トゥルーライズ【凡作】作り手が意図したほど楽しくはない(ネタバレあり・感想・解説)

(1994年 アメリカ)
スペクタクルの巨匠キャメロンの手腕が爆発したアクションは楽しめるものの、笑えないコメディが足を引っ張っており、作り手が意図したほど楽しい映画にはなっていませんでした。

©Twentieth Century Fox

あらすじ

ハリー・タスカーは国家保安組織オメガ・セクターに所属する諜報員だが、ロサンゼルスには妻子がおり、家族に対してはコンピューターのセールスマンだと説明している。ある時、ハリーはアメリカをターゲットにした大規模な核テロの情報を掴むが、テロリストに自身の身元を知られて妻ヘレン共々拘束される。

作品概要

フランス映画のリメイク

本作は、フランス映画” La Totale!”(1991年)を気に入ったシュワルツェネッガーが友人のキャメロンに企画を持ち掛けて実現した作品です。”La Totale!”は「もしジェームズ・ボンドに帰るべき家庭があったら」という着想を元にしています。

同作はいまだに日本でリリースされていないのでフランス語の分からない私ではその出来を確認しようもないのですが、有名作品や往年の名作といったハードルの高い過去作品ではなく、光るもののある無名作品に目を付け、これをハリウッドの資本力でリメイクするという絶対に勝てる企画を思いついたあたりが、シュワの慧眼だったと言えます。

“La Totale! “の仏版ポスター
何やらとても楽しげ。

史上最高の製作費がかけられた作品

本作の製作費は1億1500万ドルであり、インフレを考慮しない場合に当時としては史上最高額でした。日本公開時には「1分1億円」などと宣伝され、そのゴージャスぶりが話題となりました。

キャメロンは、それまでの史上最高額だった『ターミネーター2』(1991年)の記録を自分で塗り替えたことになったのですが、実は自身の引き起こしたアクション映画の製作費高騰に危機感を抱いていました。そこで次回作としては本作ほどの規模を要しない『タイタニック』(1997年)を選んだのですが(当初の概算は8千万ドル程度だった)、完璧主義が祟って再び製作費の記録を塗り替えることになるのでした。

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感想

素晴らしいアクション

史上最高額の製作費がかけられただけあって、見せ場は大盤振る舞いです。『007/ゴールドフィンガー』(1964年)と『女王陛下の007』(1969年)を合わせたような雪山の豪邸での派手なイントロに始まり、ショッピングモールを破壊する銃撃戦、公道を突っ切るチェイス、孤島での派手な脱出劇と、ボリュームもバリエーションも素晴らしいことになっています。

そしてハリアー戦闘機が大活躍するクライマックスのスペクタクルは圧巻でした。ライブアクションとVFXを組み合わせた見せ場は現在の目で見ても大迫力であり、アクション大作として堂々たる完成度となっています。

コメディ映画なのに全然笑えない

本作はアクションとコメディが半々の映画なのですが、素晴らしいアクションパートに対してコメディパートがからっきしなので、アクションとコメディが相乗効果を起こすどころか、コメディが足を引っ張っているという好ましくない状況が発生しています。

その原因としてはシュワとキャメロンの双方がコメディを不得意としていたことが考えられます。まずシュワですが、『ツインズ』(1988年)や『キンダガートン・コップ』(1990年)のヒットで当時はコメディもできる人と見做されていたのですが、あらためて見るとコメディには全然向いていませんね。例えば妻ヘレンの浮気疑惑で海よりも深く落ち込んだハリーが、横断歩道をトボトボと歩く場面。ここでシュワはコミカルな演技を全力でしてきており、「どうです、面白いでしょ」みたいな声までが聞こえてきそうだったので全然笑えませんでした。

監督のキャメロンもこれとどっこいレベルです。ヘレンの浮気疑惑に平常心を失ったハリーが組織の設備・人員を私的に流用して盗聴や通信傍受を行い、最終的には実戦部隊までを投入するくだりは、バカバカしい目的で話がどんどん大掛かりになっていく様が笑いどころになるはずだったのに、面白さが付いてきていません。

その結果、浮気絡みのくだりは本筋から浮いたまったくの無駄な枝葉になってしまっています。ヘレンがハリーの目の前でストリップをするに至っては悪趣味の極みでした。ここは平凡だったヘレンが度胸と機転を開花させるという笑いと興奮のピークになるべき場面だったのに、本来持たねばならない意味を持っていませんでした。

なお、自分とシュワがコメディに向いていないことにキャメロンは自覚があったのか、相棒役にコメディアンのトム・アーノルドを配置しています。そのキャスティングに関してはフォックスとひと悶着あったようで、当時のトムは私生活のゴタゴタが原因でワイドショーから叩かれており、フォックスはイメージの悪いトムの起用に反対していたらしいのですが、シュワとの相性の良さに気付いたキャメロンがゴリ押しでねじ込んだようです。

トム・アーノルドが出ている場面のみ、普通のコメディ映画並みに笑うことができました。

おもろいでっしゃろ

シュワルツェネッガーがミスキャスト

キツイ東欧訛りがあって、ガタイ良過ぎで目立ちまくるシュワルツェネッガーがアメリカのエリート諜報員には決して見えませんでした。また、主人公ハリーの仮の職業はコンピューターのセールスマンってことになっているのですが、あんなにガタイの良い親父をセールスマンだと信じている家族が愚かに見えます。

スパイ(もしくは殺し屋)の二重生活というコンセプトは『Mr.&Mrs.スミス』(2005年)や『ジ・アメリカンズ』(2013-2018年)にも引き継がれるほど優秀だったのに、そのどちらにも見えないアーノルド・シュワルツェネッガーが作品の屋台骨をへし折っているような印象を受けました。

フランスではこんな感じだったのが…
アメリカではこうなる。

無神経さがちょっと気になる

現在の目で見ると、核爆発がひとネタになっていたり、敵のテロリストが主義主張の一切ないただの無機質な破壊者である点が気になります。アクションコメディとは言え、ちょっと無神経すぎるなぁと。

初期稿では敵の設定はIRAだったものが同時期に『ブローン・アウェイ/復讐の序曲』(1994年)が製作されることを知り、IRAかぶりを避けるため中東系に変えられただけであって、悪人として描くことができれば誰でもよかったようなのですが。

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