【凡作】地獄のヒーロー2_チャック・ノリス捕まる!(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(1985年 アメリカ)
チャック・ノリス(神)の名物シリーズ第2弾。不埒な捕虜収容所所長相手に神が怒りの鉄槌を下す話かと思いきや、意外とどっこいの勝負をするので痛快さがない。この頃のメナハム・ゴーランは、神の見せ方を心得ていなかったようだ。

感想

アマプラでしれッと配信開始されていたのを鑑賞。有難いことに、懐かしの日本語吹替版も入っていた。

小学生の頃にゴールデン洋画劇場で見たはずだけど、同じくゴールデン洋画劇場で見た『ブラドック 地獄のヒーロー3』(1988年)とごっちゃになっているせいもあって、本作固有の思い出ってない。

大変申し訳ないことに、当時はチャック・ノリス(神)がそれほど好きではなかったのだ。

肉体派とは言えシュワやスタほどビルドアップされているわけでもない神は見た目のインパクトが弱かったし、髭面&胸毛のむさっ苦しさも小学生の心には響かなかった。ムダ毛に男を感じるには、見る側にもそれ相応の人生経験が必要なのだ。

そして当時の神はメナハム・ゴーランとよろしくやっていたこともあり、とにかく微妙な映画ばかりに出ていた。『デルタフォース』シリーズの安っぽさにも壮絶なものがあったし。

本作も同じく。

流行りものを凄まじい勢いでパクり、二番煎じ・三番煎じを機動的にマーケットに送り込むことで定評のあったメナハム・ゴーランは、『ランボー』(1982年)の大ヒットでにわかに注目を浴びたベトナム帰還兵ものに目を付けた。

スタローンの先輩格である神を主演に迎え(ゴーランとの初タッグ)、『地獄のヒーロー』(1984年)と『地獄のヒーロー2』(1985年)の同時撮影を敢行。

本来は無印の方が第二作、『2』の方が第一作だったのだが、『ランボー』の続編がMIA救出ものになるという噂でも聞きつけたのか、内容面でかぶる第二作の方を先に公開し、前日譚である本作を後回しにするという荒業に出た。

一応、『ゴッドファーザーPARTⅡ』(1974年)や『アゲイン/明日への誓い』(1989年)と同じ手法ではあるが。

1972年ベトナム、ブラドック大佐(神)の部隊が乗るヘリは敵の集中砲火を受けて墜落。

米軍兵士たちの紹介と共に「Missing in Action(作戦行動中行方不明)」のテロップがジャン!と出る場面はなかなかカッコいい。

時は移って1982年、ブラドック大佐の部隊は10年もの間、ベトナムのジャングルで囚われの身でいる。

これだけの長期間に渡って捕虜を維持する側も大変だろうと思うが、捕虜収容所の所長イン大佐(スーン=テック・オー)は、ブラドック大佐にアメリカの戦争犯罪を認めさせようと脅迫と懐柔を繰り返している。

遠の昔に終わったベトナム戦時下の罪を認めさせて、今さら何の得があるんだかよく分からないが、とにかくそういうことである。

一方ブラドック大佐はというと、敵の要求に応じれば部下達が皆殺しにされるということで、頑なに拒否を続けている。何を根拠に皆殺しにされると思っているのかは定かではない。

ある時は『ディアハンター』(1978年)よろしく仲間同士でロシアンルーレットを演じさせられ、またある時には裸に剥かれた部下を笑いものにされと、イン大佐の嫌がらせは壮絶を極める。

時にブラドック自身も拷問の対象となった。逆さ吊りにされたところに、ネズミを入れた袋を頭に被せられるブラドックだが、ネズミを噛み殺すという荒業で窮地を乗り切る。

なおあのネズミは撮影用のプロップではなく本物だったらしい。ネズミの死骸を口に入れても腹一つくださないノリスは、やはり神だ。

そんな意地と意地との戦いではあったが、かねてよりマラリアに感染していた部下がいよいよ重篤化し、ついにブラドックは薬の投与と引き換えに文書へのサインを認める。

勝ち誇るイン大佐だが、ちょいと調子に乗りすぎた。

ブラドックとの約束を反故にして薬を投与しなかったばかりか、騙してアヘンを投与したうえ火炎放射器で焼き殺す。

ブチ切れた神は、翌朝早々に捕虜収容所を脱走。そのフットワークがあれば遠の昔に逃げられてただろうとは言わない約束だ。

そして怒れる神は敵の武器を奪い、捕虜収容所を奇襲する。

ここから先は神のワンサイドゲームかと思いきや、いつものチャック・ノリス作品のような痛快さがない。

敵に対してなかなか決定打を与えられず、イン大佐との一進一退の攻防戦が続くのだ。

この展開がものすごく中途半端。

演じているのはチャック・ノリスなのだから絶対に負けないことが分かってる。後日談は先に公開されてしまっているし。

前半で重ねに重ねた忍従のお返しとばかりに神が暴れ回る様を映し出せばいいところを、地味な攻防戦としたために、バカバカしくも楽しいB級アクション映画の醍醐味は失われた。

最後にはタイマンもあるけど、収容所にいた図体のでかい肉だるまが挑んでくるのかと思いきや、イン大佐自身が出張ってくるという点もがっかりだった。

カンフーを披露するなど思いのほか善戦するイン大佐だったが、そうは言っても中肉中背のアジア人なので(若い頃の加藤茶に似ている)、神に勝てるタマではない。最後は式次第通りに葬り去られ、こちらも特に盛り上がることがなかった。

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