぎているし、ミニチュア撮影された背景と登場人物を合成する際にはフロントプロジェクション技術が使われているのですが、適用部分の画質の悪さから合成が見え見えとなっています。

壁を這うウォーリアーエイリアンは吊っていることが丸出しで、クィーンエイリアンは自重を足で支えているようには見えません。操演が下手クソで、重力の法則を無視した見え方になっているのです。

これらの難は現在の高品質なVFXに見慣れて目が肥えたから気になるというレベルではなく、日曜洋画劇場で見ていたガキの頃から気になっていました。また、本作より7年も前に製作された『エイリアン』(1979年)ではこのような不満を感じなかったことからも、本作の特撮の出来は良くなかったと言えます。

なお爆発直前の建物でそこら中に走っているプラズマは、『ターミネーター』(1984年)のタイムワープの場面のために作られた素材の流用だったようです。

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完全版について

劇場版との相違点

1990年に17分の未公開場面が追加された154分の完全版がリリースされています。劇場版との相違は以下の通り。

  • リプリーには娘アマンダが居たことが明かされる。リプリーが冷凍睡眠で宇宙を漂っている57年間でアマンダは亡くなっていた。
  • ニュート一家が宇宙船を調査し、父親がエイリアンに寄生される場面の追加。
  • LV-426に向かうスラコ号の全容、およびクルーが冷凍睡眠中でひとけが途絶えた艦内の様子の追加。
  • セントリー銃でエイリアンの大群を蹴散らす場面の追加。
  • リプリーがニュート救出に向かう前にヒックスとファーストネームを教え合う場面の追加。
  • ニュート救出へ向かうエレベーターでリプリーが武装する場面の編集が劇場版では間違っていたが、これが修正された。

完全版は無駄ではないが長すぎる

完全版ではリプリーの人物像が深掘りされており、とりわけ娘アマンダの存在は彼女がニュートのため命をも投げ出す活躍をした重要な背景の説明となっています。

ただしこの情報が本当に必要だったかと言われると、答えはNOです。これはキャメロンという監督の凄いところでもあるのですが、アマンダの存在を抜きにしてもリプリーとニュートのドラマは問題なく流れており、リプリーに娘が居たという設定は必須ではありませんでした。

また、アマンダの存在を入れてしまうと前作でのリプリーのキャラクターと整合しなくなるという別問題も発生します。前作では、やや官僚っぽい意思決定を下す一面があり、ブルーカラーのクルー達とのコミュニケーションを不得意とする冷たい女性というキャラ設定があって、家庭を持っている様子はまったくありませんでした。ここでアマンダの設定を出してしまうと「リプリーってそんな人でしたっけ?」となってしまいます。

加えて完全版はドラマの追加によって冗長になり過ぎており、海兵隊が初めて交戦するまでに1時間15分もかかっています。アクション映画としてはテンポが悪く、話の枝葉を適度にカットした劇場版の方が優れているように感じます。

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